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社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

犬同士の咬みつきで、飼い主に責任が認められるか?飼い主に賠償命令(弁護士:細野 希)

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1 咬みつき事故の状況

環境省の令和2年度の統計である令和元年の犬による咬傷事故状況の報告によると、全国の咬傷事故の件数は4274件であり、そのうち、咬傷犬数4277で、野犬41頭以外は、全て飼い犬(登録犬3471頭+未登録犬486頭+飼い主不明279頭)でした。

咬みつかれた被害者は、飼い主・家族、それ以外の人が圧倒的に多いですが、動物など人以外の被害も計211(死亡被害25+死亡以外の被害186)事故が報告されています。

また、咬傷事故発生時における被害者の状況は、通行中の事故が2047件と最も多く、次いで犬に手を出したときに発生した事故が674件でした。

(環境省:「犬による咬傷事故状況の報告」

 

2 動物同士の事件でも裁判に発展する場合も

咬みつき事件は、飼い主の故意により発生した事件でなくても、裁判発展する場合もあります。

例えば、犬が咬みつき、人に怪我を負わせたり、死亡させたりした事件では、飼い主に対し、刑事責任が問われて、禁固や懲役刑の実刑判決を言い渡されている事件もあります。

また、治療費や慰謝料等の損害を求める民事裁判でも、犬が咬みついた相手が人間ではなく、犬や猫等の動物であっても、事故状況や被害の程度によっては、賠償責任を認めている判決も多いです。

 

令和3年5月14日、犬同士のかみつき事件で、東京地方裁判所は、飼い主に、治療費や慰謝料など計約15万7千円の賠償を命じました。

この事件は、公園内で、飼い犬Xの臀部に、飼い犬Yが咬みついた事件ですが、咬みつく前に、別のリードを付けていない(いわゆるノーリード)飼い犬Aが、Xに近づいてきたため、Xが唸ったところ、これに反応したYが、Xの臀部に複数回咬みついたという事件です。

XとYの飼い主の間では、咬みついたYがノーリードあったか否かを含む事故状況について、争いがありました。

 

3 賠償責任は

動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負います(民法718条1項)。

ただし、動物の占有者が、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、責任が免除されます(同項ただし書)。

「相当の注意」とは、「通常支払うべき程度の注意義務を意味し、異常な事態に対処しうるべき程度の注意義務まで課したものではない」とされています(最高裁昭和37年2月1日判決)。

「相当な注意」もって動物を管理していたと認定されるのは、ハードルが高いとされていますが、事件によっては「相当の注意」を尽くしたと認定される事件もあります。

 

先ほどご紹介した事件は、事故現場にいた飼い主だけでなく、その犬を自宅で共同して飼育していた者に対しても、損害賠償請求がなされました。

 

東京地方裁判所は、事故現場にいなかった犬の飼い主に対しては、飼育方法や管理方法に問題があったことをうたがわせる事情がなく、「相当の注意」をもって管理したとして、民法718条1項による責任を認めませんでした。

 

他方、現場にいた飼い主に対しては、裁判所は、Yがノーリードであったことは認定しませんでしたが、現場にいた飼い主には、Yの動静に注意し、Xと十分な距離を取るか、リードによってYを適切に制御すべき義務があるのにこれを怠ったとして、治療費や慰謝料の支払いを命じました。

 

犬がノーリードではなくても、飼い主に責任を認めている点に特徴があります。

 

多くの動物による咬みつき事件は、飼い主に故意がなくても、動物の予想外の行動により、想定外の被害を受けてしまうこともあるので、注意が必要です。

 

4 動物の財産価値?

被害を受けた動物が、高齢であり、雑種で市場価値がない場合でも、損害賠償を認めている判決もあります。

 

飼い犬により、18歳の高齢の雑種の飼い猫を咬み殺された事故に関して、大阪地方裁判所平成21年2月12日判決は、老齢である雑種の飼い猫は、市場価値がないとしても、愛玩動物として飼育者によって愛情をもって飼育され、単なる動産の価値以上の価値があり、直ちに財産価値がないと結論付けることはできないとして、民法718条1項本文の不法行為責任を負うと判示しています。

そして、被害を受けた猫の飼い主に対する慰謝料は、飼い猫が18歳と高齢であり、死期が近い状況にあったとしても、愛玩動物を無残な形で死亡させた場合の飼い主の精神的苦痛は、むしろ、その飼育期間に比例して増大するものと考えるべきであるから、慰謝料の減額の事情にならないとして、犬の飼い主に慰謝料20万円の支払いを命じました。

 

5 個人賠償責任保険

加害動物の飼い主としても、動物の予想外の行動により、偶然に他人や他の動物に危害を与えてしまった場合、被害動物の飼い主から賠償請求に困惑されることもあると思います。

そのような場合には、個人賠償責任保険に加入していないか確認してみることをお勧めいたします。

 

個人賠償責任保険は、日常生活の中での偶然の事故により、他人を怪我させた場合や、物を壊してしまった場合などに保障される保険です。

自動車保険、火災保険などに個人賠償責任特約が付いていることもあります。

 

個人賠償責任保険の保険金の支払い対象には、治療費の他に弁護士費用や訴訟費用も含まれていることもあります。

事前に保険会社に確認を取る必要がありますが、加害動物の飼い主でも、保険金から被害者に賠償をすることができる可能性が出てきます。

 

