2026/01/09
法務情報
日本版DBSまもなく開始!そもそもDBSって?(弁護士:長谷川 伸樹)

1.児童性犯罪の現状と制度導入の背景
昨年、衝撃を受けたニュースの1つに、SNSで児童の盗撮画像を共有した教員グループの事件がありました。
警察庁の作成した資料によれば、令和4年における少年が主たる被害者となる性犯罪(強制性交等、強制わいせつ)の認知件数は2,776件であり、依然として相当数の被害が生じていることがわかります(執筆時現在(※2026年1月)では、不同意性交等罪、不同意わいせつ罪と罪名が変わっています。)。
そのようななか、昨年末にニュースとなっていたのが、令和8年12月から「日本版DBS」が開始されるというものでした。
折に触れて話題には上っていたものの、その内容をしっかり把握できていなかったので、今回の報道を機に制度の概要を調べてみました。
2.日本版DBSとは?――制度の位置づけ
「DBS」とは、「Disclosure and Barring Service」の略語で、イギリスのDBSチェック制度のことを指すようです。
前科の照会・回答(Disclosure)とその結果に基づく就業制限(Barring)が要素とされる制度です。
日本で導入される制度は、児童等と接する機会のある一定の事業において、雇用する(した)事業従事者に対する一定期間内における性犯罪前科の有無の照会・回答がなされる仕組みのようです。
ここでは上記の制度を「日本版DBS」として説明します。
日本版DBSはあくまで「こども性暴力防止法」(学校設置者等及び民間保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律)における「再犯対策」としての施策として位置づけられており、その他にも「初犯対策」として、「こどもの安全を確保するために日頃から講ずべき措置」や、「被害が疑われる場合」の「調査」や「被害児童の保護・支援」、「教員等の研修」等の施策が事業者に求められています。
3.日本版DBSの仕組み
日本版DBSの仕組みは、現時点でのイメージとして以下のように説明されています。
| ①事業者がその事業に従事する予定の者(以下「従事予定者」といいます。)の性犯罪前科の照会をこども家庭庁に申請します。 ②こども家庭庁は法務省に対し、同人の性犯罪前科を照会し、法務省がそれに対する回答を発します。 ③性犯罪歴がある場合、子ども家庭庁からまずは従事予定者に回答内容の通知がなされます。 ④通知から2週間以内は従事予定者の訂正請求期間となります。その期間内に従事予定者が内定を辞退する等すると、こども家庭庁は事業者に対し事業予定者の性犯罪歴に関する法務省からの回答を交付せずに終了することになります。 ⑤従事予定者が内定等を辞退しない場合には、事業者は、従事予定者に児童対象性暴力等が行われるおそれありと認められれば、保育等の事業に従事させないなどの措置を講じる必要があります。 |
※既に事業に従事している者についても性犯罪前科の確認対象とされ、確認を行った後も数年ごとに定期的に前科の有無を確認していくことになります。
4.照会対象となる犯罪と回答期間
法務省から回答がある対象となる性犯罪前科は、不同意性交等、不同意わいせつにとどまらず、児童買春、児童ポルノ所持、提供等、盗撮等も含まれます。
拘禁刑に服役した場合は刑の執行終了から20年、執行猶予を受け、猶予期間が満了したものについては、もととなる裁判確定の日から10年、罰金刑の場合は刑の執行終了等から10年間は性犯罪前科の回答がなされることとなります。
5.各当事者の権利義務の均衡
上段で述べた少年が主たる被害者となる性犯罪の件数が依然として多数にのぼることからしても、日本版DBSにおける性犯罪前科の有無の確認は児童等の安全のためにも重要なものになると考えられます。
他方、事業の従事予定者・従事者については、性犯罪前科があれば即座に職を辞することとなるのではなく、児童と接する業務を担当させないようにするという制限内容で個人の職業選択の自由との均衡を取っているようです。
事業者は、事業従事者等の前科情報という重要な個人情報を保有することになるため、情報の適正管理義務や一定期間経過後の情報取消し義務が課されます。
これまで以上に情報の管理の負担は重くなります。
6.おわりに
こども性暴力防止法のうち、特に日本版DBSについて解説してきましたが、これから12月にかけてより制度が具体化していくものと思われます。
まだまだわからないことも多いので、報道やこども家庭庁からの情報提供について注目していきたいと思います。
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