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社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

妊娠等に近接した時期になされた解雇は有効か?~東京地裁平成29年7月3日判決~

 │ 新潟事務所, ビジネス, 労働, 燕三条事務所, 弁護士五十嵐亮, 長岡事務所, 新発田事務所, 上越事務所, 企業・団体, 東京事務所

事案の概要

妊娠等に近接した時期になされた解雇は有効か?~東京地裁平成29年7月3日判決~

 

Y社の従業員であったXが、産休及び育休を取得した後にY社からなされた解雇が男女雇用機会均等法9条3項(以下「均等法」)に違反するとして解雇後の未払い賃金及び慰謝料200万円の支払を求めた事案。

Y社は、英文の学術専門書籍等の出版販売等を行う会社。

Xは、平成18年に入社後、制作部にて学術論文の電子投稿査読システムの技術的なサポートを提供する業務に従事。

Xは、平成26年8月から、第2子出産のための産休を取得し、同年9月2日に出産後引き続き育休を取得。

その後、Xは、職場復帰について調整を申し入れたところ、Y社は、従前の部署に復帰するのは難しいため、インドの子会社への転籍か、収入が大幅に下がる総務部のコンシェルジュ職への異動を提示し、Xに対し退職勧奨。

Xが退職勧奨を拒否したところ、給料は支払われたものの、就労を認めない状態が継続。

Y社は、同年11月27日付で協調性不十分、職務上の指揮命令違反等を理由に解雇。

裁判所の判断

妊娠等に近接した解雇であるとして、均等法9条4項違反となるか?

 

裁判所は、事業主が、妊娠以外の解雇理由を主張していたとしても、客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当でないと認められる場合には、解雇は違法・無効となる旨判示しました。

 

本件において解雇理由は認められるか?

 

Y社は、解雇理由として、「Xが自分の処遇・待遇に不満を持って上司に執拗に対応を求めたり、上司の求めに非協力的であったり、時に感情的になって極端な言動をとったりするなどして、上司がXへの対応に時間をとられた」との事情を主張しました。

 

しかし、裁判所は、Xの言動に対して、文書を通じての注意や懲戒処分は行われていないことを指摘し、本件においては「その後の業務の遂行状況や勤務態度を確認し、不良な点があれば注意・指導、場合によっては解雇以外の処分を行うなどして、改善の機会を与えることのないまま、解雇を敢行する場合、法律上の根拠を欠いたものとなる」と判示しました。

 

結論として、裁判所は、解雇を無効とし、Y社に対し、平成27年12月24日から判決確定までの月額給与の支払い及び慰謝料として55万円の支払いを命じました。

ポイント

本件は、妊娠等に近接した時期になされた解雇については、事業主が形式的に妊娠以外の解雇理由を示せばよいわけではないことがポイントです。

 

加えて、協調性不足等の理由で解雇する場合には、注意指導を行い、それでも改善しない場合には、懲戒処分をするなど、段階を踏むことが求められていることも重要です。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 五十嵐 亮

<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2018年12月5日号(vol.227)>

※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

働き方改革関連法について

 │ 新潟事務所, ビジネス, 労働, 燕三条事務所, 長岡事務所, 新発田事務所, 上越事務所, 企業・団体, 東京事務所, 弁護士細野希

2018年6月29日、「働き方改革関連法」(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案)が成立し、2019年4月1日から施行されることになりました。

 

これに伴い、労働基準法を始めとする関連法令が改正され、各企業は、就業規則の整備等の対応を取ることが必要となりました。

 

働き方改革関連法においては、主に「労働時間」及び「同一労働同一賃金」に関する法整備が行われていますので、ポイントをご説明したいと思います。

≪労働時間関係≫…労働基準法等関係

(1)時間外労働の上限規制

今まで、時間外労働は、労働基準法36条2項で、厚生労働大臣により基準を定めることができると規定されていましたが、法律上は規定されていませんでした。

 

そこで、長時間労働を是正するために、時間外労働の上限は、原則として月45時間、年360時間と定めることになりました。

 

