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社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

【法律相談】発明を、自分が独占すること、他人に独占させないこと、黙っておくこと

 │ 新潟事務所, ビジネス, 弁護士古島実

Q  社団法人発明協会が行っている公開技報という制度を使うと発明を他人に独占されなくすることができると聞きました。特許出願と何が違うのですか。

 

A 発明を特許として登録すると、特許権を持っている人(特許権者)だけが独占してその発明を使って製品を作ったり売ったりすることができます。
   そして、特許権を持っていない人はその発明を使って製品を作ったり売ったりすることができません。
 その代わり、発明を特許にするには手間や費用や時間がかかります。
 発明や技術の中で、他人が特許を取って他人に独占されて自分が使えなくなると困ってしまうが、あえて、手間や費用や時間をかけてまで特許にする必要もないものもあると思います。

 
 この場合は、発明協会の公開技報という制度を利用して、他人に独占されなくすることができます。
 発明を特許として登録すると特許権者が独占することが認められるのは、公知ではない、従来の技術や資料からは導き出せない、新規性を有する発明に対して、一定期間独占を認めて、儲ける機会を与えることが、発明の意欲を高め、技術や社会の進歩を促すからです。
 この公開技報は、発明した人が独占することを放棄して、あえて世の中に公開し公知なものにすることによって新規性をなくしてしまい、だれも特許権を取得できないものにしてしまうのです。
 発明をあえて公開してみんなのものにしてしまうのです。

 
 特許と公開技報は似ていますが全く違う制度です。
 かつて、特許と公開技報を取り違えて悔しい思いをしたり、他人に独占されなければよいと思って、特許を取らずに公開技報制度を利用して技術や発明を公開したところ、公開技報をみた競争相手が売れ筋商品を作ってしまって悔しい思いをした、という相談がありました。
 公開した以上、後から、特許を取ることはできません。
  公開されるという点では特許として登録した場合も同じで、手間や費用や時間をかけても特許をとっても独占できるのは一定期間に過ぎず特許の有効期間(原則として出願から20年)を過ぎると、誰も独占できず、みんなの技術になってしまいます。
  こう考えると、発明や特殊な技術を発見したとしても公開せずに黙っていることも大切な戦略の一つになります。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 古島 実◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2011年4月30日号(vol.77)>

【法務情報】クレーム対応の極意~義と愛のバランス~

 │ 新潟事務所, ビジネス, 弁護士古島実

 顧客から企業によせられるクレームには3つの要素があると思います。

 
 1つ目は、企業側に法的責任があり顧客のクレームに応ずることに法的義務がある要求(義の要素)。

 
 2つ目は、顧客には自分だけを上客のように扱ってほしいという企業に対する愛情要求があると言われており、何かをきっかけにしてこれが満たされないことによって感ずる不平不満にもとづく要求(愛の要素)。

 
 3つ目は、脅し、騙しによる金銭の要求や企業が慌てふためいている姿をみて喜ぶといった要求(侵の要素)です。

 
 義の要素への対応は、例えば欠陥のある商品を売ってしまった場合、顧客から修理や商品の交換を求められたこれに応じ、さらに、顧客にケガをさせてしまった場合は、治療費、休業損害、慰謝料などを支払うといった法律上要求される必要最小限度の対応をすることになります。

 
 愛の要素への対応は、顧客の愛情要求に満足を与え、不平不満を和らげるように、顧客の要求の大小、合理不合理に関わらず、企業の法的責任の有無に関わらず、態度や言葉(見舞い、ねぎらいなど)、金銭の支払い(見舞金、法的に必要な賠償額以上の支払)などで対応することになります。

 
 侵の要素には毅然として断る対応をすることが必要です。

 
 法的には、義の要素への対応をして、それ以外の要素に対しては、クレームを無視して相手にしなければ良いことになります。そして、法的な責任がない場合はクレームを無視しても、冷たく拒絶しても法的には問題はありません。

 
 しかし、それでは、顧客の愛の要素が満たされず、顧客からは、不誠実だ、冷たいなどのさらなるクレームに発展し、角が立ってしまいます。また、企業も相手が顧客であるので義の要素への対応だけでは商売にならないと考えると思います。反面、どこまで愛の要素への対応をすべきかについて明確にできず、顧客の要求に流されがちになると思います。

 
 ところで、企業は顧客への損害賠償に備えてPL保険や損害賠償保険に加入していると思います。これは、義の要素への対応として企業が顧客にお金を支払ったときに、保険会社が義の要素の範囲内でお金を企業に支払ってくれるというものです。

 
 しかし、義の要素への対応を越えるお金を愛の要素への対応として支払うと保険からはお金が支払われずその部分は企業が自腹を切ることになります。保険金の限度内で解決しようとすると極めて窮屈になってしまいます。

 
 以上のことからすれば、顧客からクレームがあった場合は、早い段階で義の要素の有無やその金額を見定めて、侵の要素を排除し、愛の要素を金銭以外で満たして、いかに支出を抑え、顧客の納得を得るようにするかがクレーム対応の極意ということになると思います。

