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【法務情報】裁判員裁判はじまりはじまり・・・

 │ 新潟事務所, 弁護士和田光弘, その他

 最近、小学校から「裁判員裁判」の授業を頼まれ、小学校6年生を相手に授業を試みました。 

 
 「裁判員裁判」は、今年(※2009年)の5月21日から、実施される制度です。

 
 一般の市民(20歳以上)がくじ引きで選ばれ、殺人などの重罪刑事事件に6人の市民が参加し、裁判官3人と一緒になって、事実認定や量刑(時には死刑も)まで決めるというものです。

 
 どうして、そんな制度が必要かという話の前に、そもそも裁判ってどうして必要なのかというところから始めました。要は、憲法で定める三権分立です。

 
 難しい話をするときのたとえで「皆さんはお小遣いを誰が決めていますか?」と聞きました。「お母さん!」という返事。「お手伝いを誰が決めていますか。」「お母さん!」「お小遣いを渡したり、お手伝いを指示するのは誰ですか?」「お母さん!」「お手伝いしないとどうなりますか?」「ゲーム機没収!」「お小遣いなし!」「さぼったと決めるのは誰ですか?」「お母さん!」 ということで、「お母さん」は所得保障(お小遣い)と労役(お手伝い)を決め、これを実行・命令し、さらには刑罰(ゲーム機没収)を与える「王様」で「独裁者」となったわけです。

 
 江戸時代の昔、新潟市(当時は、新潟町)にも独裁者がいたのです、と話は展開し、明和義人騒動の話もしました。

 
 18世紀半ば、涌井藤四郎が、新潟港の税金1500両に反対して反乱を起こしたこと、後に捕縛され処刑されたこと、その処刑は小学校そばの「三献(さんごん)刑場跡地」だった可能性が高いことなどを話がながら、昔の殿様(新潟は天領だったが、差配は長岡牧野藩)がやはり、全部の権力を持っていたために、税金をまけてくれと運動した涌井さんが簡単に死刑にされたことは、人間の権利が守られていなかったからだ、というぐあいです。

 
 三権分立を定めた「法の支配」は一人一人の権利を守るためにあります、ということで、やっと裁判の必要性を話し終えました。

 
 それでも、裁判員裁判は「行くのはめんどう」「恥ずかしい」「難しい」など、次から次にやりたくない理由が挙がりました。

 
 そこで、「お父さんが殺人罪で捕まったらどうですか」「お母さんやお兄さんだったらどうですか」と聞きました。

 
 教室は一瞬シーンとなりました。

 
 「皆さんは、どうしてお父さんは人を殺したのだろう、とか、いや、何かの間違いだと思ったら、何が何でも裁判を見たいでしょう」

  
 「でもそういうときには裁判員にはなれません」としたうえで、「この社会で起こったことをみんなで一生懸命、まじめに考えていくことが大切です」と言いました。

 
 もう一つ。「どうしても見てみたい裁判のときに、裁判官が被告人を見ながら『その人を犯人だと思う人は手を挙げてください』と聞かれて、手を挙げますか」と聞くと、子ども達は首を振ります。

 
 「それじゃ、わからないと思う人と聞かれたら」と言うと、多くの子供が手を挙げると答えました。「手を挙げた人は出て行ってくれと言われるかもしれませんね」と言いますと、不思議そうな顔をします。

 
 「まだ、裁判が始まる前です。皆さんは一つも証拠を見ていませんから『無罪推定』と言って『無罪』と思わなければならないのですね。証拠を見るまでは『無罪』と推定する必要があります。ですから『わからない』では足りないのです」

 
 「証拠が裁判で出されるまで、新聞やテレビでどんなに犯人と騒がれていても、無罪と思うことができますか」

 
 「お母さんにお手伝いをさぼったと言われたら、証拠が無ければ無罪だといってみると、どんな顔をするでしょうか。学校で変なことを覚えてきたと、怒られるかもしれません」

 
 子ども達は、案外、真剣な顔で聞いていて、感想文の中にも「証拠を見るまで無罪と思うことは大変なことだ」という、実に真っ当な感想が寄せられました。

 
 反対も多い裁判員制度ですが、私は、社会がもっと信頼し合えるようになるためにも、まじめに犯罪に向き合って「無罪かどうか」「量刑をどうするか」をみんなで考えた方がいいと思っています。

 
 今年(※2009年)の制度実施のときに、新潟県弁護士会の会長を担うことにもなりましたので、よろしくお願いします。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 和田 光弘◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2009年3月号(vol.36)>

 

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