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社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

【法務情報】従業員に対する損害賠償請求はできるのか??

 │ 労働, 上越事務所, 弁護士朝妻太郎

1 はじめに
 最近、弁護士会の電話相談を担当しますと、「勤務先の会社から、『自分が起こした就業中の事故(交通事故を含む業務遂行上の事故)によって会社が損害を被った。損害賠償を支払え。』と言われており、どうすればよいのかわからない。」、という相談を頻繁に受けます。
 大なり小なり、従業員が引き起こす事故は珍しくはないものですが、このような場合の従業員の損害賠償責任はどうなるのでしょうか?

 
2 使用者から労働者(従業員)に対する損害賠償請求について
 労働者が労働過程で故意・過失により会社や第三者に損害を与えた場合、使用者である会社としては、労働者に対して、一般には懲戒処分等で対応しますが、損害賠償を請求することも当然考えられます。
 労働者が労働契約の労務提供義務やその付随義務に反して使用者に損害を与えた場合、債務不履行に基づく損害賠償責任が発生しますし(民法415条・416条)、労働者の行為が不法行為に該当すれば、民法709条による損害賠償責任が発生することになります。
 もっとも、仮に労働者の行為が債務不履行や不法行為にあたる場合であっても、現在、確立された判例法理として、労働者の「責任制限の法理」が存在しています。
 これは、使用従属化の労働過程を前提に、労働者のミス等により生じた損害であっても使用者の指揮命令に基づいて労務を提供している中で発生したものであるから、その全ての責任を労働者に負わせるべきではなく、労働者の責任の範囲を制限させようという考え方です。
 そして、責任をどの程度制限するかについては、事業の性格、規模、施設の状況、労働者の業務内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態度、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度、等諸般の事情を考慮要素にすると考えられています(タンクロ-リー事故についての茨城石炭商事事件参照)。このように、損害全てを当然に労働者に請求できるわけではないのです。

 
3 賃金と損害賠償の相殺は?
 労働者に対して、損害の一部ではあっても損害賠償を請求できるとして、会社側が賃金と相殺することはできるのでしょうか?
 労働基準法24条1項は、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と定めています。
 これを、(賃金の)全額払の原則と言います。
 そしてこの原則から、会社による、(会社の)損害賠償請求権と(労働者の)賃金請求権との相殺は認められないと考えられています。最高裁判所も、そのような相殺は認められないと判示しています。
 では、会社と従業員とで、「対当額で相殺することにしましょう。」という合意(相殺契約)をした場合はどうでしょうか。
 このような場合も一律に許容されるわけではありません。
 最高裁判所は、①労働者の自由意思による同意と、②その自由意思による同意を裏付ける合理的な事情が客観的に存在する場合にのみ、このような合意の範囲内で賃金から控除することが有効となると判断しています(日新製鋼事件)。ここで言う、「合理的な事情」について、最高裁判所は、多数の判断要素を指摘しています。それらを総合的に勘案することで「合理的な事情」があるか否かが判断されるべき、という枠組みを組んでいます。

 
4 さいごに
 会社側から従業員に対して損害賠償を請求したり、賃金と対当額で相殺したりすることがいかに難しいかはご理解いただけるかと思います。
 従業員に損害賠償を請求する際は要注意!!実際の行動に移す前に、今一度ご相談されてはいかがでしょうか?

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 朝妻 太郎◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2011年3月15日号(vol.72)>

【法務情報】消費者庁・消費者委員会って何?

