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社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

相隣関係規定が改正!隣地使用権の改正ポイント(弁護士:長谷川伸樹)

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この記事を執筆した弁護士
弁護士 長谷川 伸樹

長谷川 伸樹
(はせがわ のぶき)

一新総合法律事務所 弁護士

出身地:新潟県村上市
出身大学:神戸大学法科大学院修了

新潟県弁護士会裁判官選考検討委員会委員長などを務める。

主な取扱分野は、交通事故、債務整理、労働問題。そのほか相続、離婚など幅広い分野に対応しています。
事務所全体で300社以上の企業との顧問契約があり、複数の企業で各種ハラスメント研修の講師を務めた実績があります。

1 相隣関係規定の改正が迫っています!

令和5年4月1日、民法の相隣関係規定の改正法が施行されます。

 

債権法改正に比べるとインパクトは大きくなく、メディアで頻繁に取り上げられているわけでもないためご存じでない方も多いかもしれません。

ただ、相隣関係、つまりお隣さんとのご近所付き合いの中で生じる問題に関する法規制の改正ですので、債権法の改正と同じくらい、皆さんの生活に近しい分野の法改正となります。

 

さらに紛争の解決にも役立つ改正内容もありますので、今回は改正内容の1つである「隣地使用権」を取り上げて解説したいと思います。

 

2 お隣さんの土地を無断で使用できる?「隣地使用権」改正のポイント

 

実はこの隣地使用権、改正前の民法(現在の民法)209条にも似たような規定があります。

土地所有者は「土地の境界またはその付近において障壁または建物を築造、または修繕するために必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる権利」です。

しかし、お隣さんに「隣地の使用を請求することができる」と定められていても、何を請求できるのか、お隣さんが請求を拒否した場合はどのようなことができるのかが不明確であり、争いごとの解決には心許ないものとなっていました。

 

今回の改正では、お隣さんに何らかの請求をするのではなく、お隣さんの土地を「使用できる権利」を直接定めることとなりました。

隣地を使用する権利を直接定めたことが改正の肝となります。

 

3 ご注意ください!隣地使用の条件

「お隣さんの土地を勝手に使うことができるのか?」と不安に思われる方もいるかもしれませんが、もちろん無制限に使用できるわけではありません。

 

改正民法209条1項は①以下の場合に、②必要な範囲で、「隣地を使用することができる」と定められています。

 

  • ●境界orその付近における壁、建物などの収去・修繕
  • ●境界標の調査or境界に関する測量
  • ●隣地から自身が所有する土地に越境して伸びた枝の切取り(※隣地所有者が切除に応じてくれない場合などに限られます。)

 

さらに、隣地使用の日時、方法等については、お隣さんにもっとも負担が少ないものを選択する必要がありますし、事前の通知義務や、損害が生じた場合の賠償義務も民法に規定されています。

隣地を無制限に使用できるわけではないという点は十分ご注意ください。

 

4 「隣地使用権」活躍の場

このような規定は、ご近所付き合いが良好な方の場合は特に問題になりません。

お隣さんに丁寧にごあいさつにいって、隣地使用の承諾をいただき、使用のお礼をすれば特に問題が生じません。

 

もっとも、現在はお隣さんとのお付き合いも希薄になっている方も多いかと思いますし、お隣さんが少し個性的な方である場合もあります。

隣地付近の壁が老朽化し、放置すれば崩れてしまい歩行者が怪我を負うなどの危険が生じていても、お隣さんが嫌がらせで隣地使用を承諾しなかったり、高額の使用料を請求されたりする場合もないとはいえません。

 

このような問題が起こった際にも、改正民法の規定を根拠に隣地の使用を正当化できるわけですね。

壁の補修・収去作業ができない!といった事態を回避することができます。

 

5 おわりに

隣地使用権の他にも、隣地から伸びた枝の切除に関する規定の改正等もされています。

お隣さんとの間でいさかいが起こってしまった際には、ぜひ改正民法の存在を思い出し、弊事務所までご相談いただければ幸いです。

 


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ChatGPTと著作権(弁護士:山田 真也)

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この記事を執筆した弁護士
弁護士 山田 真也

山田 真也
(やまだ しんや)

一新総合法律事務所 弁護士

出身地:新潟県新潟市 
出身大学:一橋大学法科大学院修了
国立大学法人において倫理審査委員会委員(2021年~)を務める。
主な取扱分野は、離婚、相続、金銭問題等。そのほか民事、刑事問わずあらゆる分野に精通し、個人のお客様、法人のお客様を問わず、質の高い法的サービスを提供するように心掛けています。

1 はじめに

最近世間で話題になっています対話型AI「ChatGPT」(チャットジーピーティー)をご存じでしょうか?

