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社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

子どもの引率ボランティア中の事故 責任は問われる?

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1.ボランティアでも事故の責任は問われる?

 

夏休み、子ども会やクラブで子どもの引率を頼まれたという方もいらっしゃるのではないでしょうか?

また、子ども会やクラブでイベントを企画しているそういう方もいらっしゃるかと思います。

 

ただ、引率を引受ける場合には、無償のボランティアだからと安易に考えてはいけません。

 

無償のボランティアであったとしても、事故が起きてしまった場合には、法的責任が問われる可能性があります。

 

2. 子ども会行事の事故で、引率者の賠償責任が認められた判例

 

裁判例でも、子ども会主催のハイキングで川遊び中に子どもが溺れて亡くなった事案(四つ葉子ども会事件、津地裁昭和58年4月21日判決)で、引率者の賠償責任が認められています。

 

同事案は、引率者が過失致死罪で起訴され、社会的にも耳目を集めました。

刑事責任については、2審で無罪となりましたが、民事事件では、引率ボランティアの法的責任が認められ、損害賠償が命じられています。

 

同判例では、「場所を選定するについて実施区域の危険性の有無を十分に調査しておく必要があると認められる」とした上で、子どもらへの危険周知の方法などについても指摘し、「児童の年齢構成、行動特徴などからみて、上・下流の深みに入りこむことのないよう監視体制を整えて事故を未然に防止すべき義務があるものと認められる」とされています。

また、「子ども会活動は社会的意義を有する有益な活動であることは周知の事実であるところ、右の活動が、本件における引率者のような無償の行動によって支えられているものであり、かかる行動を社会的に高く評価すべきものであることはいうまでもないところである。」とした上で、「しかしながら、前記の注意義務をそのことの故に否定する根拠となりうるものでないことは、事柄の性質からみて明らかであり」と述べ、無償であったとしても監督義務に変わりはないことが示されています。

 

3.引率を引き受ける際の注意点

無償のボランティアであったとしても、監督義務は無くならないということを前提に、引率を引き受けた際には細心の注意を払って臨まなければならないということとなります。

 

子どもたちの安全に責任をもって細心の注意を払うことは当然のことと言えば当然ですが、計画立案の際には、ボランティアの法的責任も意識して、安全な場所の選定、適切な引率者の人数等、安全体制をきちんと立案することが大切です。

 

また、ボランティア保険などの活用も検討いただくと良いかと思います。

 

この記事を執筆した弁護士
弁護士 橘 里香

橘 里香
(たちばな りか)

一新総合法律事務所 
理事/弁護士

出身地:沖縄県那覇市
出身大学:青山学院大学法科大学院修了

主な取扱分野は、離婚(親権、養育費、面会交流等)、男女問題。
そのほか相続、金銭問題など幅広い分野に精通しています。メンタルケア心理士の資格を活かし、法的なサポートだけでなく、依頼者の気持ちに寄り添いながら未来の生活を見据えた解決方法を一緒に考えていきます。


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業務中の熱中症は労災になる?企業が取るべき対策とは

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熱中症は労災認定される?

熱中症に気を付けましょう

猛暑が続き、連日、熱中症警戒アラートが発表されています。

時候の挨拶にも、熱中症に気を付けましょうと、社会全体で熱中症を予防しようとしています。

 

ところで、労働基準法施行規則第35条別表1の2に、労災が対象とする疾病が定められています。

そして、その中に熱中症も規定されています。

厚生労働省の通達によれば、「体温調節機能が阻害されるような温度の高い場所」での業務中に熱中症を発症すると労災認定されることになります。

 

職場における熱中症の発生状況

厚労省の資料によると職場における熱中症による死傷者数は2018年1178人をピークに2021年に561人に低下しましたが、2022年には827人に増加しました。

 

業種別で見ると2022年は建設業179人21%、製造業145人19%、運送業129人14%、警備業91人10%、商業82人10%とされています。

 

月別で見ると2022年は5月16人、6月184人、7月291人、8月280人、9月46人と暑さの本番が始まらない、未だ体が暑さに慣れていない6月からすでに増加し、夏本番でないからといって油断することができないことがわかります。

 

熱中症の症状と重症度は厚労省の「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」*1 では次のように分類されています。