 │ 消費者, 上越事務所, 弁護士朝妻太郎

 最近,消費者庁の創設という話をよく耳にしますが,そもそも消費者庁とは何ですか。消費者庁とは別に、「消費者委員会」という組織もあると聞きましたが,消費者庁とはどう違うのでしょうか。

 

1 消費者庁とその役割
 消費者庁関連3法の成立にともない,平成21年9月1日に内閣府の外局として消費者庁が発足しました。消費者契約法,製造物責任法など,消費者問題に関連する法律30本を自ら所管します。

 
 具体的には,何をしてくれるところなのでしょうか。

 
 まず,消費者の方々が何らかの消費者トラブルに巻き込まれた際の相談窓口として消費生活センターが重要なものとなっていましたが,従来は消費生活センターに相談が寄せられても,消費生活センターは事業者に対する勧告等を行う権限がありませんでした。

 
 しかし,今後は消費者庁が消費生活センターに寄せられた相談等の情報を集約し,各事業者に対して勧告・命令を発することができるようになりました。

 
 また,集められた情報に基づき,消費者事故についての公表等を行います(すでに消費者庁のHPに,多数の事故情報が公表されています。)。

 さらに,所管する省庁のない隙間事案への対応が期待されます。

 
 例えば,昨今問題となったこんにゃくゼリーによる窒息死の問題などは,直接所管する省庁が存在しないため,抜本的な措置が取られなかったというのが実情です。

 
 しかし,今後は,消費者庁が自ら,事業者に対して回収等の命令を行うことができるようになりました。

 
2 消費者委員会とは
 消費者委員会は,消費者庁を含む消費者行政全般を監視する組織であり,消費者庁とは別個独立した組織です。関係省庁に対して資料を要求するなどし,消費者政策の企画立案についての監視と建議を行います。

 
3 これからの消費者トラブルへの対応の仕方について
 では,我々一般市民は,今後は消費者事故が発生した場合に消費者庁にすべて任せていれば大丈夫なのでしょうか?消費者庁は設立されたばかりの組織であり,個別の事案に対して,実際にどのような対応がなされるか不明な点が多いことも事実です。

 
 また,民事上の責任を追及する(損害賠償を請求する等)上では,直接的に消費者庁が関与して解決を図ってくれるということにはなりません。

 
 民事上の責任の問題が生じた場合の対処の仕方は,基本的にはこれまでと変わりないと考えて良いでしょう。消費者の立場で被害の救済を求めるにしろ,事業者の立場で解決を図るにしろ,当事者間での交渉が不可欠であることに変わりありません。

 
 皆さんが消費者の立場であれ,事業者の立場であれ,消費者トラブルに直面した際には,是非当事務所の弁護士にご相談いただき,対応を一緒に検討させていただければと思います。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 朝妻 太郎◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2009年12月号(vol.45)>

【法務情報】貸金業法が大きく変わりました!!

 │ 上越事務所, 弁護士朝妻太郎, 債務

1 はじめに
 2010年6月18日、改正貸金業法が完全施行されました。

 
 貸金業法の改正については、マスコミでも大きく取り上げられ、法改正の内容が紹介されています。そのため、皆さんも貸金業法の改正と言う言葉は耳にされたのではないかと思います。ですので、皆さんも「年収の3分の1しか借りれなくなるんだろ。」ということは既にご存じかもしれません。今回は、この貸金業法の改正について概要をみていきたいと思います。

 
2 そもそも貸金業法って?
 貸金業法とは、消費者金融などの貸金業者や貸金業者からの借り入れについて定めている法律です。

 
 なお、この法律の規制する「貸金業者」とは、お金を貸す業務を行っており、財務局又は都道府県に登録をしている業者のことを指します。具体的には、消費者金融、クレジットカード会社などが貸金業者です。銀行や、信用金庫、信用組合、労働金庫なども、様々な融資を行っていますが、これらは「貸金業者」ではありません。

 
3 「年収3分の1」しか借りられない?(総量規制)
 これが、今回の改正の大きなポイントの1つです。

 
 貸金業者からの借り入れは、年収の3分の1の範囲に限られることになりました。これは、借り過ぎ・貸しすぎを防ぎ、いわゆる「多重債務問題」の解決を図ることを目的にしています。