今回は、この「ChatGPT」について解説します。

 

2 ChatGPTとは

ChatGPTとは、アメリカに所在する人工知能(AI)研究所である「OpenAI」が2022年11月に公開した人工知能チャットボットです。

「チャットボット」とは、「チャット」(会話)と「ボット」(ロボット)を組み合わせた言葉で、自動会話プログラムを意味します。

 

これまでも様々なチャットボットは存在していましたが、その中でも、ChatGPTは、より自然な対話・文章形成が可能ということで注目を集めています。

 

2023年3月1日時点では、ChatGPTは「無料プラン」(ChatGPT)と「有料プラン」(ChatGPT Plus)がそれぞれ提供されています。

 

3 ChatGPTと著作権

ChatGPTにより作成された文章の著作権は誰に帰属するのでしょうか?

 

ChatGPTを提供しているOpenAIの利用規約(※)によれば、「法律に違反しない範囲で、ユーザーはすべての文章を所有し、ユーザーが規約を遵守している限りは、OpenAIは出力に対するすべての権利、利益をユーザーに譲渡するものとします。」と要約できます。

 

当然のことながら、今後、利用規約が変更される可能性もありますが、この利用規約を読む限り、少なくとも現時点では、ユーザーが規約を遵守しているという条件付きではあるものの、ChatGPTにより作成された文章の著作権はユーザーにあると考えられます。

 

しかしながら、ここで注意しなければならないことがあります。

それは、「ChatGPTにより作成された文章自体に著作権侵害が含まれていないか否か」です。

 

ChatGPTにより作成された文章の著作権がユーザーにあるとしても、その文章自体に著作権侵害が含まれていれば、ユーザーは著作権違反に問われる可能性があります。

そのため、ChatGPTにより作成された文章について単なる私的な利用にとどまらず、外部に公開等する場合には、著作権侵害の有無の観点から内容をきちんと確認する必要があると考えられます。

 

また、現状では、ChatGPTにより作成された文章について、必ずしも内容の正確性が担保されておらず、誤った内容・情報が含まれた文章が作成されてしまうこともあるようです。

 

以上を踏まえますと、ChatGPTにより作成された文章の利用については、少なくとも著作権の問題がもう少しクリアになり、かつ、内容の正確性が担保されるまでは、私的な利用にとどめ、対外的な場面での利用には慎重になったほうが無難かもしれません。

 

4 おわりに

最近、「ChatGPTを利用した論文やレポート作成」についての記事・ニュースを目にしました。

ChatGPTは、より人間に近い自然な文章作成が可能になったAIですが、現時点では、先に説明しましたように内容に誤りが含まれる可能性はありますし、論文やレポートを採点する立場の人が読めば、自分で考えて書いた文章なのか否かある程度判別が可能なのかもしれません。

 

しかしながら、思い返しますと、私が学生のころは、AIが論文やレポートを作成するなど思いもしない話でした。

現時点では、発展途上にあるAIですが、いつの日か、完璧な論文・レポートを作成するAIが登場するのかもしれません。

 

 

※引用元URL

OpenAI利用規約:https://openai.com/policies/terms-of-use


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「食べログ」裁判から感じること

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1 はじめに

まだまだ新型コロナウイルスには注意が必要な状況ですが、当初と比べて感染予防に対する考えも変わってきています。

 

最近では、家族や友人、恋人と一緒に飲食店で食事をしたり、会社によっては、小規模な飲み会を開催しているところもあるかと思います。

飲食店を探す際に役に立つのがグルメサイトで、多くの方が利用されているかと思います。

 

今回は、大手グルメサイト「食べログ」の評点変更問題をめぐる裁判を紹介したいと思います。

 

2 「食べログ」評点変更問題とは?

 

「食べログ」評点変更問題とは、2019年5月、「食べログ」の評点を決めるアルゴリズム(計算手順)の変更が、独占禁止法に違反するとして、焼き肉チェーン店が損害賠償を求めた裁判になります。

昨年6月、第1審(東京地方裁判所)は、焼き肉チェーン店側の主張を一部認めて、およそ3800万円の賠償を命じました。

 

「食べログ」の運営会社側は、第1審の判断を不服として控訴し、さらに第1審の判決の内容について閲覧制限を申し立てました。

そして、本年1月、裁判所が閲覧制限とする範囲を決定し、判決の内容が明らかになりました。

 

