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年金の繰下げ・繰上げ制度の一部改正(弁護士:細野 希)

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この記事を執筆した弁護士
弁護士 細野 希

細野 希
(ほその のぞみ)

一新総合法律事務所 理事/ 弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:新潟大学法科大学院修了

新潟県都市計画審議会委員(2021年~)、日本弁護士連合会国選弁護本部委員(2022年~)を務めています。主な取扱分野は、交通事故と離婚。そのほか、金銭問題、相続等の家事事件や企業法務など幅広い分野に対応しています。
数多くの企業でハラスメント研修、相続関連セミナーの外部講師を務めた実績があります。

 

公的年金の老齢給付は、現在、原則として65歳から受給できることになっています。

しかし、受給資格を満たしている者が希望すれば、繰上げや繰下げにより、本来の年金額を増減して受給することが可能になります。

 

2022年4月から、公的年金の老齢年金の繰上げと繰下げの制度が一部改正されました。

 

1 繰上げ受給の減額率の変更

受給資格を満たしている者が希望すれば、60歳以降65歳に達するまでの間に繰上げて受給することができます。

もっとも、本来の受給年齢よりも先に受給することになるので、本来の年金額から減額された金額が生涯続くことになります。

 

改正前の繰上げ支給の場合は、年金額は1ヶ月あたり0.5%減額されていました。

しかし、改正により、2022年4月1日以降に60歳に達する者について、1ヶ月あたり0.4%の減額に修正されることになりました。

 

例えば、60歳で繰上げ請求をした場合、65歳まで最長の60ヶ月繰上げることになりますが、改正前の減額率では、本来の年金額より30%(60ヶ月×0.5%)の減額だったところ、改正後は、本来の年金額より24%(60ヶ月×0.4%)の減額になりました。

 

減額率が下がる点では、繰上げ受給する者にとって有利な改正になります。

 

2 繰上げ受給のメリット・デメリット

繰上げ請求をすれば、65歳になる前に年金が受給できるので、収入が途絶えるなど生活に困窮している場合には、早期に年金がもらえる点で、メリットがあります。

また、減額された公的年金等の収入金額が少なく、公的年金等控除額を差し引いても所得が発生しない場合などには、課税されないなどもメリットも考えられます。

 

他方、繰上げ請求すると減額が生涯続くことになるので、長く生きれば生きるほど、本来支給額よりも総支給額が少なくなり、損をする可能性が高くなります。

また、繰上げ請求後は、障害基礎年金を受給できないことや、夫が死亡しても寡婦年金を受給できないなどのデメリットもあります。

 

3 繰下げ受給の上限年齢引上げ

もう一つの改正は、繰下げの上限年齢に関する改正です。

 

受給資格を満たしている者が希望すれば、年金受給開始年齢を66歳以降に繰下げて受給することができます。

繰下げの場合、本来もらえる年齢よりも、遅れて年金を受給することになるので、その分、年金額が増額します。

現在は、本来の年金額から1ヶ月あたり0.7%増額された年金額を受給できるとされています。

この繰下げができる年齢が、改正前は、上限が70歳でしたが、改正により、最長で75歳に達するまでになりました。

 

本来、65歳から受給できる年金を75歳で繰下げ請求をした場合には、120ヶ月繰下げることになるので、増加率84%(120ヶ月×0.7%)にもなります。

 

4 繰下げ受給のメリットとデメリット

繰下げをした場合、1ヶ月あたり0.7%増額された年金額が生涯もらえるので、長生きすればするほど、総支給額が多くなるというメリットがあります。

 

他方、繰下げ年齢の上限を上げるほど、もらえる年金額も増加するので、所得が増えるために、税金や国民健康保険や介護保険料等が増える可能性があるなどのデメリットも想定されます。

 

5 受給状況

 

現状の繰上げ・繰下げの受給者は、少数であり、大多数の人が、本来の年金額で受給しています。

年金は、老後の収入となるものですが、国の財政状況や少子高齢化により、年金制度に不安を抱えている方も多いと思います。

平均寿命の延びや社会情勢の変化などから、今後、更なる年金制度の改正もあるのかもしれません。

 

繰上げも繰下げも、一度選択をすると取消しや変更ができず、生涯続くことになるので、メリットとデメリットをよく考えて年金の受給開始の年齢を決める必要があると思います。

 


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