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刃物の携帯についての法規制‐イギリスの「マスターソード」事件などを教訓に(弁護士 海津 諭)

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この記事を執筆した弁護士
弁護士 海津 諭

海津 諭
(かいづ さとる)

一新総合法律事務所 
理事/燕三条事務所長/弁護士

出身地:新潟県燕市
出身大学:京都大学法科大学院修了
新潟県公害審査委員、新潟県景観審議会委員を務めています。主な取扱分野は、相続全般(遺言書作成、遺産分割、相続放棄、遺留分請求など)です。そのほか、離婚、金銭問題、その他トラブルなど幅広い分野に精通しています。
相続・生前対策セミナーの講師を多数務めた実績があります。
また、『月刊キャレル』(出版:新潟日報事業社)に掲載のコーナー「法律相談室」に不定期で寄稿しており、身近な法律の疑問についてわかりやすく解説しています。

 

1 イギリスの事件

 

令和6年6月、イギリスで、日本の「ゼルダの伝説」というコンピューターゲームに登場する剣(マスターソード)を模したおもちゃを持っていた人が、公共の場で刃物を携帯したという理由で逮捕されました。

その後の刑事裁判の結果、その人には禁固刑と罰金刑が言い渡されたそうです。

 

剣のおもちゃは、鞘に入っており、刃体の長さは約15センチメートルでした。

 

2 日本での規制‐銃刀法と軽犯罪法

イギリスだけでなく日本でも、刃物による危害を予防する目的で、刃物の携帯は法律で規制されています。

 

銃砲刀剣類所持等取締法、いわゆる「銃刀法」では、「業務その他正当な理由による場合」を除いて、刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物を携帯してはならないとされています(ただし、刃体の長さが8センチメートル以下の、一定の種類又は形状のはさみ又は折りたたみ式ナイフ等は除外されています。銃刀法22条)。

これに違反する行為に対しては、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金という刑罰が定められています(同31条の18第2項2号)。

 

また、上記の銃刀法の規制は刃体が一定の長さの刃物だけを対象としていますが、「軽犯罪法」では、刃体の長さにかかわらず、「正当な理由」がなく刃物を隠して携帯していた者は拘留又は科料に処するとされています(軽犯罪法1条2号。

なお、「拘留」とは、1日以上30日未満の期間、刑事施設に入る刑罰です。「科料」とは、1000円以上1万円未満の納付を命じる刑罰です)。

 

3 「正当な理由」の判断基準、過去の事例

銃刀法及び軽犯罪法の定める「正当な理由」があるかどうかは、裁判例によれば、次のような要素をもとに判断するとされています。

 

・器具の用途や形状・性能
・携帯した者の職業や日常生活との関係
・携帯の日時・場所、態様及び周囲の状況等
・携帯の動機・目的・認識等

 

過去の事例では、ナイフを約7か月の間、「何かあったときに便利だから」という理由で自動車内に積んだままにしていたという案件について、正当な理由がないとして銃刀法違反となった裁判例があります(水戸地裁平成23年7月29日判決)。

 

また、十徳ナイフを鞄に入れて携帯していた鮮魚店主が、「災害時に限らず、普段の仕事や日常生活においても、何か道具が必要になったときに持っていたら便利だと思った」という目的であったものの、「かなりの期間、普段の仕事や日常生活でこれといった使用をしていなかった」という案件について、正当な理由がないとして軽犯罪法違反となった裁判例もあります(大阪高裁令和5年8月1日判決)。

 

他方、自動車内に新聞紙で刃体を覆った鎌とチャック付き透明ケースに入れたのこぎりを積んでいて、約2か月前にいとこの家の草刈りや庭の手入れで木の枝を切ったときから積んでいたものであり、いつかまた使う予定であったという案件について、正当な理由があるとして無罪となった裁判例があります(旭川地裁令和3年12月13日判決)。

 

4 犯罪の嫌疑をかけられないために

 

3に挙げたとおり、刃物の携帯については無罪となったケースもあります。

 

しかし、最終的に無罪を勝ち取れたとしても、その前の段階で逮捕や勾留を受けて自由を奪われてしまうことや、刑事裁判への対応を強いられることは、非常に大きな負担となってしまいます。

 

そこで、銃刀法違反や軽犯罪法違反の嫌疑をかけられてしまうことがないように、次の事柄に注意すべきと考えられます。

 

・包丁、ナイフ、のこぎり、鉈、斧、鎌など、生活に必要な刃物を店で購入したときは、帰宅したら必ず、刃物を自宅内に移して保管する。自動車に積んだままにしない。

・具体的な必要がない限りは、刃物を自動車に積んで運転することや、刃物をカバンなどに入れたまま持ち歩くことをしない。

・キャンプや登山、釣りなどに使うために刃物を携帯するときは、使用中以外は、刃体をむき出しにせず、周囲の人に不要な脅威を与えない態様で管理する。そして、帰宅後は刃物を自宅内に戻し、自動車に積んだままにしない。

 

皆様におかれましては、上記の事柄にご注意いただき、銃刀法違反や軽犯罪法違反のおそれを生じさせないようお過ごしいただければ幸いです。

 

また、万が一、正当な理由で刃物を携帯していたにもかかわらず銃刀法違反や軽犯罪法違反の嫌疑をかけられてしまった場合は、速やかに弁護士にご相談ください。

 


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