第1審判決によりますと、問題となったアルゴリズムの変更とは、チェーン店の「認知度の調整」をするという内容でした。

しかし、対象となるチェーン店として、フランチャイズ店は対象になるのに対して、ファミレスやファストフード店は調整の対象にはなっていませんでした。

そのような調整の結果、対象となった焼き肉チェーン店の評点が低下し、その影響で来店者も減少した、と第1審は認定したわけです。

 

グルメサイトの評点と聞くと、「飲食店の利用客が、主観的な感覚で評価した点数が蓄積したもの」というイメージがあるかと思います。このような調整が介入することで、チェーン店のみ評点が低下するという影響を受けるという結果は、チェーン店にとっても、消費者にとっても意外に感じるのではないでしょうか。

 

3 判決のポイントは何か

先に説明したとおり、「食べログ」のアルゴリズム変更は、独占禁止法に違反すると判断されました。

 

独占禁止法と聞くと、カルテルとか談合をイメージするかもしれないですが、本件で問題となったのは、「不公正な取引方法」という禁止類型のうち「優越的地位の濫用」と呼ばれるものです。

 

飲食店にとってグルメサイトに登録することは、いまや営業上必須であり、「食べログ」が大手であることからすれば、飲食店からみれば「食べログ」の運営会社の立場は「優越的地位」に当たること自体に問題はないと考えられます。

 

そこで問題となるのは、「食べログ」の運営会社が、その優越的地位を「濫用」したと言えるかが問題となるわけです。

独占禁止法は、「濫用」の一つのパターンとして、「不当に差別的に取り扱うこと」を挙げています。

 

結局のところ、「不当」なのかどうか、「差別的」と言えるのかに争点は集約されるのだろうと思います。

 

この議論は本当に難しい問題です。

それは、男女差別の問題、障がい者差別の問題をはじめ、世の中には、区別が「不当」なのかどうか、「差別的」と言えるのか、様々な議論がなされていることからも分かるかと思います。

 

この議論で重要なポイントは、「目的達成のために合理的な手段と言えるのか」を考えることです。

そもそも、何の目的もなく区別すれば、「不当な区別で差別的」だと言えるでしょう。

また目的はあっても、それを達成するのに合理的な手段でないとすれば、やはり「不当な区別で差別的」と言わざるを得ないと思います。

 

では、「食べログ」のアルゴリズム変更は、何が目的だったのでしょうか。

 

とても気になるところですが、この点については、第1審判決内容の閲覧制限の対象となったため、明らかにはなりませんでした。

 

しかし、結論としては、第1審は、アルゴリズムの変更は、目的達成のため不合理な手段であったと判断したことになります。

 

4 「食べログ」裁判を通じて感じること

本裁判については、不服申立ての手続きが取られたことで控訴審の判断に委ねられることになりました。

大手グルメサイトをめぐる裁判でもあり、世間からも注目が集まるでしょうし、飲食業界に与える影響力も大きいと思います。

 

司法判断はともかく、消費者の一人として感じることは、ネットで現れる数値に踊らされているのではないか、ということです。

考えてみれば、同じ飲食店であるのに、最低評点1をつける人もいれば、最高評点5をつける人もいます。

そのようにして決められた評点を気にしすぎる消費者にも問題があるように感じます。

 

もちろん、美味しい店で食事をしたいという気持ちは当然ですが、それは実際に自分で食べてみなければ分からないことだと思います。

仮に、「イマイチだった」という感想であっても、それもまた良い思い出と考えるくらいの寛大な気持ちも大切なのかもしれません。

 


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新潟県弁護士会編集による『労働災害の法律実務』出版のご紹介(弁護士:和田 光弘)

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この記事を執筆した弁護士
弁護士 和田 光弘

和田 光弘
(わだ みつひろ)

一新総合法律事務所
理事長/弁護士

出身地:新潟県燕市
出身大学:早稲田大学法学部(国際公法専攻)

日本弁護士連合会副会長(平成29年度)​をはじめ、新潟県弁護士会会長などを歴任。

主な取扱い分野は、企業法務全般(労務・労働事件(企業側)、契約書関連、クレーム対応、債権回収、問題社員対応など)。そのほか、不動産問題、相続など幅広い分野に精通しています。
事務所全体で300社以上の企業との顧問契約があり、企業のリスク管理の一環として数多くの企業でハラスメント研修の講師を務めた実績があります。​

『労働災害の法律実務』出版!