また、臨時的な特別な事情がある場合でも、時間外労働の上限は、年720時間、月単位100時間未満(休日労働を含む)、複数月平均80時間(休日労働を含む)を限度とするとされています。

 

特別な事情とは臨時的なものに限られ、一時的又は突発的であること、1 年の半分を超えないと見込まれることが必要です。

 

なお、中小企業における時間外労働の上限規制に係る改正規定は、2020年4月1日から適用されます。

(2)年次有給休暇の確実な取得

使用者は、年休が10日以上付与される労働者に対し、年5日の年休については、毎年、時季指定をして与えなければならないとされました。

 

ただし、労働者の時季指定や計画的付与により取得された年休の日数分については、指定の必要はありません。

 

また、使用者が、時季を定めるに当たっては、①労働者に対して時季に関する意見を聴く、②時季に関する労働者の意思を尊重するよう努める、③使用者は、年休の取得を確実に把握するために管理簿を作成する、ことが必要となりました。

(3)月60 時間超の時間外労働に対する割増賃金

労働基準法37条1項ただし書きでは、1か月60時間を超える時間外労働をした場合、その超えた時間に対して、通常の賃金の50%以上の率で計算した割増賃金を支払うことが定められていましたが、中小企業に対しては猶予措置が定められていました。

 

しかし、今回の法改正で、中小企業への猶予措置は2023年4月1日から廃止されることになりました。

 

そのため、中小企業であっても1か月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率は、限度時間を超える時間外労働の割増賃金率の定めにかかわらず、50%以上とする必要があります。

 

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(4)高度プロフェッショナル制度の創設

高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務(対象業務)に就く労働者については、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規制を適用しないとされました。

 

対象業務としては、金融商品の開発業務、アナリスト業務(企業・市場等の高度な分析業務)、コンサルタントの業務(事業・業務の企画運営に関する高度な考案又は助言の業務)、研究開発などが挙げられています。

 

ただし、職務範囲が明確に定められていること、年収が1075万円以上であること、健康確保措置が講じられていること、本人の書面等による同意を得ることなど様々な条件を満たしている必要があります。

≪同一労働同一賃金関係≫…パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法関係

(1)不合理な待遇差を解消

同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体における正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

 

今回の法改正では、次のことが定められることになりました。

 

 

ⅰ パートタイム・有期雇用労働者について、正規雇用労働者との不合理な待遇の禁止に関し、個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断される旨の明確化

ⅱ 有期雇用労働者について、正規労働者と「職務内容」「職務内容・配置の変更範囲」が同一である場合には均等待遇の確保の義務化

ⅲ 派遣労働者について、派遣先の労働者との均等・均衡待遇又は一定の要件(同種業務の一般の労働者の平均的な賃金と同程度以上の賃金であること等)を満たす労使協定による待遇の義務化

 

 

なお、パートタイム・有期雇用労働者についての正規雇用労働者との不合理な待遇差の禁止規定は、2020年4月1(中小企業は、2021年4月1日)から適用されます。

 

派遣労働者について、派遣先の労働者との不合理な待遇差の禁止規定は、中小企業も含めて2020年4月1日から適用されます。

(2)待遇に関する説明義務

正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明についても義務化されました。

 


 

働き方改革は、長時間労働、雇用の格差、労働力人口の減少など様々な問題を改善し、労働者が多様な働き方を選択できる社会の実現を目的としています。

 

改正法は、使用者にとっては負担が大きくなることもあるかもしれませんが、労働環境を適切に保つことによって、労働者とのトラブルを未然に防止し、生産性を高める結果に繋がることもありますので、今一度、働き方の見直しをされてみてはいかがでしょうか。

 

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 細野 希

<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2018年11月5日号(vol.226)>

※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

契約の錯誤無効について~反社会的勢力への対策~

 │ 新潟事務所, ビジネス, 燕三条事務所, 長岡事務所, 新発田事務所, 上越事務所, 企業・団体, 東京事務所

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今回は、反社会的勢力と契約の有効性について取り上げたいと思います。