咬みつきの事件は、飼い主の過失割合、治療の範囲、慰謝料の金額など見解が対立する場合もあります。

 

ペットに対する愛情や思い入れから、単純には賠償額が決まらないことも多いですので、動物トラブルでお困りの場合は、ご相談ください。

 

この記事を執筆した弁護士
弁護士 細野 希

一新総合法律事務所
弁護士 細野 希

新潟事務所所属/事故賠償チーム

人に対する思いやりを忘れずに、誠実に対応し、日々勉強と経験を重ねて、信頼される弁護士になれるように努めてまいります。

働き方改革関連法について

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2018年6月29日、「働き方改革関連法」(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案)が成立し、2019年4月1日から施行されることになりました。

 

これに伴い、労働基準法を始めとする関連法令が改正され、各企業は、就業規則の整備等の対応を取ることが必要となりました。

 

働き方改革関連法においては、主に「労働時間」及び「同一労働同一賃金」に関する法整備が行われていますので、ポイントをご説明したいと思います。

≪労働時間関係≫…労働基準法等関係

(1)時間外労働の上限規制

今まで、時間外労働は、労働基準法36条2項で、厚生労働大臣により基準を定めることができると規定されていましたが、法律上は規定されていませんでした。

 

そこで、長時間労働を是正するために、時間外労働の上限は、原則として月45時間、年360時間と定めることになりました。

 

また、臨時的な特別な事情がある場合でも、時間外労働の上限は、年720時間、月単位100時間未満(休日労働を含む)、複数月平均80時間(休日労働を含む)を限度とするとされています。

 

特別な事情とは臨時的なものに限られ、一時的又は突発的であること、1 年の半分を超えないと見込まれることが必要です。

 

なお、中小企業における時間外労働の上限規制に係る改正規定は、2020年4月1日から適用されます。

(2)年次有給休暇の確実な取得

使用者は、年休が10日以上付与される労働者に対し、年5日の年休については、毎年、時季指定をして与えなければならないとされました。

 

ただし、労働者の時季指定や計画的付与により取得された年休の日数分については、指定の必要はありません。

 

また、使用者が、時季を定めるに当たっては、①労働者に対して時季に関する意見を聴く、②時季に関する労働者の意思を尊重するよう努める、③使用者は、年休の取得を確実に把握するために管理簿を作成する、ことが必要となりました。

(3)月60 時間超の時間外労働に対する割増賃金

労働基準法37条1項ただし書きでは、1か月60時間を超える時間外労働をした場合、その超えた時間に対して、通常の賃金の50%以上の率で計算した割増賃金を支払うことが定められていましたが、中小企業に対しては猶予措置が定められていました。

 

しかし、今回の法改正で、中小企業への猶予措置は2023年4月1日から廃止されることになりました。

 

そのため、中小企業であっても1か月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率は、限度時間を超える時間外労働の割増賃金率の定めにかかわらず、50%以上とする必要があります。

 

働き方改革関連法について2

 

 

(4)高度プロフェッショナル制度の創設

高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務(対象業務)に就く労働者については、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規制を適用しないとされました。

 

対象業務としては、金融商品の開発業務、アナリスト業務(企業・市場等の高度な分析業務)、コンサルタントの業務(事業・業務の企画運営に関する高度な考案又は助言の業務)、研究開発などが挙げられています。

 

ただし、職務範囲が明確に定められていること、年収が1075万円以上であること、健康確保措置が講じられていること、本人の書面等による同意を得ることなど様々な条件を満たしている必要があります。

≪同一労働同一賃金関係≫…パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法関係

(1)不合理な待遇差を解消

同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体における正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

 

今回の法改正では、次のことが定められることになりました。

 

 

ⅰ パートタイム・有期雇用労働者について、正規雇用労働者との不合理な待遇の禁止に関し、個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断される旨の明確化

ⅱ 有期雇用労働者について、正規労働者と「職務内容」「職務内容・配置の変更範囲」が同一である場合には均等待遇の確保の義務化

ⅲ 派遣労働者について、派遣先の労働者との均等・均衡待遇又は一定の要件(同種業務の一般の労働者の平均的な賃金と同程度以上の賃金であること等)を満たす労使協定による待遇の義務化

 

 

なお、パートタイム・有期雇用労働者についての正規雇用労働者との不合理な待遇差の禁止規定は、2020年4月1(中小企業は、2021年4月1日)から適用されます。

 

派遣労働者について、派遣先の労働者との不合理な待遇差の禁止規定は、中小企業も含めて2020年4月1日から適用されます。

(2)待遇に関する説明義務

正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明についても義務化されました。

 


 

働き方改革は、長時間労働、雇用の格差、労働力人口の減少など様々な問題を改善し、労働者が多様な働き方を選択できる社会の実現を目的としています。

 

改正法は、使用者にとっては負担が大きくなることもあるかもしれませんが、労働環境を適切に保つことによって、労働者とのトラブルを未然に防止し、生産性を高める結果に繋がることもありますので、今一度、働き方の見直しをされてみてはいかがでしょうか。

 

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 細野 希

<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2018年11月5日号(vol.226)>

※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

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