Ⅰ度は119番と応急手当、Ⅱ度は医療機関での診療、Ⅲ度は入院治療が必要と記載されています。

しかし、専門家でないと、重症度などの判断ができないので、様子がおかしいと思ったら救急車を呼び、救急車が来るまで急速冷却が必要とされています。

熱中症は手遅れになりやすい命にかかわる病気であるとの認識が必要です。

 

熱中症の応急手当(表)

厚生労働省HP:「働く人の今すぐ使える熱中症ガイドブック」掲載の「応急手当カード」

*1 参考URL:厚生労働省「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」https://neccyusho.mhlw.go.jp/download/

 

熱中症防止のために企業がとるべき対策は?

職場の熱中症防止は企業の安全配慮義務の一つとされ、国による活発な啓発活動がなされています。

前述した、厚労省の「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」が非常に役に立ちます。

ガイドでは、熱中症予防により命を守ることが強調され、熱中症についての基礎知識、危ない状況と対策、予防法、取り組み例、講習用スライドなどが記載されています。

ぜひ、一度、内容をご確認ください。

 

熱中症事故の企業の賠償責任は?

熱中症が労災認定されるかの争点

炎天下の下で作業していた従業員が死亡して裁判になるケースでは、死亡の原因が熱中症なのか否かが争点となることがあります。

 

死亡の原因が熱中症と認定され、企業の安全配慮義務違反が認定されてしまうと、企業は、賠償責任を負うことになります。

熱中症が労災認定された事例

平成28年1月21日に出された大阪高等裁判所の判決によれば、造園業者に勤務する34歳、年収約210万円の男性が、真夏の炎天下(午後4時30分で39℃)で剪定作業していたところ、熱中症により死亡した事案につき、慰謝料2500万円、逸失利益1680万円等を認定し、労働者側の持病や、労災給付の控除などを考慮した結果、会社には、約3600万円の賠償責任があるとしています。

 

この記事を執筆した弁護士
弁護士 古島 実

古島 実
(こじま みのる)

一新総合法律事務所
監事/弁護士

出身地:新潟県燕市
出身大学:一橋大学法学部卒業(憲法専攻)

新潟県弁護士会副会長(平成19年度)などを務める。主な取扱分野は交通事故、相続、企業法務問題(労務・労働事件(企業側)、契約書関連、クレーム対応、債権回収、問題社員対応など)。
保険代理店向け交通事故対応セミナーや、三条商工会議所主催の弁護士セミナー等で講師を務めた実績があります。


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フリー素材は好き勝手に使用できるわけではない!使用上の注意点(弁護士 佐藤 明)

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フリーイラストを使用する際の注意点

フリーとは「著作権フリー」ではない

ニュース等でも見かけるように、ウェブ上にフリーとあったイラスト等を無料で利用できると思って、自分のホームページ等に使用したら、著作権侵害にあたるとしてその著作者やイラストの管理者から損害賠償請求されることがあるようです。

 

フリーとあるのだから、著作権侵害に当たらないのではと安易に思ってしまうかもしれませんが、イラストなどの素材も思想または感情を創作的に表現したものにあたり、著作権法上保護される著作物にあると考えられます。

そうすると、著作者がその著作権を放棄していないのであれば、基本的に著作者の同意がない限り、ウェブ上にフリーとあったとはいえ勝手に使用することは著作権侵害がないとはいえません。

このような使用は著作者(著作権者)の許諾が不要となる、私的利用の複製や、引用等にも当たらないでしょう。

 

「利用規約」を確認しましょう

また、ウェブ上でフリーと謳っていても、掲載されているホームページの利用規約等で利用するための条件があったりします。

メディアや様々な場面で利用されている「いらすとや」のイラストはその例といえます。

そのために利用規約等をちゃんと確認する必要があります。

 

「フリー=無料」と勘違いして使用した場合、法的責任に問われる?