2022年8月、新潟県弁護士会が『労働災害の法律実務』という実務家用の専門書を編集しました。

 

想定している購入者は主として弁護士ではありますが、むろん、一般の方も気になるところだけ読む限りでは参考になると思います。

使用者の方も、労災に遭われた方も、両方の立場で見ても有益でしょう。

 

どうして、こんな本を新潟県弁護士会が作ったのでしょうか。

 

実は、弁護士会には、「関東十県会」という、多少何か反社会勢力の片割れのようにも思える(?むろん誤解です。)名前の団体があります。

 

これは、東京の3つの弁護士会(第一東京弁護士会、第二東京弁護士会、東京弁護士会)を除いた東京高等裁判所管轄内の10弁護士会(新潟、長野、群馬、栃木、茨城、埼玉、千葉、神奈川、静岡、山梨)によって構成される団体です。

 

この十県会では、毎年8月に持ち回りで夏期研究会を開催して、様々な専門分野の研究成果を発表しています。

 

それが、今年、新潟県弁護士会の当番となり、この本が編集されたのです。

 

これまでにも、「保証」や「相殺」、「契約解除」などが取り上げられています。

 

なぜ「労働災害」か?

それでは、今年はどういうことから「労働災害」を取り上げたのでしょうか。

 

実は、事業をやっていれば、けっこう労働災害にはぶつかるのですが、実際に弁護士のところまで相談に来るというケースは案外少ないのです。

 

令和3年1月から12月までの「休業4日以上の死傷者数」というものが、厚生労働省から発表されています。

 

14万9918人、つまりほぼ15万件です。

 

そのうち、死亡者数は867人となっています。

 

大半のケースは、弁護士のところに行くほどのことにはならないため、意外と弁護士たちも初めて経験するという人が多いのです。

 

それで、「初めての弁護士にもわかりやすく」「経験のある弁護士にも役に立つ」という考え方に基づいて、この「労働災害」が選ばれたわけです。

 

お前は何をしたのか、と聞かれそうです。

 

実は、私はこの新潟県弁護士会における実行委員会(正式には「2022年度関東十県会夏期研究会実行委員会」という長い名前)の委員長をやりました。

 

本当は、委員長というのは、「そうせい」とだけ言っていれば良い役回り(幕末長州藩の殿様が家臣の言うことに反対せず「そうせい」とだけ言っていたので「そうせい侯」という渾名がついたそうですが。)のはずなのですが、今回は、最後に原稿枚数が多すぎて予算が足りなくなるという大問題が発生して、会員がせっかく用意してくれた玉稿をあれこれ短くしたり、酷い場合にはボツにするという荒技もやらざるを得ず、大変な役回りとなりました。

 

何か、知らずに自慢めいた話になりかねないので、ここでやめます。

 

本の中身は?

 

さて、大事な中身の話です。

 

一体、何が書かれているかということです。

 

本当はご購入いただければ、大変嬉しいのですが、忙しい皆様にそうもお願いできないので、ほんのさわりをご紹介します。

 

まずは、労災事件というものの基礎的な事柄を解説しています。

 

制度概要はもちろんですが、手続の概要も説明しています。

 

わからないことを探すには、ここが手っ取り早いでしょう。

 

その次に、「業務上で起きた災害」(専門的には「業務起因性」)というためにはどのような要件が必要か、ということを解説しています。

 

普通は、この2つの説明を受ければ、大体はわかるということになります。

 

問題は、労働基準監督署の手続で終わらず、裁判になってしまった場合です。

 

そこでは、使用者が果たさなければならない「安全配慮義務」という問題があり、それが、労働契約とどういう関係があるのか、また民法の不法行為責任とどういう関係にあるのか、という専門的な問題を、様々な事故の状態を取り上げて解説しています。

 

これが第3章なのですが、ほぼ100ページを費やしていまして、専門家にとっては、とても重要なところです。

 

日本の労働実態で大きな問題は何か、心当たりがありますか。

 

それは、過重労働とハラスメントです。

 

その2つについて、たくさんの裁判所の判断が出ていまして、その判例の状況も詳しく載せています。

 

専門家必読の箇所です。

 

その次が損害論で、過失相殺の実情を裁判所の判断を中心に論じています。

 

この分野も本書の特徴ですが、裁判所が使用者と労働者で損害をどのように振り分けているか、実際のところ、非常に参考になるところです。

 

ほかには、証拠収集の方法や、特殊な法律関係にある公務員の場合などを解説しています。

 

どうですか、1冊ぐらい?