 

暴力団が典型ですので、暴力団を中心に説明したいと思います。

 

暴力団対策法(正式には「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」)は、暴力団を構成員が犯罪に当たる暴力的違法行為を集団的・常習的に行うことを助長するおそれがある団体と定義し、各都道府県の公安委員会は同法に基づき、様々な取り締まりを行っています。

 

もし、暴力団から、暴力的な犯罪行為の被害に遭ったり、遭いそうになったりした場合には、警察、暴力団追放センター、弁護士・弁護士会に相談をし、被害の回復や被害の防止を図っていくことになります。

 

その一方で、暴力団は、その資金源を得たり、活動拠点を確保するために、日常生活や取引社会における様々な場面に現れ、一般人や一般事業者と接点を持とうとしてくるため、知らないうちに暴力団と接点を有してしまうことがあります。

 

例えば、外見からは暴力団員が運営しているとは分からないような会社を立ち上げ、金融機関から融資を受けたり、事業所を借りたりする場合があります。

 

そして、事業者にとって、取引相手が暴力団関係者と判明した場合には、直ちに関係を絶つことが求められています。

 

新潟県暴力団排除条例は、暴力団の排除を基本理念に掲げ、事業者に対し、相手が暴力団であることを知りながら、その活動を助長したり、運営に資することになる利益の供与(取引)を禁止しています(第11条第1項⑵)。

 

他方で、同条例は、相手が暴力団であることを知らないでした契約上の義務を履行することは禁止していません。

 

これは、暴力団であるとの事情は、当然には契約を無効にするわけではないという法解釈に基づいています。

 

つまり、“取引相手が暴力団であることを予め知っていれば契約を交わすことはなかったから契約はなかったことにしてほしい”との主張は、法制度に当てはめると「錯誤」(民法95条)の主張となります。

 

確かに、「錯誤」が認められれば契約は無効となりますが、前記のような契約締結の“動機”内容に錯誤がある場合については、無制限に契約を無効とすれば取引が極めて不安定になります。

 

それゆえ、裁判所は、「動機が表示されて契約の内容となった」と認められる必要があるとの法解釈を採っています。

 

最高裁は、近年、金融機関が暴力団に対し貸し付けた貸付金を保証する旨の信用保証協会の保証契約の有効性について、貸付者が反社会的勢力であるとの事実が事後的に判明した場合の対応や取扱いに関する規定が契約書にないことを理由に、契約は有効であると判断しました(平成28年1月12日判決)。

 

その賛否はともかく、契約書に明示的に定めていない限り、“取引相手が暴力団であることを予め知っていれば契約を交わすことはなかったから契約はなかったことにしてほしい”との主張は、法的には認められないことになるのです。

 

以上を踏まえると、取引相手が暴力団であるとの事情が事後的に判明した場合への事前の対応策は、詰まるところ契約書に必要な条項を挿入すべきことになります。

 

新潟県暴力団排除条例は、事業者に対し、書面で契約を締結する場合には、契約の相手方が暴力団員であることが判明したときには催告することなく契約を解除することができる旨を定めることの努力義務を課しています(第12条第2項)。

 

法的義務ではなく努力義務ではありますが、暴力団排除という社会的使命を果たすためにも、必要な措置として励行すべきと思われます。

 

もう一つ、大切な対策として、事前の確認義務の問題があります。

 

先に触れた事例も、保証人側は、金融機関が、借主が反社会的勢力に属することの調査を怠ったと主張し、最高裁判所も、契約時に一般的に行われている調査方法に照らして相当と認められる調査を怠った場合には、金融機関と保証人との間の保証契約違反に当たり得ると判断しています。

 

この事例について、最高裁判所の判断を受けた高等裁判所は、金融機関ですから、グループ会社で得た情報や外部団体(暴力団追放センター等)からの情報を基にデータベースを構築し、そこで確認をしていることをもって、相当と認められる調査がされたと判断し、保証契約を有効としました。

 