では、フリーであると思っていたことや、営業のために利用するものではないことなどの理由で、損害賠償請求(民法上の不法行為責任)に応じなくてもいい場合があるでしょうか。

 

前述のようにフリーであると思い込んでいたとしても、その著作権が放棄されているわけではなく、利用規約等をちゃんと確認していれば、無料で使用できるかどうかわかったはずですから、過失が認められるでしょう。

著作権やIT等に詳しくないため、ホームページ等に利用してしまったといっても同様でしょう。

 

営業目的ではなかったとしても、そのことだけでは著作権侵害を否定する理由にはならないと考えられます。

なお著作権法には損害額推定や利用料相当額請求等の規定があることも注意が必要です。

 

IT・ICT社会になってイラストなど素材が誰でも簡単に入手できるようになったことの反面として、イラストの著作者あるいはその管理会社にとり、経済面だけでなく著作権を守ることが重要なことである以上、安易な利用が認められるものでないことを意識しておくべきでしょう。

 

この記事を執筆した弁護士
弁護士 佐藤 明

佐藤 明
(さとう あきら)

一新総合法律事務所
副理事長/長岡事務所長/弁護士

出身地:新潟県長岡市
出身大学:新潟大学法学部(民法専攻)
新潟県弁護士会副会長(平成25年度)などを務める。
取扱い分野は、団体では企業法務、自治体法務、学校法務など。個人では相続や離婚などの家事事件、金銭問題など幅広い分野に対応しています。
社内研修向けにハラスメントセミナーや、相続・遺言、成年後見制度をテーマとしたセミナーで講師を務めた実績があります。


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最低賃金が1,000円以上に引き上げ!? いまさら聞けない最低賃金法の基礎知識(弁護士 五十嵐 亮)

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最低賃金が上がる?

厚生労働省の中央最低賃金審議会では、2023年度の最低賃金の引き上げを巡って、議論が始まっています。

岸田政権は、現在の全国平均時給961円を千円に引き上げたい意向との報道もなされています。

 

この機会に最低賃金法について確認してみましょう。

 

最低賃金法はどんな法律か?

最低賃金法は、労働者の最低賃金を保障することによって、労働者の生活の安定を図ると同時に、事業の公正な競争を確保し、経済の健全な発展に寄与することを目的とした法律です。

 

最低賃金法には、最低賃金の金額が明示されているわけではなく、地域別に最低賃金が決定されなければならないと規定されています。

そして、厚生労働大臣または都道府県労働局長が、中央最低賃金審議会等の意見を聴いて、地域別の最低賃金を決定しなければならないと規定されています。

 

最低賃金法に違反するとどうなる?

まず、事業者が定める賃金の額が、最低賃金の額に達していない場合にはどうなるでしょうか?

そのような場合は、最低賃金額に達しない賃金を定めている労働契約は、無効となり、最低賃金と同様の定めをしたものとみなされます。

 

次に、事業者が支払っている賃金が、最低賃金額に満たない場合には、50万円以下の罰金に処するという刑事罰があります。

通常は、刑事罰の前段階で、行政指導が入り、悪質なケースにおいて刑事罰が科されるということになると思われます。

 

最低賃金を上回っているかどうかの確認方法

最低賃金を上回っているかどうか確認する方法は、賃金の定め方に応じて異なります。

①時給制の場合

時間給≧最低賃金額(時間額) 

となる必要があります。

②月給制の場合

月給÷1か月の平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

となる必要があります。

③出来高制の場合

当該賃金計算期間における出来高制によって計算された総額÷当該賃金計算期間において出来高制によって労働した総労働時間数≧最低賃金額(時間額)

となる必要があります。

 

手当などはどうなるの?

以下の手当は、最低賃金の対象になりません。

最低賃金の計算をする場合は、以下の手当を除外することになります。

(1)臨時に支払われる賃金(結婚手当など)

(2)1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

(3)所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)

(4)所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)

(5)午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)

(6)精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

_________

[参考]厚生労働省「最低賃金の概要」

https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/minimum/minimum-09.htm

この記事を執筆した弁護士
弁護士 五十嵐 亮

五十嵐 亮
(いからし りょう)

一新総合法律事務所
理事/弁護士

出身地:新潟県新潟市 
出身大学:同志社大学法科大学院修了
長岡警察署被害者支援連絡協議会会長(令和2年~)、長岡商工会議所経営支援専門員などを歴任しています。
主な取扱分野は企業法務全般(労務・労働・労災事件、契約書関連、クレーム対応、債権回収、問題社員対応など)、交通事故、離婚。 特に労務問題に精通し、数多くの企業でのハラスメント研修講師、また、社会保険労務士を対象とした労務問題解説セミナーの講師を務めた実績があります。
著書に、『労働災害の法律実務(共著)』(ぎょうせい)、『公務員の人員整理問題・阿賀野市分阿賀野市分限免職事件―東京高判平27.11.4』(労働法律旬報No.1889)があります。


