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【法務情報】和解の和田

 │ 新潟事務所, ビジネス, 弁護士和田光弘

1 年末和解

    

 昨年の年末にかけて,いくつかの難事件が「訴訟上の和解」で終わりました。

 

 一つは,主張をやり取りした段階で,裁判所が損害額を調整し,かつ相手方もその支払を認めた紛争です。

 

 他の一つは,証拠調べ(尋問)をした後で,裁判所が相手に支払を勧告し金額をすりあわせした結果,合意に至ったものです。

  

 和解は年末に成立することが多く,ときに「年末和解」と呼んだりします。

 

               雪と雪 今宵師走の 名月歟(ゆきとゆき こよいしわすの めいげつか)       芭蕉

 

 芭蕉が「野ざらし紀行」の道中,門人の家で詠んだ句とされています。中秋の名月かとも思わせるほどの,師走の明るい月夜に,きらきらと空を舞う雪が照らされている,ああきれいなものだと感動したときの一句です。

 

 そして,この句は「和解」の句とも言われています。門人宅にいた仲の悪い二人を和解させたときのものだそうで,「雪と雪」は険悪な二人を指し「月」は白く丸く輝き仲直りを意味するとのこと。

 

 昔から紛争は年内に解決して,新年はすっきり迎えたいという心理は,やはりあったようですね。

  

2 判決と同じ効力(執行力)

    

 「訴訟上の和解」でも,裁判所で和解調書という書面に書き込む以上,「給付条項」(金銭を支払う約束や登記手続をする約束)には「執行力」(国家の力で強制的に実現する力)はあります。むろん,もともと無資力の場合は,金銭支払を履行しなかった場合に,差し押さえる財産がなければ支払を確保できません。これは判決でも同じことです。

 

 支払もできないのに「支払う」との約束することは詐欺じゃないのかと怒る人もいますが,その辺は難しいところです。

 

 先日も,当方の請求額を丸まる認める和解を裁判所が勧告してきたのですが,相手方には,いざ約束を破られた時の担保がまるでない事案がありました。若い先生に和解してよいかどうか聞かれて,正直困ったところです。

 

 そこで,私は,和解前に一定の給付金(月10万円)を3回きちんと払えたら和解しようということにしました。もう一つ,この事件は最初から詐欺的な手法でお金をとられていたため,刑事告訴も出してありました。警察はあまり熱心でもなく放置されていたのですが,とにかく,和解金をきちんと払うまで刑事告訴は取り下げないという条項も入れてもらって,相手への威嚇材料にしました。

 

 その後,和解は成立しました。しかし,支払を守ってもらうことを監視する意味で私たちの事務所が履行状況の確認をするということで,今後のアフターケアもさせてもらうこととしました。

 

 なお,執行力の点でついでに紹介しますが,生命保険などの契約の有無については業界団体である「生命保険協会」に弁護士が照会をかけることで,加盟各社からすべて回答がいただけるので,解約返戻金を狙うときには便利です。

 

3 判決よりも早い

    

 さらに,時間の点で言うと,判決をもらうよりも早く終わります。

 

 判決は,証拠や証人の証言に基づき,法律を適用することになりますから,どうしても,時間がかかります。少し困難な案件ですと,やはり2年近くかかることも稀ではありません。お互い,自分の立場から主張を組み立て,それに沿う証拠や証言を繰り出すのですから,その証言に偽りがあることを尋問で明らかにするには,けっこう工夫が必要です。

 

 私は,時系列のメモを自分で作ってみて,証拠のあてはめを自分でやってみて,それから「反対尋問のメモ」を作ります。この作業がしんどいのです。医療過誤や建築事件では,医学知識や建築技術の具体的な意味を知らなければならず,相手の心理状態も推し量る必要があり,メモは何回も作り直します。

 

 尋問の後に和解することも多いのですが,こちらの尋問が成功したときに裁判所が心証を開示して,和解を勧めてくれるときは,我ながら痛快です。

 

 それが敗れる側での和解だと苦痛ですが,それでも和解することもあります。

  

 それは,和解には「譲歩」がつきものだからです。

 

 

4 和解は譲り合い

   

 和解は結局,完全な勝訴にはなりません。どちらの立場でも「譲歩」が必要です。経済的な意味での譲歩が普通ですが,精神的な意味合いで譲歩することもあります。

 

 昨年も,名誉を毀損された元野球選手の和解で「謝罪」を盛込み,記者会見で説明するという事案がありました。その代わり,金銭請求はすべて譲歩したのです。

 

 めでたさも中位なりおらが春         一茶

 

 和解したとたんに,これで良かったのかと思う人も多いようです。それでも,紛争は恨み骨髄で終わるより,あれこれあっても,納め時があれば,納めることがいいように思います。

 

 私は,反対尋問が好きですし,証人を厳しく追及することもあります。それでも,どこかで和解の可能性があれば,和解を勧めます。

 

 息子さんを失った親御さんに和解を勧めたことがあります。一審で負けたのですが,高裁での和解のときに「恨んでいると自分をかたくなにして,返ってつらくなる」ということを言われ,極めて低額の和解に応じてもらいました。

 

 依頼者の方に教えてもらった和解でした。で,これからは私のことを「和解の和田」とでも呼んで下さい。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 和田 光弘◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2014年1月31日号(vol.143)>

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