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社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

最低賃金が1,000円以上に引き上げ!? いまさら聞けない最低賃金法の基礎知識(弁護士 五十嵐 亮)

 │ 新潟事務所, 労働, 燕三条事務所, 弁護士五十嵐亮, 長岡事務所, 新発田事務所, 上越事務所, コラム

最低賃金が上がる?

厚生労働省の中央最低賃金審議会では、2023年度の最低賃金の引き上げを巡って、議論が始まっています。

岸田政権は、現在の全国平均時給961円を千円に引き上げたい意向との報道もなされています。

 

この機会に最低賃金法について確認してみましょう。

 

最低賃金法はどんな法律か?

最低賃金法は、労働者の最低賃金を保障することによって、労働者の生活の安定を図ると同時に、事業の公正な競争を確保し、経済の健全な発展に寄与することを目的とした法律です。

 

最低賃金法には、最低賃金の金額が明示されているわけではなく、地域別に最低賃金が決定されなければならないと規定されています。

そして、厚生労働大臣または都道府県労働局長が、中央最低賃金審議会等の意見を聴いて、地域別の最低賃金を決定しなければならないと規定されています。

 

最低賃金法に違反するとどうなる?

まず、事業者が定める賃金の額が、最低賃金の額に達していない場合にはどうなるでしょうか?

そのような場合は、最低賃金額に達しない賃金を定めている労働契約は、無効となり、最低賃金と同様の定めをしたものとみなされます。

 

次に、事業者が支払っている賃金が、最低賃金額に満たない場合には、50万円以下の罰金に処するという刑事罰があります。

通常は、刑事罰の前段階で、行政指導が入り、悪質なケースにおいて刑事罰が科されるということになると思われます。

 

最低賃金を上回っているかどうかの確認方法

最低賃金を上回っているかどうか確認する方法は、賃金の定め方に応じて異なります。

①時給制の場合

時間給≧最低賃金額(時間額) 

となる必要があります。

②月給制の場合

月給÷1か月の平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

となる必要があります。

③出来高制の場合

当該賃金計算期間における出来高制によって計算された総額÷当該賃金計算期間において出来高制によって労働した総労働時間数≧最低賃金額(時間額)

となる必要があります。

 

手当などはどうなるの?

以下の手当は、最低賃金の対象になりません。

最低賃金の計算をする場合は、以下の手当を除外することになります。

(1)臨時に支払われる賃金(結婚手当など)

(2)1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

(3)所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)

(4)所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)

(5)午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)

(6)精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

_________

[参考]厚生労働省「最低賃金の概要」

https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/minimum/minimum-09.htm

この記事を執筆した弁護士
弁護士 五十嵐 亮

五十嵐 亮
(いからし りょう)

一新総合法律事務所
理事/弁護士

出身地:新潟県新潟市 
出身大学:同志社大学法科大学院修了
長岡警察署被害者支援連絡協議会会長(令和2年~)、長岡商工会議所経営支援専門員などを歴任しています。
主な取扱分野は企業法務全般(労務・労働・労災事件、契約書関連、クレーム対応、債権回収、問題社員対応など)、交通事故、離婚。 特に労務問題に精通し、数多くの企業でのハラスメント研修講師、また、社会保険労務士を対象とした労務問題解説セミナーの講師を務めた実績があります。
著書に、『労働災害の法律実務(共著)』(ぎょうせい)、『公務員の人員整理問題・阿賀野市分阿賀野市分限免職事件―東京高判平27.11.4』(労働法律旬報No.1889)があります。


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新聞社の『押し紙』行為を大阪地裁が認定(弁護士 薄田真司)

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1 『押し紙』とは

 

新聞社が販売店に対して不必要な新聞紙の仕入れを強制することは、『押し紙』と呼ばれています。

 

販売店からすれば、新聞に「在庫」がない以上、仕入れ費用が無駄になり、残紙の廃棄費用も生じますので、たまったものではありません。

もっとも、販売店は、新聞紙の供給元である新聞社から取引関係を解消されてしまうと経営が成り立たたなくなり、やむなく新聞社の押し紙に応じざるを得ない場合もあるようです。

 

このような押し紙行為は、公正な競争を阻害する行為として、独占禁止法に反します。

公正取引委員会は、独占禁止法第2条第9項に基づき、「新聞業における特定の不公正な取引方法」(平成11年7月21日告示第9号)を定め、その中で押し紙行為を禁止しています。

 

