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法務情報

2025/08/05

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やめよう、「相席ブロック」(弁護士:山田 真也)

コラム弁護士山田真也長岡事務所

1 「相席ブロック」とは

相席ブロックとは、1人の利用者が隣り合う2席を同時に予約し、出発直前に片方をキャンセルすることで、隣に他人が座らないようにする行為を指します。

主に、高速バス業界で問題となっている迷惑行為で、2024年6月に、北海道の沿岸バスが公式SNSにおいて「意図的に相席をブロックする行為は絶対におやめください」という投稿をしたことをきっかけに、問題行為として注目を集めるようになりました。

2 なぜ高速バス業界?

相席ブロックは、「新幹線」、「飛行機」でも同様の問題行為が考えられるところです。

「新幹線」や「飛行機」においても、相席ブロックが存在しないわけではないかもしれませんが、現状、その多くが「高速バス」において行われています。

それはなぜでしょうか?


その答えは、「キャンセル料の違い」にあります。


一般的に、新幹線や飛行機の場合、直前のキャンセルに対しては、比較的高額なキャンセル料が設定されていることが多いです。


一方、高速バスの場合、現状、キャンセル料は100円前後の設定にとどまっていることが多いです。

そのため、高速バスではキャンセル料の負担が小さく、新幹線や飛行機に比べ、相席ブロックをしやすい部分が生じているのです。

また、これは高速バスに限らず他の移動手段にも当てはまりますが、昔は、一度購入した乗車券のキャンセルは、「窓口」や「電話」等によっていたところ、「インターネット」の普及により、インターネットを利用した予約・キャンセルが今は当たり前に行われています。

このような予約・キャンセルが容易になったことも相席ブロックが行われている要因の1つと考えられます。


なぜ高速バス業界では、他の移動手段に比べ格安なキャンセル料が設定されているのかについては、調べてみたものの、明瞭な答えは出てきませんでしたが、「1980年代の鉄道間競争の激化」や「標準運送約款で普通乗車券の払戻し手数料を100円以内と定めた歴史」に由来することを指摘するものがありました。

3 法的な問題点は?

「相席ブロック」が道義的にNGな行為であることは、誰しもが想像できるところです。

それでは、法的な観点からは問題があるのでしょうか?



この点、あくまでキャンセルポリシーの中での行為として、キャンセルポリシーに従ったキャンセル料等の負担をしさえすれば、法的な問題は生じないという考え方もできなくはないかもしれません。


しかしながら、相席ブロックは、高速バス会社において想定している予約・キャンセルの方法ではありませんし、実際に、直前のキャンセルにより、本来乗車したい利用者が乗車できず、高速バス会社は、本来得られるはずの運賃が得られなくなるという損害を被る場合があります。

また、あまりにも度が過ぎた相席ブロック行為は、偽計業務妨害罪として刑法上の犯罪に該当する可能性も考えられるところです。



現状、民事、刑事いずれにおいても、相席ブロックをした者に対して高速バス会社が法的責任を追及するといったことは少ないようですが、状況の改善が見られなければ、今後、そのような動きも出てくるかもしれません。

4 高速バス会社の対応・対策

このような相席ブロックに対して、最近では、対応・対策を図る高速バス会社も出てきています。


例えば、ある高速バス会社は、キャンセル料を引き上げ、相席ブロックが行いにくい状況を作ろうとし、また、ある高速バス会社は、悪質なキャンセルを自動検知する監視機能を有した予約システムを導入し、悪質な利用者に対しては、予約の拒否や、会員資格の取り消しといった措置を講ずる方針を表明しています。



こういった各高速バス会社の対応・対策も進む中、利用者の突発的な体調不良等によるキャンセルに配慮し、なかなかキャンセル料を引き上げにくいという声をあげる高速バス会社もあるようです。

こういった善意的な高速バス会社が損をすることのないように、我々利用者も常識に従った利用をすることが求められるところです。

この記事を執筆した弁護士
弁護士 山田 真也

山田 真也
(やまだ しんや)

一新総合法律事務所 弁護士

出身地:新潟県新潟市 
出身大学:一橋大学法科大学院修了
国立大学法人において倫理審査委員会委員(2021年~)を務める。
主な取扱分野は、離婚、相続、金銭問題等。そのほか民事、刑事問わずあらゆる分野に精通し、個人のお客様、法人のお客様を問わず、質の高い法的サービスを提供するように心掛けています。

 

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