実際に、どの程度の調査を行うべきかは、取引の内容や事業者の規模にもよるかと思いますが、新潟県暴力団排除条例では、契約時に、取引相手に暴力団員でないことを書面で誓約させることを求めていますから(第12条第1項)、最低限、その程度の確認作業が必要と思われます。

 

また、警察や暴力団追放センターは、場合によっては情報提供をしてくれますので、適宜照会を行うことも有効かと思います。

 

最後に、事業者にとっては、たとえ事前に知らなかったとしても、暴力団とつながりを持ってしまったこと自体が企業イメージを大きく損ねる結果となりますし、事後的に判明した場合の対応を誤ると、大きな損失を被るおそれもあります。

 

ですから、先の説明を参考に、適正な対処につなげられるような事前の対策を意識することが重要になります。

 

まだ特段の対策を行っていない事業者におかれましては、当事務所にも適宜ご相談いただければと思います。

 

 

◆監修者◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 今井 慶貴

<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2016年12月5日号(vol.203)>

※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

本日施行!改正個人情報保護法

 │ 新潟事務所, ビジネス, 燕三条事務所, 長岡事務所, 新発田事務所, 上越事務所, その他, 企業・団体, 東京事務所

 

本日5月30日、改正個人情報保護法が施行されました。

 

この施行により、「個人情報」の定義が明確化されます。

個人情報とは、生存する個人に関する情報であって、氏名、生年月日、その他の記述等により特定の個人を識別することができるものをいいます。

 

また、今回の施行により、「個人情報」の中でもさらに慎重な取扱いを要するものを「要配慮個人情報」としています。

「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものと定められ、通常の個人情報よりも、より厳しい規制がかかるようになりました。

「要配慮個人情報」の取得制限も定められ、第三者が「要配慮個人情報」を取得する際には、本人の同意が原則として必要になりましたので、事業者様は注意が必要になります。

 

そして、最も注意すべき点は、個人情報取扱事業者が拡大したことです。

個人情報取扱事業者について、これまで保有個人データ5,000件未満の事業者には保護法が直接適用されないという例外がありましたが、それが撤廃されました。

したがって、これまで個人情報保護対策を行う必要がなかった事業者様も、実務上の対応が必要となります。名簿リストが数十人の美容室、通販ショップであっても、規制の対象となるということです。

これまで対策をしてこなかった事業者様も、個人情報に関する各種規定の整備やプライバシーポリシーの公表など、個人情報保護法の対策を一から行う必要があるでしょう。

 

そのほかにも、「匿名加工情報」制度の新設、「オプトアウト」要件の厳格化など、様々な変更点があります。

まだ対策をしていない、詳しい内容を知りたい、という方は、当事務所主催 「情報漏えいに伴う損害賠償リスク」セミナーへぜひご参加ください。

 

本セミナーでは、改正個人情報保護法の改正内容についても詳しくご説明します。

まだ空席がございますので、参加をご希望の方は★こちら★よりお申し込みください。

職場のハラスメント対策は万全ですか?

 │ 新潟事務所, ビジネス, 労働, 燕三条事務所, 長岡事務所, 新発田事務所, 上越事務所, その他, 弁護士渡辺伸樹, 企業・団体, 東京事務所

 

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近年メディアからも注目が集まっている「ハラスメント」について,

その種類と企業が講じるべき対策のポイントなどをお伝えいたします。

 

1. ハラスメント対策の重要性

職場で問題となるハラスメントとしては,代表的なセクハラ・パワハラのほか,ジェンダーハラスメント,マタニティハラスメント,アルコールハラスメント,エイジハラスメントなどがあり,昨今,様々な分類がなされています。

これらのハラスメントはいずれも従業員の士気の低下,離職などの弊害をもたらします。

それゆえ,事業主としては自らがハラスメントの加害者とならないよう注意するだけでは足りず,組織全体としてハラスメントの問題が生じないよう目を光らせなければなりません。