2 提起された訴訟について

読売新聞の販売店を経営していた元店主が、読売新聞社を被告として、押し紙によって不必要に仕入れざるを得なかった新聞の代金相当額を返金する、又は、仕入れ代金相当額の損害賠償をするよう請求する訴えを大阪地方裁判所に提起しました。

 

原告は、販売店の経営を前店主より引き継いだ平成24年4月から、後店主に引き継ぐ平成30年6月までの間、被告から押し紙行為を受けており、独占禁止法に反する押し紙による新聞購入契約は無効である、被告から返還されるべき仕入れ代金は1億2300万円以上に上る、と主張しました。

これに対し、被告となった読売新聞社は、押し紙行為をした事実などないとして全面的に争いました。

 

また、被告は、原告が被告から従業員募集広告補助金等を詐取していたとして、1000万円程度の損害を賠償するよう求める反訴(被告から原告に請求する訴え)を提起しました。

 

3 裁判所に認定された『押し紙』行為について

大阪地裁は、本年4月20日付けの判決で、読売新聞社が販売店に対し、原告が販売店の経営を前店主から引き継いだ後に、実際に販売・配布する部数(実配数)の約2倍にあたる部数を注文するよう指示していたことを認定し、このような読売新聞社の行為は「新聞業における特定の不公正な取引方法」の第3項第2号(「販売業者に自己の指示する部数を注文させ、当該部数の新聞を供給すること」)に反するものであることを指摘しました。

 

もっとも、結論として、原告の請求は全て棄却しました。

 

理由は次のとおりです。

第1に、独占禁止法は取締法規(新聞社・販売店の契約関係には直結しない行政による規制)にすぎず、その違反があっても、新聞社と販売店との間の新聞販売契約は直ちに無効とならない。

第2に、原告が販売店の経営を前経営者から引き継ぐ際に、販売店の新聞社に対する従前の注文数を維持しており、残紙が出る状況を引き受けていたといえることなどです。

 

被告が原告に請求した1000万円程度の損害賠償については、900万円程度を認容しました。

 

4 地裁判決後の状況について

報道によると、原告代理人弁護士は、「押し紙問題で、読売の独禁法違反が認定されたのはおそらく初めて」と判決を評価しています。

一方、読売新聞社は、一度も注文部数を指示したことはないとし、明らかに誤った認定であり、承服できないとしています。

 

原告が5月1日に大阪高等裁判所に控訴しており、今後の審理が注目されます。

 

この記事を執筆した弁護士
弁護士 薄田 真司

薄田 真司
(うすだ まさし)

一新総合法律事務所 弁護士

出身地:新潟県胎内市
出身大学:神戸大学法科大学院修了
主な取扱分野は、企業法務(労務・労働事件、倒産対応、契約書関連、クレーム対応、債権回収など)。そのほか個人の方の債務整理、損害賠償請求、建物明け渡し請求など幅広い分野に対応しています。
事務所全体で300社以上の企業との顧問契約があり、数多くの企業でハラスメント研修の講師を務めた実績があります。​また、社会保険労務士を対象とした勉強会講師を担当し、労務問題判例解説には定評があります。​

 


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ゼロゼロ融資の返済が本格化します(弁護士 朝妻太郎)

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この記事を執筆した弁護士
弁護士 朝妻 太郎

朝妻 太郎
(あさづま たろう)

一新総合法律事務所
理事/弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:東北大学法学部

関東弁護士連合会シンポジウム委員会副委員長(令和元年度)、同弁護士偏在問題対策委員会委員長(令和4年度)、新潟県弁護士会副会長(令和5年度)などを歴任。主な取扱分野は企業法務全般(労務・労働事件(企業側)、契約書関連、クレーム対応、債権回収、問題社員対応など)のほか、離婚、不動産、金銭問題など幅広い分野に精通しています。
数多くの企業でハラスメント研修、また、税理士や社会保険労務士、行政書士などの士業に関わる講演の講師を務めた実績があります。​
著書に『保証の実務【新版】』共著(新潟県弁護士会)、『労働災害の法務実務』共著(ぎょうせい)があります。

ゼロゼロ融資の返済本格化

 

東京商工リサーチによると、2022年度の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が6,880件(前年度比15.0%増)、負債総額は2兆3,243億7,900万円(同99.0%増)となり、これまでコロナ禍の資金繰り支援策等により減少を続けてきた倒産件数が、低水準ながら3年ぶりに前年度を上回りました。

このうち、2022年度の「新型コロナウイルス」関連倒産は、2,602件(前年度比46.4%増、構成比37.8%)で、前年度(1,777件)の1.4倍に増加しました。

 