 
 もっとも、先ほど説明したとおり、銀行等は「貸金業者」には当たりません。ですから、銀行からの借り入れがあり、これを合わせて合計で「年収の3分の1」を越えていたとしても、銀行からの借り入れは除かれます。貸金業者からの借入額の合計が「年収の3分の1」か否かで判断されることになります。

 
 また、クレジットカードを使用して「買い物」をした分は含みませんが、クレジットカードを使用して借りた分(キャッシング)は含みます。さらに住宅ローンや自動車ローンは総量規制の対象外となります。専業主婦(主夫)の方は、配偶者の年収が基準となる上、借り入れに際し、配偶者の同意書が必要となります。

 
 もっとも、これは法規制の話に過ぎません。借り入れが受けられるか否かは、貸付をする各貸金業者の判断になります。この法律によって、年収の3分の1以下であれば必ず借り入れが保障されるわけではないことは注意が必要です。

 
4 借り入れの際に「年収を証明する書類の提出」が必要って本当?
 貸金業者から借り入れをする場合で、①50万円を超えて借りる場合、または、②他の貸金業者から借りている分を含めて合計100万円を超えて借りる場合、には貸金業者に対して「年収を証明する書類」(源泉徴収票、確定申告書、給与明細など)を提出することが必要になります。

 
5 さいごに
  ここで説明した内容は、法改正の概要に過ぎません。もし、この法改正に関してご心配な点があれば、当事務所の弁護士に何なりとお尋ね下さい。なお、法改正については、金融庁のHP(http://www.fsa.go.jp/policy/kashikin/index.html)に詳しい説明がありますので、ご参照下さい。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 朝妻 太郎◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2010年6月30日号(vol.57)>

【法務情報】クレーマーへの対応について

 │ ビジネス, 上越事務所, 弁護士朝妻太郎

  クレームとは、消費者や顧客の不満に基づく企業側に対する要求や苦情を言います。特に最近では消費者クレームが多くなっているようで、書店ではクレーム対策の書籍がいくつも並んでいる状況です。

 
 会社の初期対応がうまくいけば、会社内だけで解決できるのですが、すべてのクレームが早期に解決できるとは限りません。

 
 様々な要求をしてくるクレーマーに対して、安易にそれに応じてはいけません。

 
 例えば金銭を要求されているのであれば、金銭で賄わなければならないような損害が実際に生じているのか、その損害について会社が責任を負うのかを判断する必要があります。

 
 その際には、不法行為責任(民法709条以下)、瑕疵担保責任(民法570条、同566条、同634条等)等といった法律上の規定に照らし合わせて判断していくことになります。

 
 その判断のために、十分な事実調査(クレームの中身、損害の内容・程度、等々)が不可欠となりますので、初期の時点から、事実関係の調査をしっかり行う必要があります。

 
 また、法的な判断が必要となってきますので、事実調査をした上で弁護士に相談された方が良いでしょう。

 
 さらに、会社内での対応が困難であれば、弁護士を立てて交渉する必要が出てきますし、交渉では埒があかないとなれば、民事調停手続(簡易裁判所において調停委員という裁判所が選任した第三者を間に立てて話し合う手続)や、ADR(裁判外の調停類似の手続)を利用するなどして解決を図ることになります。

 
 クレーマーが一般消費者であれば会社内だけで解決できる場合もあります。

 
 しかしクレームの主体が暴力団等の場合、会社内だけで解決しようせず、早急に弁護士や警察に相談しなければなりません。一般消費者クレーマーの場合よりも、暴力団等が主体となっている場合の方が、弁護士等の介入により事態が早期に沈静化することが意外と多いようです。

  
 いかなるケースであっても、対応について不明な点があればお気軽に弁護士にご相談ください。

 
  それから、どのような案件であれ、窓口となっている担当者が過重なストレスを抱えない体制を作って頂ければと思います。(参考文献 森山満 著「企業のためのクレーム処理と悪質クレーマーへの対応」(商事法務))

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 朝妻 太郎◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2008年12月号(vol.34)>


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