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忘れられる権利

 │ 上越事務所, 東京事務所, 新発田事務所, 長岡事務所, 弁護士中川正一, 燕三条事務所, 新潟事務所

「表現の自由」という言葉を聞いたことはありますね。

 

 

人は、自己の意見を述べたり、また、他人から意見を言われたりすることで、いろいろな考え方を形成し、人として成長することができます。

「表現の自由」は、政府に対して言いたいことが言える民主主義社会を形成するうえで重要な人権です。

「表現の自由」をマスコミの立場から見ると、「報道の自由」として構成されます。

また、情報の受け手の側から構成すると「知る権利」と構成されます。

いずれも「表現の自由」の内容として、重要な人権として扱われています。

 

例えば、人が犯罪を犯した場合に実名で報道されますね。

関心の低い犯罪事実であれば、逮捕された人の実名など記憶に残らないのが普通ですが、これも実は重要な報道です。

なぜなら、逮捕された人の実名を出して公権力が行使された事実を正確に伝えることによって、事後的に公権力の発動が適法になされたのか否かを国民が判断することができるからです。

何気ない犯罪事実の報道も公権力を監視するうえで重要な情報なのです。

 

他方で、逮捕されて報道されてしまった人からみれば、いつまでも自己の犯罪歴を報道され続けてしまうので、再就職にも影響してしまう不利益を受ける可能性もあります。

そのため、従前は「更生を妨げられない権利」として議論されていました。

実際に事件の性質や当事者の社会的活動や影響力などを総合考慮して実名報道の必要がなくなったような時期にされる過去の犯罪事実の公表は違法とされる場合があることがあります。

 

インターネットが発達した近年では、新たな公表がなくても過去の報道がインターネットで簡単に検索できてしまうため、インターネット上から検索されないようにする必要があるのではないかという意味で「忘れられる権利」として新たな議論がされるようになりました。

欧州では近年「忘れられる権利」が認められたようですが、我が国ではその定義・要件・効果は明確に定められていません。

事例紹介

過去に児童買春、児童ポルノに係る行為等について罰金刑を受けた者が、グーグル検索枠において、自己の住所と氏名を入力すると、検索結果の一例として、当該犯罪歴を記載した記事

と分かるウェブページの表題及びURLと内容の抜粋(スニペット)が表示されるため、このような記事の検索結果を削除するように求めた事例があります。

 

この地裁判断では、「一度は逮捕歴を報道され社会に知られてしまった犯罪者とはいえども、人格権として私生活を尊重されるべき権利を有し、更生を妨げられない利益を有するのであるから、犯罪の性質等にもよるが、ある程度の期間が経過した後は犯罪を社会から『忘れられる権利』を有する」と言及しました。

 

しかし、高裁では、「忘れられる権利」の成否の判断として、時間の経過のみならず、当事者

の身分や社会的地位、公表に係る事項の性質等を総合考慮して決すべきという主張と捉えて、名誉権ないしプライバシー権に基づく差止請求の存否とは別に、「忘れられる権利」を独立して判断する必要はないと判断しました。

また今年の最高裁判断でも「忘れられる権利」について言及されることはありませんでした。

最高裁の考え方

最高裁は、検索結果を削除して欲しい利益を「個人のプライバシーに属する事実をみだりに公

表されない利益」として構成し、過去の犯罪事実をプライバシーに属することを認めたうえで、児童買春が児童に対する性的搾取及び性的虐待と位置づけられており、社会的に強い非難の対象とされ、罰則をもって禁止されていることに照らし、今なお公共の利害に関する事項であると言及し、国民の「知る権利」に配慮しました。

 

そのうえで、罰金刑に処せられた後は民間企業で稼働していることがうかがわれるなどの事情

を考慮しても、本件事実を公表されない法的利益が優越することが明らかではないという理由

で、削除を認めませんでした。

最高裁は検索結果が検索事業者自身の表現行為という側面を肯定したうえ、検索結果の提供は、現代社会においてインターネット上の情報流通の基盤として大きな役割を果たしている、と指摘して、削除請求を容認するためには「公表されない法的利益が優越することが明らかな場合」と極めて限定した判断をしました。

国民の「知る権利」を重視したものといえるでしょう。

 

以上のとおり、高裁では「忘れられる権利」を独立して判断する必要はないと判断したのに対

し、最高裁は言及はないものの新たな公表があった事案ではなく、過去に公表された情報がインターネット上で検索される事案であることを考慮した上で、国民の「知る権利」との利益衝突の調整を図る一定の基準を示したものと考えられます。

今後は、国会でもこの最高裁判断を参考に「忘れられる権利」について議論されていくことになるでしょう。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 中川 正一

<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2017年9月5日号(vol.212)>

※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

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