実感としても、ここ数ヶ月中に、廃業や倒産の相談が目立つようになりましたし、地元新潟地裁に係属する法人の破産案件の情報にも良く触れるようになってきました。

 

そして、2023年度から、いわゆるゼロゼロ融資(新型コロナウイルス禍で売り上げが減った企業に実質無利子・無担保で融資する仕組み。)の返済が本格化し、今年の夏ころに集中するといわれています。

この返済開始と共に事業継続が困難となる事業者が多数発生することが想定されています。

国は新たな借換保証制度(コロナ借換保証)を創設するなど支援を拡げていますが、廃業等を余儀なくされる企業が出てくることは避けられないと予想されています。

 

取引先の状況に注視を

このメルマガをご覧の企業様の多くは、コロナ融資の元本返済が開始されたとしても直ちに経営状況を左右することは無いかと思います。

しかし、お取引先企業の中には、コロナ融資の返済が開始すると、資金繰りに窮し、最悪の場合、倒産・廃業を余儀なくされるところもあるかもしれません。

 

一度倒産処理が始まってしまうと、正直なところ、事前に担保権を設定するなどしていなければ、債権の回収は極めて困難な状況になります。

多くの相談者の方は、取引先が事業を停止し、弁護士が事後処理にあたるという通知が届いた状況になって初めて相談に来られますが、その時点で相談にお越しいただいても、なかなか手出しできないことの方が圧倒的に多いです。

 

常に疑心暗鬼になり取引先を懐疑的な目で見ることは現実的では無いと思いますが、取引先の普段の様子と異なる点を目にされた場合には、少し注意することは必要でしょう。

また、各取引先とどのような条件で取引をしているのか、取引基本契約書等をご覧いただき、この機会に一度確認されることも有用でしょう。

 

止む無く倒産・廃業を選択せざるを得ない場合

このメルマガをご覧いただいている皆様は、もしかしたら、窮地に陥った取引先や旧知の企業からご相談を受けるかもしれません。

その場合には早急に専門家へのご相談をおすすめください。

御承知のとおり、当座の資金繰りに窮して倒産することが多いわけですが、倒産をするにも、従業員への支払い、手続費用等最低限の資金が必要となります。

これも良くあることですが、現預金が底をついてしまうと、廃業しようにも廃業処理ができない、ということにもなりかねません。

また、最近でも、倒産しかけた企業に、素性の分からないコンサルタントを称する人物が近づいてくる、などという話も耳にします。

 

その意味では、早め早めの対応が必要不可欠といえます。

 


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自転車運転中のヘルメット着用が努力義務になりました

 │ 新潟事務所, 燕三条事務所, 長岡事務所, 新発田事務所, 上越事務所, 交通事故, コラム

令和5年4月1日から自転車運転中のヘルメット着用が義務化されました!

 

ニュースでご存じの方も多いと予想するところですが、道路交通法の改正により、令和5年4月1日から自転車運転中のヘルメット着用が努力義務になりました。

 

以前の道路交通法は「児童又は幼児を保護する責任のある者は、児童又は幼児が自転車を運転するときは、当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。」と定め、ヘルメットの着用は13歳未満の児童と幼児に限る文言としていました。

 

法改正により「自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない。」「自転車の運転者は、他人を当該自転車に乗車させるときは、当該他人に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。」と定められ、13歳以上の人も広くヘルメット着用が努力義務の対象になりました。

 

ヘルメット着用を推進する理由の一つは、自転車運転中の死亡事故の発生や重大な怪我につながることの防止です。

死亡事故のうち頭部の損傷が原因となることは多く、ヘルメット着用率の向上により、死亡事故の減少が期待できます。

 

努力義務化で何が変わるのか

道路交通法は、ヘルメットの着用について「努めなければならない。」と記載するに止まり、あくまでも努力義務を定めたものです。

ヘルメットの着用をしないで運転したとしても罰則はありません。

 

この努力義務化には罰則などの強制力がないため、「強制できない」「意味がないのではないか」などのご意見もあるかと思います。

しかし、法律上定められたことによって、未着用による自転車運転が努力義務に違反していることが明らかとなります。

 

社会の中ではルールを守ることがモラルとして求められます。

法律上努力義務が定められたことによって、今後、自転車運転中のヘルメット着用は社会常識となる可能性があります。

努力義務だからといって軽視することなく、法律上定められたルールを守ることが重要ではないかと考えます。

 

この記事の監修者
弁護士法人一新総合法律事務所

弁護士法人一新総合法律事務所

(新潟県弁護士会・長野県弁護士会・群馬弁護士会・東京弁護士会)

