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民事調停の活用法(弁護士 細野 希)

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1 民事調停とは

調停は、当事者が裁判所に来て話し合いをし、調停委員会を介して紛争を解決する方法です。

調停委員会は、裁判官1人と事件ごとに裁判所が指定した民事調停委員2人以上で組織されています。

民事調停委員は、弁護士や専門家などが指定されています。

 

訴訟の場合、最終的には裁判官が判決により結論を出しますが、調停は、紛争当事者が合意をして紛争を解決することを基本としています。

 

2 民事調停の種類

民事調停には、民事一般調停、宅地建物調停、農事調停、商事調停、鉱害調停、交通事故調停、公害等調停、特定調停があります。

 

民事調停は、家賃の未払い、貸金問題、近隣紛争、売買トラブルなど民事に関する紛争を広く対象事件として扱っています。

ただし、離婚や相続など家族の問題に関することは、家庭裁判所が管轄となる家事調停の対象になります。

 

3 管轄裁判所

民事一般調停と商事調停は、相手方の住所を管轄する簡易裁判所に申し立てをするのが原則です。

調停は、相手方との話し合いでの合意を目指すので、相手方が参加しやすいように相手方の近くの裁判所に呼び出す必要があるのです。

 

それ以外の宅地建物調停、農事調停などは、管轄についての特別な定めがあります。

例えば、宅地建物調停事件の管轄裁判所は、紛争の目的である宅地又は建物の所在地を管轄する簡易裁判所になります。

 

また、当事者同時の合意があれば、その合意で定める地方裁判所や簡易裁判所を管轄裁判所とすることもできます。

 

4 民事調停のメリット

民事調停は、非公開で、手数料が安く、訴訟より短期間で事件解決することがメリットです。

調停申立手数料は、訴訟よりも少額であり、例えば、10万円の支払いを求める場合には、申立手数料は500円になります。

 

弁護士に依頼し民事調停の申立てをする方が、争点をまとめて、スムーズに調停が進むと思いますが、例えば、相手方への請求金額が少なく、弁護士費用が高くなるような場合には、当事者本人のみで調停の申立てをすることも当然可能です。

 

裁判所のHPには、申立書の書式がダウンロード(※)できるようになっています。

 

また、調停は、話し合いと言っても、当事者が同席をして協議するわけではなく、民事調停委員を介して話を聞いてもらうので、待合室が別々であり、本人同士が顔を合わせずに調停を進めることもできます。

さらに、金銭の支払いの合意ができて調停調書が作られた場合、調停調書は、判決と同様の効果を持ちますので、債務者が滞納した場合、強制執行の申立てをすることもできます。

____________

※裁判所HP|民事調停で使う書式(申立書)

https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_minzityoutei/index.html

 

5 民事調停のデメリット

民事調停の申立てをしても、相手方が裁判所に来ないと調停で話し合えないので、調停の申立てが無駄に終わることもあります。

民事調停法第34条には、「裁判所又は調停委員会の呼出しを受けた事件の関係人が正当な事由がなく出頭しないときは、裁判所は、5万円以下の過料に処する。」という規定がありますが、実務上は、あまり適用はされていません。

相手方を強制的に裁判所に呼び出しても、結局、当事者間で合意ができず、調停が不成立になり、意味がないともいえるからです。

 

ただし、民事調停法第17条には、裁判所は、調停委員会の調停が成立する見込みがない場合において相当であると認めるときは、職権で、当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で、事件の解決のために必要な決定をすることができるという規定があります。

 

例えば、当事者間で調停案に概ね合意ができているのに、遠方で、調停に参加できない場合や、当事者が、調停委員会に裁判所に出頭はできないが、調停案に合意すると書面を提出した場合などに、裁判所は、相手方が欠席しても調停に代わる決定をすることがあります。

ただし、裁判所が調停に代わる決定をするためには、民事調停委員の意見を聴き、当事者双方のために衡平に考慮することが求められています。

 

6 おわりに

民事調停は、訴訟と異なり、裁判官が最終的に判決を出してくれるわけではないので、双方の主張の対立が大きい場合には、合意に至らず、調停が不成立になることもあります。

 

しかし、紛争当事者以外の調停委員会が、双方の話を聞いて、紛争を仲介してくれるので、当初、成立しないと思った調停でも、実際にやってみると合意に至る場合もあります。

また、当事者の感情的な対立から本人同士では話し合えない場合でも、第三者を介して話し合うことによって争点整理ができて問題が柔軟に解決することもあります。

調停は非公開なので、プライバシーに係わる事件や社会的に評判を落としたくない事件などにも利用できます。

 

また、相手方との合意できれば、調停調書に謝罪条項を入れたり、再発防止処置条項を入れたりすることもあります。

 

当事者間の示談交渉が決裂した場合、次のステップとして、訴訟又は調停のどちらを選択した方がいいのかは、事件の内容から検討すべきですが、訴訟より比較的簡易な民事調停という手続きもあるので、ご検討いただければと思います。

 

この記事を執筆した弁護士
弁護士 細野 希

細野 希
(ほその のぞみ)

一新総合法律事務所 理事/ 弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:新潟大学法科大学院修了

新潟県都市計画審議会委員(2021年~)、日本弁護士連合会国選弁護本部委員(2022年~)を務めています。主な取扱分野は、交通事故と離婚。そのほか、金銭問題、相続等の家事事件や企業法務など幅広い分野に対応しています。
数多くの企業でハラスメント研修、相続関連セミナーの外部講師を務めた実績があります。


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