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閉鎖に追い込まれた「破産者マップ」何が問題?

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「破産者マップ」の内容

「破産者マップ」とは、「破産者マップ」と称するサイトの運営者が、官報に記載される破産者情報を網羅的に集計し、データベース化させ、サイト上にて当該データベースをGoogleマップに関連付け設定をした上で、地図上で破産者を可視化したものです。

 

これにより、定期的に発行される官報に掲載されるに過ぎなかった破産者の情報が、いつでも地図上で容易に把握できることになったことから、名誉毀損であるなどとして批判を浴びたものです。

 

この「破産者マップ」は、法的には何が問題なのでしょうか?

閉鎖に追い込まれた「破産者マップ」何が問題?

そもそも、破産者は公開されるのか?

破産をするためには、裁判所に対し破産の申立てをする必要があります。

 

裁判所は、破産開始手続きの開始決定をすると、官報に掲載して公告します。

 

官報には、破産者の氏名、住所、破産手続開始決定の日、債権者による免責意見の申述の期間などが掲載されます。

 

つまり、破産者は、国が発行する官報という公刊物によって公開されます。

官報とは何か?どこで買えるのか?

官報は、内閣府が発行しています(編集配信等は国立印刷局が行っています)。

 

掲載内容としては、法令の公布、国会に関する事柄、一定の役職以上の公務員の人事異動、閣議決定事項、叙位・叙勲・褒章に関する事項、各省庁からの公告、裁判所からの公告などがあり、裁判所からの公告の一部として破産者の公告があります。

 

官報は、行政機関の休日以外に毎日発行されます。直近30日分は、「インターネット版官報」というウェブサイトで無料で閲覧できるほか、各都道府県にある官報販売所にて購入することができます。

定期購読も可能ですし、過去の官報を検索して一部だけ購入することも可能です。

 

余談になりますが、司法試験の合格発表者も官報に掲載されます。

司法試験の合格者が掲載される号は、合格者やその家族などの購入希望の問い合わせがあるそうですが、事前予約をしておかないと品切れになってしまうことが多いそうです。

司法試験の合格者数は、平成30年で約1500人ですから、官報の発行部数は、それほど多くないことが推測できます。

「破産者マップ」は名誉権侵害(名誉毀損)になるのか?

「破産者マップ」の管理者は、ツイッターで「破産者マップが破産者の名誉を傷つけているというコメントをよく頂くのですが、誰も自由に見ることができる状態で官報を公告している図書館や大学も、破産者の名誉を傷つけているのでしょうか?」と投稿しています。

 

このように、本件では、「既に公開されている事実を『拡散』させる行為が名誉棄損に当たるのか」という点が大きな争点となることが予想されます。

 

閉鎖に追い込まれた「破産者マップ」何が問題?「破産者マップ」は名誉権侵害(名誉毀損)になるのか?

 

この点について、東京地裁平成25年4月22日判決は、「既に公開されているインターネット上の掲示板に掲載された記事又は出版された書籍の内容を転載したものに過ぎず、これらの記事の掲載又は書籍の出版以上に原告の社会的評価を低下させるものであるということはできない。」として、既に公開されている記事等を転載しただけでは名誉権が侵害されたとはいえないと判断しました。

 

これに対して、同じ事件の控訴審である東京高裁平成25年9月6日判決は、既に公開されている記事を投稿(転載)した行為は、「新たに、より広範に情報を社会に広め、控訴人の社会的評価をより低下させたものと認められる」として、地裁とは反対の判断をし、名誉権侵害を認めました。

 

破産者マップのケースは、官報というごく限られた人しか見ないと思われる情報を、Googleマップにマッピングする方法で公開しているわけですから、単なる転載というよりも、より見やすい方法でかつ誰でもアクセスしやすい方法により公開したものと評価できます。

 

そうだとすれば、既に公開された情報を転載することが名誉権侵害に当たるかどうかについて地裁と高裁の判断が分かれているところではありますが、名誉権侵害に当たると判断される可能性もあるといえるでしょう。

「破産者マップ」問題、今後の行方は?

「破産者マップ」を受けて、有志の弁護士たちが集まり「破産者マップ被害対策弁護団」が結成されています。

 

弁護団は、「破産者マップ」について、破産者の名誉やプライバシーを侵害し、掲載された情報が広まることにより、勤務先を解雇される、本人や家族が偏見やいじめにさらされるなど、生活に悪影響が生じるおそれがあるとしています。

 

そして、官報に掲載されているとしても、既に公表された情報を人の目に触れやすくしており、既に公表された情報であっても、これを人の目に触れやすくすることは違法行為となりえるとしています。

 

弁護団は、今後、名誉権侵害に基づきドメイン管理事業者に対する発信者情報開示請求等を行って「破産者マップ」の管理者(投稿した者)を特定した上で、名誉権侵害による損害賠償請求や名誉毀損罪等による刑事告訴を行うとしています。

 

「破産者マップ」はすでに閉鎖されているようですが、閉鎖されたとしても名誉権侵害の事実は変わりませんので、弁護団は、この手続きを進めていくことになるでしょう。

 

弁護士 五十嵐亮

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