所属弁護士数20名以上。新潟5拠点(新潟・長岡・上越・燕三条・新発田)、長野2拠点(長野・松本)、高崎、東京の全9拠点を構える総合法律事務所です。
当事務所は1978年4月に開設され、その後、弁護士法人を作れるようになった2002年4月にいち早く法人化しました。
法人・個人問わず、企業法務・交通事故・相続・遺言・離婚・債務整理・刑事など幅広い分野に対応してきた実績があります。


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相隣関係規定が改正!隣地使用権の改正ポイント(弁護士:長谷川伸樹)

 │ 新潟事務所, 燕三条事務所, 長岡事務所, 新発田事務所, 上越事務所, 弁護士長谷川伸樹, コラム

この記事を執筆した弁護士
弁護士 長谷川 伸樹

長谷川 伸樹
(はせがわ のぶき)

一新総合法律事務所 弁護士

出身地:新潟県村上市
出身大学:神戸大学法科大学院修了

新潟県弁護士会裁判官選考検討委員会委員長などを務める。

主な取扱分野は、交通事故、債務整理、労働問題。そのほか相続、離婚など幅広い分野に対応しています。
事務所全体で300社以上の企業との顧問契約があり、複数の企業で各種ハラスメント研修の講師を務めた実績があります。

1 相隣関係規定の改正が迫っています!

令和5年4月1日、民法の相隣関係規定の改正法が施行されます。

 

債権法改正に比べるとインパクトは大きくなく、メディアで頻繁に取り上げられているわけでもないためご存じでない方も多いかもしれません。

ただ、相隣関係、つまりお隣さんとのご近所付き合いの中で生じる問題に関する法規制の改正ですので、債権法の改正と同じくらい、皆さんの生活に近しい分野の法改正となります。

 

さらに紛争の解決にも役立つ改正内容もありますので、今回は改正内容の1つである「隣地使用権」を取り上げて解説したいと思います。

 

2 お隣さんの土地を無断で使用できる?「隣地使用権」改正のポイント

 

実はこの隣地使用権、改正前の民法(現在の民法)209条にも似たような規定があります。

土地所有者は「土地の境界またはその付近において障壁または建物を築造、または修繕するために必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる権利」です。

しかし、お隣さんに「隣地の使用を請求することができる」と定められていても、何を請求できるのか、お隣さんが請求を拒否した場合はどのようなことができるのかが不明確であり、争いごとの解決には心許ないものとなっていました。

 

今回の改正では、お隣さんに何らかの請求をするのではなく、お隣さんの土地を「使用できる権利」を直接定めることとなりました。

隣地を使用する権利を直接定めたことが改正の肝となります。

 

3 ご注意ください!隣地使用の条件

「お隣さんの土地を勝手に使うことができるのか?」と不安に思われる方もいるかもしれませんが、もちろん無制限に使用できるわけではありません。

 

改正民法209条1項は①以下の場合に、②必要な範囲で、「隣地を使用することができる」と定められています。

 

  • ●境界orその付近における壁、建物などの収去・修繕
  • ●境界標の調査or境界に関する測量
  • ●隣地から自身が所有する土地に越境して伸びた枝の切取り(※隣地所有者が切除に応じてくれない場合などに限られます。)

 

さらに、隣地使用の日時、方法等については、お隣さんにもっとも負担が少ないものを選択する必要がありますし、事前の通知義務や、損害が生じた場合の賠償義務も民法に規定されています。

隣地を無制限に使用できるわけではないという点は十分ご注意ください。

 

4 「隣地使用権」活躍の場

このような規定は、ご近所付き合いが良好な方の場合は特に問題になりません。

お隣さんに丁寧にごあいさつにいって、隣地使用の承諾をいただき、使用のお礼をすれば特に問題が生じません。

 

もっとも、現在はお隣さんとのお付き合いも希薄になっている方も多いかと思いますし、お隣さんが少し個性的な方である場合もあります。

隣地付近の壁が老朽化し、放置すれば崩れてしまい歩行者が怪我を負うなどの危険が生じていても、お隣さんが嫌がらせで隣地使用を承諾しなかったり、高額の使用料を請求されたりする場合もないとはいえません。

 

このような問題が起こった際にも、改正民法の規定を根拠に隣地の使用を正当化できるわけですね。

壁の補修・収去作業ができない!といった事態を回避することができます。

 

5 おわりに

隣地使用権の他にも、隣地から伸びた枝の切除に関する規定の改正等もされています。

お隣さんとの間でいさかいが起こってしまった際には、ぜひ改正民法の存在を思い出し、弊事務所までご相談いただければ幸いです。

 


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