過去には,ハラスメントに対して十分な措置を講じなかったために,会社が損害賠償責任を問われた裁判例もあります。

訴訟にまで発展しないケースであっても,従業員が定着しない原因が実は職場のハラスメントにあったということも少なくありません。

 

2. ハラスメント対策のポイント

では,ハラスメント対策は実際にどのようにして行えば良いのでしょうか。

この点については,セクハラに関する厚生労働大臣の指針(平成18年厚生労働省告示第615号)が参考になります。

この指針は,職場のセクハラ対策のために事業者が講ずべき措置を明らかにしているものですが,同指針で示されている内容は,セクハラ以外のハラスメントについても応用が可能です。

以下では,同指針を参考にハラスメント対策のポイントを解説します。

 

 ⑴ ハラスメント禁止規定の整備と従業員への周知・啓発

ハラスメントを予防するためには,まずは就業規則などの従業員が守るべき規律を定めた文書において,ハラスメントの禁止規定を設け,これを従業員に対し周知するとともに,万が一ハラスメント行為を行った場合には,懲戒事由となりうることを明示することが重要です。

あわせて,社内研修を開催するなどして,どのような行為がハラスメントにあたるのかについて,役員・従業員に対し周知・啓発する必要があります。

 

⑵ 相談体制の整備

また,万が一ハラスメントが生じた場合に備え,事業主は,相談窓口を設け,その旨を従業員に周知し,ハラスメント被害を安心して相談できる体制を整えておかなければいけません。

男女それぞれの相談に適切に応じられるよう相談担当者の選定に気を配り,相談にあたっての留意事項をマニュアル化しておくなどして,相談に適切に対応できる仕組みを作ることが必要です。

場合によっては外部の機関に相談対応を委託することも考えられるでしょう。

相談者および行為者のプライバシーを保護すること,窓口に相談したことを理由に被害者に対し不利益な取り扱いを行ってはならないことは当然ですが,これらの事項をあらかじめ従業員に周知することで,相談に対する不安を取り除いておくことも同様に重要です。

 

⑶ 事実調査

相談の結果,ハラスメントが疑われるケースでは,行為者・被害者双方から(必要に応じて第三者から)事情聴取を行い,事実調査を行います。

被害の継続,拡大を防ぐため,事実調査には速やかに着手することが重要です。

迅速な事実調査を実施するためには,担当部署を社内で明確にし,相談から事実調査までのフローを作成しておくなどの工夫が必要になるでしょう。

 

⑷ 行為者・被害者に対する措置

事実調査の結果,ハラスメントの事実が確認できた場合には,行為者・被害者それぞれに対し適切な措置をとる必要があります。

行為者に対しては,就業規則等に基づき,懲戒処分などの措置を課すことを検討します。

懲戒処分を課す際は,処分内容と問題となるハラスメント行為との間でバランスがとれているかについて注意しなければなりません。

被害者に対しては,ハラスメントをきっかけに労働条件の不利益を受けていた事実があれば,その不利益を回復する措置を講ずる必要があります。

さらに,行為者・被害者がその後も同じ部署で勤務するような場合には,謝罪の機会を設ける等,必要に応じて被害者と行為者の関係改善に向けた措置をとります。

ケースによっては,逆に配置転換をして被害者と行為者をなるべく引き離した方が好ましい場合もあり,この辺りは事業主の臨機応変な対応が求められます。

 

⑸ 再発防止措置

ハラスメント問題が生じた場合,事業主としては,ハラスメントについての周知・啓発が足りなかったと真摯に受けとめ,再発防止に向けて,改めて役員・従業員に対する周知・啓発を行うことが大切です。

 

 

3. おわりに

職場のハラスメント対策は面倒,大変と感じる方もいらっしゃるかも知れません。

しかし,長い目で見ればハラスメント対策は職場環境の向上,ひいては会社全体の業績UPにもつながっていくものであることは間違いありません。

この機会に一度,職場のハラスメント対策を見つめなおしてみてはいかがでしょうか。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 渡辺 伸樹

<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2016年7月1日号(vol.198)>

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