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新聞社の『押し紙』行為を大阪地裁が認定(弁護士 薄田真司)

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1 『押し紙』とは

 

新聞社が販売店に対して不必要な新聞紙の仕入れを強制することは、『押し紙』と呼ばれています。

 

販売店からすれば、新聞に「在庫」がない以上、仕入れ費用が無駄になり、残紙の廃棄費用も生じますので、たまったものではありません。

もっとも、販売店は、新聞紙の供給元である新聞社から取引関係を解消されてしまうと経営が成り立たたなくなり、やむなく新聞社の押し紙に応じざるを得ない場合もあるようです。

 

このような押し紙行為は、公正な競争を阻害する行為として、独占禁止法に反します。

公正取引委員会は、独占禁止法第2条第9項に基づき、「新聞業における特定の不公正な取引方法」(平成11年7月21日告示第9号)を定め、その中で押し紙行為を禁止しています。

 

2 提起された訴訟について

読売新聞の販売店を経営していた元店主が、読売新聞社を被告として、押し紙によって不必要に仕入れざるを得なかった新聞の代金相当額を返金する、又は、仕入れ代金相当額の損害賠償をするよう請求する訴えを大阪地方裁判所に提起しました。

 

原告は、販売店の経営を前店主より引き継いだ平成24年4月から、後店主に引き継ぐ平成30年6月までの間、被告から押し紙行為を受けており、独占禁止法に反する押し紙による新聞購入契約は無効である、被告から返還されるべき仕入れ代金は1億2300万円以上に上る、と主張しました。

これに対し、被告となった読売新聞社は、押し紙行為をした事実などないとして全面的に争いました。

 

また、被告は、原告が被告から従業員募集広告補助金等を詐取していたとして、1000万円程度の損害を賠償するよう求める反訴(被告から原告に請求する訴え)を提起しました。

 

3 裁判所に認定された『押し紙』行為について

大阪地裁は、本年4月20日付けの判決で、読売新聞社が販売店に対し、原告が販売店の経営を前店主から引き継いだ後に、実際に販売・配布する部数(実配数)の約2倍にあたる部数を注文するよう指示していたことを認定し、このような読売新聞社の行為は「新聞業における特定の不公正な取引方法」の第3項第2号(「販売業者に自己の指示する部数を注文させ、当該部数の新聞を供給すること」)に反するものであることを指摘しました。

 

もっとも、結論として、原告の請求は全て棄却しました。

 

理由は次のとおりです。

第1に、独占禁止法は取締法規(新聞社・販売店の契約関係には直結しない行政による規制)にすぎず、その違反があっても、新聞社と販売店との間の新聞販売契約は直ちに無効とならない。

第2に、原告が販売店の経営を前経営者から引き継ぐ際に、販売店の新聞社に対する従前の注文数を維持しており、残紙が出る状況を引き受けていたといえることなどです。

 

被告が原告に請求した1000万円程度の損害賠償については、900万円程度を認容しました。

 

4 地裁判決後の状況について

報道によると、原告代理人弁護士は、「押し紙問題で、読売の独禁法違反が認定されたのはおそらく初めて」と判決を評価しています。

一方、読売新聞社は、一度も注文部数を指示したことはないとし、明らかに誤った認定であり、承服できないとしています。

 

原告が5月1日に大阪高等裁判所に控訴しており、今後の審理が注目されます。

 

この記事を執筆した弁護士
弁護士 薄田 真司

薄田 真司
(うすだ まさし)

一新総合法律事務所 弁護士

出身地:新潟県胎内市
出身大学:神戸大学法科大学院修了
主な取扱分野は、企業法務(労務・労働事件、倒産対応、契約書関連、クレーム対応、債権回収など)。そのほか個人の方の債務整理、損害賠償請求、建物明け渡し請求など幅広い分野に対応しています。
事務所全体で300社以上の企業との顧問契約があり、数多くの企業でハラスメント研修の講師を務めた実績があります。​また、社会保険労務士を対象とした勉強会講師を担当し、労務問題判例解説には定評があります。​

 


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