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国会議員の懲罰(弁護士:中川 正一)

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この記事を執筆した弁護士
弁護士 中川 正一

一新総合法律事務所
弁護士 中川 正一

新発田事務所長/理事/事故賠償チーム

早期に事件の見通しを立て、依頼者の不安を解消します。
そのための日々の研鑽を怠りません。

1 はじめに

近時、国会議員が国会を欠席することを理由とする懲罰の可否(参議院)や18歳に飲酒させたことを理由とする辞職勧告決議案(衆議院)などが話題になっていますので、法的側面から触れてみようと思います。

2 国会議員の地位

 

議員の懲罰や辞職勧告は、当たり前ですが国会議員たる地位がある者に対してなされるものです。

 

この点、国会議員は、全国民の代表者として極めて重要な権能を行使するので、いわゆる特権が認められています。

その1つが不逮捕特権(憲法50条)です。

 

近時ニュースでも話題になることがありましたが、「両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない」と定めています。

 

3 議院の権能

各議院は、内閣や裁判所など他の国家機関や他の議院から監督や干渉を受けることなく、その内部組織および運営等に関し自主的に決定できる権能が複数あります。

例えば、議員の資格の有無について判断を専ら議院の自律的な審査に委ねる資格争訟の裁判権、議院規則制定権や議院内の役員選任権などの他に、議員懲罰権があります。

 

4 懲罰

懲罰は各議院が組織体としての秩序を維持し、その権能の運営を円滑ならしめるために認められるものです。

(1) 懲罰権の規定

憲法上、「院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要とする」(憲法58条2項後段、但書)と定められています。

ここで「院内」とは、議事堂という建物の内部に限られず、議場外の行為でも、会議の運営に関連し、または議員として行った行為で、議員の品位を傷つけ、院内の秩序をみだすことに相当因果関係のあるものは懲罰の対象となります。

 

これを受けた国会法では、「懲罰事犯」があるときは、「先ず懲罰委員会に付し審査させ」(国会法121条1項)ることが定められています。

また国会法124条は①「議員が正当な理由なくして召集日から7日以内に召集に応じない」、②「正当な理由なくて会議又は委員会に欠席した」、③「請暇の期間が過ぎた」ため、「議長が特に招状を発し、その招状を受け取った日から7日以内に、なお、故なく出席しない者は、議長が、これを懲罰委員会に付する」と規定されています。

 

なお、参議院規則では、「懲罰」には「公開議場における戒告又は陳謝」「30日を超えない登院停止」「除名」(国会法122条、参議院規則241条乃至246条)があることは規定されています。

(2) ガーシー議員の欠席理由は正当なものか?

報道によれば、ガーシー議員の国会欠席の理由は、「暗殺や不当逮捕のおそれがある」ということのようです。

 

しかし、不当逮捕のおそれは前記した議員の不逮捕特権により防止できますので、およそ欠席の理由にはならないでしょう。

議院が逮捕を許諾(国会法33条)することもありますが、このときはそもそも「不当」な逮捕ではないのです。

 

そうすると、暗殺の危険性を具体的に示すことができないのであれば、「正当な理由」(国会法124条)は見当たらないものと思われます。

 

この場合、前記の手続で議長が懲罰委員会に付した場合、具体的な懲罰が審査されることになりますが、国会を欠席し続ける議員に「公開議場における戒告又は陳謝」や「登院停止」はあまり意味がありませんので、関心事項としては「除名」ができるか否かに尽きるでしょう。

 

ただし、除名をするためには「議院を騒がし又は議院の体面を汚し、その情状が特に重い者」(参議院規則245条)であること、及び「出席議員の3分の2以上の多数による議決」(憲法58条2項但書)を要件としています。

 

過去にも長期間国会を欠席した議員はいたはずですので、そのような事案に比しても除名がやむを得ない程度に情状の重さが求められます。

具体的には、欠席理由や欠席期間、議員の行為などから議院の体面がどれだけ汚されたか等を踏まえて、慎重な審査がされることになるでしょう。

 

5 衆議院で話題になっている辞職勧告決議との違い

(1) 議員の個人的な問題行為について

前記のとおり、議院の懲罰権は、各議院の秩序を維持し、その機能の運営を円滑ならしめることを目的に認められる議院の権能です。

 

そのため、議場外の行為で会議の運営と関係のない個人的行為は懲罰の理由にはなりません。

 

つまり、衆議院で話題になっている18歳に飲酒させた疑いなどは、会議の運営とまったく関係がないので、懲罰の対象にはなりえないのです。

 

辞職勧告決議とは、単に不祥事などで公職の身分にふさわしくないとされる議員に対して行われる議会の意思表示にすぎません。

また、「勧告」である以上、あくまでも議員に自発的な辞職を促すものにすぎません。

 

つまり、辞職勧告決議は、懲罰に基づく「除名」と異なり、法的拘束力はありません。

決議されても辞職するか否かは議員本人の意思に委ねられます。

このことは近時の丸山穂高氏の事例で有名になりましたね。

(2) 国会議員は“全国民の代表”

 

吉川赳議員の件は、辞職勧告決議案が廃案になったようです。

 

国会議員の地位は、全国民の代表といわれます。

ここで「全国民の代表」の意味について種々の見解がありますが、議会を構成する議員は、選挙区ないし後援団体など特定の選挙母体の代表ではないという意味と原則的に考えられています。

ですから、特定の選挙母体の意向だけでは辞職が相当とはいえません。

 

また、現代の多元化した価値観を踏まえても、議員としてふさわしいかどうかという判断は容易ではないでしょう。

 

吉川赳議員が国会議員としてふさわしいか否かは、最終的には、次回選挙の際に、再選されるか否かで確定することになります。

 

6 最後に

ガーシー議員は居眠り議員を問題視する発言を繰り返していたことから、海外から居眠り議員をNHKの中継を介してチェックするというオチを期待していたのですが、どうやらそういうことではなかったようです。

なお、居眠りはたしかにいけないことですが、会議に出席しているので、長期欠席とは質的に異なるものでしょう。

 


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