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社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

【法務情報】お金をかけずに取引相手の実態を知る方法

 │ 新潟事務所, ビジネス, 弁護士古島実

 ある会社から画期的な特許商品の共同開発や共同販売の話を持ちかけられました。初めての会社ですので信じて良い相手かどうか心配です。調べる良い方法は有りませんか。リサーチ会社に依頼するのもひとつの方法ですが、次の方法でかなりの事柄がわかります。

 
1 登記情報で調べる。

 法務局で商業登記簿謄本と不動産登記簿謄本を誰でも一通1000円くらいで入手することができます。

 
 商業登記簿謄本はその会社が設立されてから現在までの本社、商号、役員、本店、資本金の異動など、会社の基本情報の履歴が記載されています。

 
 まず手始めに、取引を始める相手方の商業登記簿を入手して見ましょう。

 
 本社の移転がある場合は移転の事情があるのか。商号が変更している場合は不自然な変更ではないか。目的が変更している場合は分野の違う仕事を入れていないか。役員が変更している場合は不自然な総入替がないか。資本金が変更している場合は減資や増資に不自然なものが無いかなどを見ます。

 
 不自然なものがあったらその会社に聞いてみましょう。ちゃんとした会社であれば登記事項についての質問くらいは答えてくれるのではないでしょうか。

 
 また、法的手続(再生、更生)を行ったこと、売掛金債権や機械備品在庫商品をまとめて担保に入れていることも商業登記簿に記載されますので、その会社の信用状態の確認に役に立ちます。

 
 次に、取引を始める相手方の本社、支社、工場、代表者自宅などの不動産登記簿謄本をとってみましょう。代表者の住所は商業登記簿謄本で確認できます。

 
 不動産登記簿謄本には表題部(顔=場所、種類、構造、広さ、など)、甲区(履歴=所有権の移転経過、前科=滞納処分や仮差押えなど)、乙区(荷物=借金や担保の設定状況)があります。

 
 表題部からは、どのような不動産をその会社や代表者が持っているかが分かります。 

 
 甲区からはその不動産の持ち主の履歴がわかります。その会社がずっと持っていた物か、最近取得したのかわかりますし、本社や工場を他人に売ってしまったかどうかもわかります。さらに、税金を滞納して土地や建物を差し押さえられるとここに記載されるので資金繰りの状況が分かります。

 
 乙区からはその会社がどのような金融機関からどのくらいのお金を借り入れているのか、また、返済が終わっているのかどうかなどが分かります。時間を追って見ることで金融機関の質の変化や借入先の増減などからその会社のおかれている資金繰りの状況がわかります。

 
2 インターネットで調べる。

 
  インターネットにより、どの程度の資料が得られる会社か確認し、その資料によってどのように評価されているかと言うことを確認するのも、一つの有力な方法であり、これによりある程度の推測はつきます。

 
  現在は特許や商標の情報も、特許庁の電子図書館のホームページから、社名をいれるとその会社がどのような特許権、商標権、意匠権を持っているかを調べることができます。その会社が画期的商品について知的財産権を有しているか調べることができます。

 
3 足で調べる。

  
  事務所を訪問し、従業員の数や、宣伝材料の程度を確認し、掲示物や清掃の具合などから従業員の態度を読むことができます。

 
  また、製品工場に足を運び、その生産体制を読むこともできるし、工場から倉庫への流れを確認し、倉庫における出荷待ち製品の状況により、売れ筋かどうかを読むこともできます。

 
 取引先や銀行を訪ね、その評価を確認することもできます。自信がなければ、これらすべてを案内することはないと思います。

 
4 その他

 

  決算書を最低3期分もらう。

 
  有る程度の金額の取引をする場合は、決算書を利用しての相手方の財務状態の分析も必要だと思います。任意にもらうこともできますが、債権者であれば、会社法上、貸借対照表と損益計算書をもらうことができるので、売掛相手は、貸借対照表と損益計算書の提出を拒めません。与信限度枠を始めは小さくして、細々と取引を始め、相手方の財務分析を経てから取引を拡大するという方法も考えられます。

 

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 古島 実◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2010年7月15日号(vol.58)>

【法律相談】貸した土地は容易に返らない

 │ 新潟事務所, ビジネス, 弁護士古島実

Q .当社はAさんに対して、昭和33年(1958年)に10年の契約期間で土地を賃貸しました。Aさんは土地を借りるとすぐに木造住宅を建てました。その後、Aさんは2000年に当社の知らないうちに木造住宅を建て替え、現在も住んでいます。来年(※2008年)が5回目(50年目)の更新になります。当社はこの土地の有効活用のために賃貸アパートを建てようと思っています。Aさんは地代をきちんと支払っていますが、5回目の更新を機にAさんから土地を返してもらおうと思っています。50年も貸したのだし、Aさんが当社の承諾なく勝手に建て替えたのだから、当然に返してもらえますよね。

  
                                                                                         A .御社とAさんの土地賃貸借契約は、借地法が借地借家法に改正された平成4年よりも前に始まったので借地法が適用されます。平成4年以後に始まった土地賃貸借は借地借家法が適用されます。

 
 借地法によれば、契約で定められた賃貸借期間が20年よりも短いときは、賃貸借期間は30年になります。借地借家法でも同じく原則30年です。従って、賃貸借期間を10年に定めたとしても、賃貸借期間は30年となります。そして、当初の建物が存続する限り、何もしなければ自動的に更新(法定更新)され、その後は20年間賃貸借契約が継続します。御社とAさんとの賃貸借は1988年に一回目の更新、2008年で2回目の更新を迎えることになり、この土地を明け渡してもらえそうです。

 
 しかし、今回の場合Aさんは2000年に木造住宅を建て替えています。賃貸借期間中に次の更新時期(2008年)まで使うことができる建物を建て替えたときは、木造住宅の場合は前の建物が取り壊された時から20年間賃貸借期間が延長されます。

 
 従って、2000年に建てた木造住宅は2008年よりも長く使えるのは明かであるので2020年が更新時期となります。御社の知らないうちに無断で建て替えておいて期間が延長されるのは納得できないかもしれません。しかし、建て替えの時に速やかに異議を出さなければ期間延長されてしまいます。

 
 建て替えがない場合は当然に2008年に返してもらえるかといえばそうではありません。2008年に建物が壊れて使えない状態でない限り、自動更新されてしまうので、更新拒絶をして自動更新を止めなければなりません。更新拒絶するためには、「自らその土地を使用する必要がある場合その他正当な理由」がなければなりません。自らその土地を使用する必要があれば更新拒絶できるというわけではなく、賃貸人の自己使用の必要性や立退料の提供など賃借人の利益と賃貸人の利益の公平を考えて総合的に判断することになります。
 

 このような条件が揃い、たとえ更新拒絶ができたとしても、Aさんに対して建物を壊して土地を明け渡すことを求めることができるかと言えばそうではなく、賃借人が建物を時価で買い取ることを求めた場合はこれに応じなければなりません。買い取った後の取り壊し費用は賃貸人の負担になります。従って、賃借人から土地を明け渡してもらって再利用するためには、立退料、建物買取り費用、取壊し費用を含めるとかなりの出費を覚悟しなければなりません。

 
 このように通常の借地は賃貸人の負担が大きいことから、更新のない定期借地権の制度が用意されています。その代わり、利用できる場合が狭く手続きが煩雑なので利用の際は事前に専門家に相談する必要があります。

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 古島 実◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2007年7月号(vol.18)>

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