ということで、中身も盛り沢山です。

 

全400ページで4500円プラス消費税というギリギリ5000円に入るところで価格設定されています。

 

安くはありませんが、中身を見れば高くもないでしょう。

 

「あとがき」を私が書いています。

 

お試しに1 冊いかがですか。

 

 

<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2022年12月5日号(vol.275)>

※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。


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賃金のデジタル払いについて 導入のための手続きと注意点(弁護士:鈴木孝規)

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弁護士 鈴木 孝規

鈴木 孝規
(すずき たかのり)

一新総合法律事務所  弁護士

出身地:静岡県静岡市
出身大学:一橋大学法科大学院既修コース卒業
主な取扱分野は、企業法務(労務・労働事件(企業側)、契約書関連、クレーム対応、債権回収など)。そのほか相続、金銭トラブルなど幅広い分野に対応しています。
企業法務チームに所属し、社会保険労務士向け勉強会では、ハラスメント対応をテーマに講師を務めた実績があります。

1 はじめに

改正された労働基準法施行規則が、令和5年4月1日から施行されることにより、いわゆる賃金のデジタル払いが可能となりました。

本コラムでは、この改正の概要等について、簡単に説明したいと思います。

 

2 現行法上の賃金支払方法

そもそも、労働基準法上では、賃金は通貨で直接労働者に支払わなければならないと規定されており(労働基準法24条)、現金の手渡しが原則とされています。

ただし、労働者が同意した場合には、預貯金口座及び証券総合口座への振込みが認められています(労働基準法施行規則7条の2)。

このような規定により、実際には、現金手渡しではなく、預貯金口座への振込みによる方法で賃金の支払がなされていることが多いかと思われます。

 

3 改正の内容等

 

 

今回の改正では、労働者の同意を得た場合、一定の要件を満たすものとして厚生労働大臣が指定する資金移動業者(指定資金移動業者)の口座(○○Payなど)への資金移動により、賃金を支払うことが可能となります。

労働基準法上、現金の手渡しが原則とされているのは、労働者が確実に賃金を受領できるようにして労働者の経済的安定を図るためですので、一定の要件の中には、労働者が確実に賃金を受領できることを担保するという点から定められたものもあります。

 

例えば、保証委託契約の締結等により、破産等で支払いができなくなったときに、資金移動業者の口座残高の額が保証される仕組みを有していることや、労働者に責任のない不正の引き出し等により労働者が損失を被った場合に、その損失を補償する仕組みを有していることが要件として定められています。

また、現金自動預払機(ATM)等で資金移動業者の口座へ移動された額を1円単位で受取ができるための措置や、 少なくとも毎月1回は手数料等の負担をすることなく受取ができるための措置を講じていることも、要件の1つとされています。

 

さらに、賃金を受け取る資金移動業者の口座について、口座残高の上限額が100万円を超えることがないようにするための措置、または、口座残高が100万円を超えた場合に、その額を速やかに100万円以下とするための措置を講じていることも要件とされています。

これは、資金移動業者の口座は、預貯金口座とは異なり、為替取引(送金や決済等)を目的としたものと考えられており、資金決済法上でも資金を滞留させない体制の整備が求められていることや、破綻時に口座残高全額が保証されることを担保するための要件となります。

 

このような措置が講じられていることにより、賃金のデジタル払い等で、資金移動業者の口座残高が100万円を超えてしまった場合、自動的に100万円を超えた部分が金融機関の預貯金口座等に振込まれ、その振込にかかる手数料等の負担を求められる可能性もあると思われますので、注意が必要です。

 

4 賃金のデジタル払いを導入するために必要な手続き

企業側としては、賃金のデジタル払いの導入にあたって、各事業場において、労働者の過半数で組織された労働組合(このような労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者)と、賃金デジタル払いの対象となる労働者の範囲や利用する指定資金移動業者の範囲等を定めた労働協約を締結する必要があります。

加えて、預貯金口座や証券総合口座への振込みも選択肢として提示し、留意事項等の説明をしたうえで、賃金デジタル払いを希望する個々の労働者から同意を得る必要があります。

 

厚生労働省のホームページには、同意書の書式例が掲載されていますが、そこには、口座残高の上限額などの関係から、代替口座として指定する預貯金口座等も記載することが求められています。

 

5 おわりに

本改正では、あくまでも賃金の支払方法の選択肢の1つとして、デジタル払いが認められたにすぎず、企業側が、労働者にデジタル払いを強制することはできないとされています。

また、デジタル払いができるのは、厚生労働大臣から指定を受けた資金移動業者の口座のみで、この指定の申請を行うことができるのは令和5年4月1日からとなっており、厚生労働省のホームページでは、指定申請の審査には数か月かかることが見込まれるとされていますので、実際に導入できるのは、もう少し先になるかと思われます。

 

キャッシュレス決済の需要等が高まっている中、賃金のデジタル払いの需要も一定程度あるかと思われます。

賃金デジタル払いを導入するかどうかを検討するに際して、企業側も労働者側も、この制度の内容やデメリット等を十分に理解する必要があるといえます。

 


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