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法務情報

2025/09/02

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新聞記事の利用は著作権侵害になるか(弁護士:佐藤 明)

コラム弁護士佐藤明長岡事務所

1 生成AIによる著作件侵害?

最近のニュースで、いくつかの大手新聞社が続けてアメリカの生成AI(検索型)の企業を訴えたことが話題となっています。

訴訟では新聞記事を無断使用したことによる著作権侵害などを理由としています。

生成AI等では、大量の情報を収集し加工等し発信することから問題が生じているようですが、新聞記事についても大きな問題となっています。


ここでは、一般的な話として、私たちが新聞記事を利用することは著作権上どのような問題があるかを検討したいと思います。

2 新聞は著作物か

そもそも新聞記事は著作物といえるのでしょうか。

著作権法上の著作物といえるには、創作性がある表現であることを要します(2条1項1号)。

事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は(言語上の)著作物とならないとされています(10条2項)。


新聞記事は、一般に用語の選択や配置などに表現者の個性が表れており、創作性が認められるので、著作物といえると考えられます。

ただ、死亡広告など事実を記述したにすぎないようなものは当たらないと考えられます。

3 新聞記事が著作物といえる場合に認められる権利

新聞記事が著作物といえる場合、どのような権利が認められるのでしょうか。

この場合、新聞社には、新聞記事につき、複製権、公衆送信権、譲渡等権など多くの独占的な権利が認められます。

そのため、新聞記事を作製した新聞社の許可なく、その新聞記事を複写したり、SNSやネットに投稿したりすること許されません。

4 許可なく利用等しても法的に許される場合とは

例外として許可なく利用等しても法的に許される場合(権利制限)はどのような場合でしょうか。

(1)私的利用のための複製

まず、私的利用のために複製することは許されます(30条1項)。

個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用する場合(私的利用)は著作権者(新聞社)の許可なくコピーできますが、それは仕事等に関係ないものや、また4、5人程度の範囲での利用と考えれています。

個人的な利用と考えていても、インターネットやSNSでの投稿となると、その範囲を超えるものとなり、許されません。

また、勤務先の会社内でコピーしたり社内のネット等で業務に利用することも同様です。

(2)引用としての利用

引用といえるは、公正な慣行に合致し、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲である必要があります。


自らの著作物が主で引用される著作物(ここでは新聞記事)が従といった関係にあることや、出所の明示が必要です。

また、上記のように目的が制限されているので容易に引用として認めらるわけではありません。

(3)公的な観点での利用

他に、公益的な観点から学校教育(非営利目的)での利用などで認められることがあります(35条1項)。

5 まとめ

以上のように、新聞記事について新聞社の許可なく利用する場合には、例外を除いて、新聞社の著作権侵害となり得え、差押や損賠賠償責任を負うこともあるので、(裁判等起こされるかは別として)注意が必要です。

なお、新聞記事の利用にあたっては、各新聞社や新聞著作権協議会で、利用申請や包括契約をすることも考えらえます。

この記事を執筆した弁護士
弁護士 佐藤 明

佐藤 明
(さとう あきら)

一新総合法律事務所
副理事長/長岡事務所長/弁護士

出身地:新潟県長岡市
出身大学:新潟大学法学部(民法専攻)
新潟県弁護士会副会長(平成25年度)などを務める。
取扱い分野は、団体では企業法務、自治体法務、学校法務など。個人では相続や離婚などの家事事件、金銭問題など幅広い分野に対応しています。
社内研修向けにハラスメントセミナーや、相続・遺言、成年後見制度をテーマとしたセミナーで講師を務めた実績があります。

 

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