弁護士コラム「相撲協会「コロナが怖くて休場は無理」でよかったのか?」弁護士:今井慶貴
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新型コロナウィルス第三波による首都圏の緊急事態宣言の中、大相撲初場所が始まりましたが、初日前日に序二段の力士(22歳)がTwitterで引退報告をしたことが話題となっています。
元力士によれば、「このコロナの中、 両国まで行き相撲を取るのはさすがに怖いので 休場したい」と親方を通じて相撲協会に打診したものの、協会から「コロナが怖いで休場は無理だと言われたらしく 出るか辞めるかの選択肢しか無く 自分の体が大事なので」引退したとのこと。
取材に対して、相撲協会の芝田山広報部長は、「会社にもコロナが怖いから出社したくないって言う人もいるだろう。それをみんなが言っていたら仕事にならない」「それに対応ができないなら、本人が出処進退を考えるしかない」と答えたと報じられています。
このニュースに対するネット上の意見は賛否両論ですが、どちらかというと相撲協会に対する批判が強いような印象を受けます。
そもそも、場所直前の協会員878人を対象としたPCR検査の結果、4部屋65人の力士が陽性者・濃厚接触者として休場する事態となっていることからして、初場所を観客を入れて開催すること自体、やや無理筋なのかもしれません。
さて、私もyoutubeの「貴闘力チャンネル」に元力士が出演しているのを視ましたが、ご本人は心臓の持病により手術をしたこともあるということであり、コロナ感染を怖がる気持ちもわからなくありません。
法律的にみれば、力士と協会との関係は、雇用契約そのものではないとしても、それに類似した契約関係はあるので、協会として力士の健康・安全に配慮すべき注意義務があることは否定できないでしょう。
力士についていうと、肥満・持病持ちが多いこと、直接の身体接触を伴う競技であること、部屋による共同生活であることなど感染のリスクは高く、実際、これまでいくつかの部屋でクラスターが発生し、昨年2月には糖尿病の持病のある20代の力士が亡くなられています。
もちろん、「それをみんなが言っていたら仕事にならない」というのもよくわかるのですが、どこで折り合いをつけるかと考えた場合に、協会側の対応はこれでよかったのでしょうか。
持病のある力士が、番付が落ちてでも自主的に休場したいというのに、そこまで固い対応はしなくてもよかった気がします。
とはいえ、なかなか難しい問題であることは確かです。
皆さんの職場に置き換えてみて、色々と考えてみることも有意義かもしれません。