 
 しかし、クレームは、それぞれの要素が別々に来るのではなく、複数の要素が一緒に来たり、順番で来たり、徐々にエスカレートして来たりします。そして、義の要素の有無や金額を早い段階に判断するのは難しいのが現実です。さらに、相手が顧客なので企業は愛をもって対応してしまいます。反面、保険金は義の部分の範囲内でしか支払われません。

 
 極意と言っておきながら実際には完全な実行は難しいと思います。

 
 「義に働けば角がたつ、 愛に竿させば流される、保険の限度は窮屈だ。とかく、クレーム対応はやりにくい。」と言うことでしょうか。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 古島 実◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2010年1月号(vol.46)>

(さらに…)

【法務情報】債権の回収を確実にする対策

 │ 新潟事務所, ビジネス, 弁護士古島実

Q 債権の回収を確実にするには、日頃からどのような対策を講ずれば良いでしょうか?

  

 問題のある債権については、事前準備の有無によって回収できる金額にかなりの差が出てしまいます。ここではいくつかの対策例を紹介いたします。

 

1 時効管理
  不払いが発生し、その後消滅時効期間が経過してしまうと、売掛先が時効完成を主張すると売掛金の請求ができなくなります。会社の債権の消滅時効期間は一般には5年ですが、例えば物品の売買の売掛金は2年というように短い期間が定められている場合があり注意が必要です。
 支払いが滞っている売掛先に請求書を出し続けていても消滅時効期間が伸びることはありません。不払いの発生から消滅時効期間が経過しないうちに、早めに訴訟を出して決着をつけるか、売掛先に残高を書面で確認させたり、一部でも良いので支払わせたりなどの工夫をして、「時効の中断」(時効期間を伸ばすこと)が必要です。

  

2 調査
   債権者は売掛先の決算書を入手する法律上の権利がありますので、売掛先の決算書を検討したり、リサーチ会社を利用したりして、売掛先の財務状況を調べ、問題があれば取引を縮小するなどの対応が考えられます。
 売掛先が所有する事務所や工場の土地建物の登記簿を入手すると、売掛先の借入先や借入の規模などが大まかに分かります。登記簿は誰でも入手できます。

  

3 取引基本契約書
 取引を開始するにあたって、取引基本契約を締結することをお勧めします。
  その中で、商品の所有権の移転時期を「引渡時」ではなく「代金完済時」と定めることにより、不払いが発生した場合に商品を取り戻しやすくなる場合があります。
  そして、不渡りや不払い等の信用不安が生じたときに、支払期限が来ていない売掛金を直ちに全額請求できるようにして、商品をできるだけ早く引き上げたり、取引契約の解除によって取引を停止したりして損害の拡大を防止することができます。
  さらに、信用不安などの特別な事情が無くても、例えば「契約更新の6ヶ月前に更新に異議を述べた場合には取引契約を解消する」という定めをおいて、問題を抱えている取引先との取引をやめやすくすることも可能です。

  

4 担保・相殺
 不払いに備えて、売掛先の不動産に担保権を設定してもらったり、売掛先の在庫商品や売掛債権を一括で担保に提供してもらったり、保証金を預かったりすることも考えられます。
 また、売掛先から掛けで仕入れて、売掛金と買掛金を同じくらいの額にしておけば、売掛の不払いが生じたときに買掛金を相殺によって消滅させ、損失を最小限にすることができます。

  

5 ファクタリングの利用
 ファクタリングの利用により早期回収をはかり売掛金の増大を防止します。また、ファクタリング契約の内容によってはファクタリング会社が不払いによる損失をカバーすることも可能です。

  

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 古島 実◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2009年5月号(vol.38)>


【法律相談】「遺言」と「任意後見」

 │ 新潟事務所, 遺言・相続, 弁護士古島実

Q 私は、小さな株式会社のオーナー社長で、株式の8割を所有しています。また、アパートや上場株も所有しており、その他預貯金もあります。
 子どもは長男と長女がおり、長男は会社の専務取締役として働いており、会社を継ぐ意思を有しています。長女は県外に嫁ぎ、会社には興味がありません。
 実は昨年、私の父が認知症を何年か患った後、死亡しました。
 私も父のように認知症によって、判断能力がなくなり、長男への会社の承継や生活費・療養費を確保する為のアパートその他の財産の管理処分を行えなくなってしまうのがとても心配です。
 妻は財産の管理が苦手なので、妻に任せることもできません。死後のことは遺言書を作成してありますが、いったいどうしたらよいでしょうか。

 
A 病気や事故によって判断能力がなくなると法律行為(例えば、株式の譲渡、株式譲渡承認の取締役会決議に関する事務、アパートや上場株の処分、預金の解約などの財産管理処分行為)を行うことができなくなります。

 
 民法には成年後見人の制度が設けられており、判断能力がなくなったときは家族などが裁判所に成年後見人の選任を申請すれば、裁判所が選任した成年後見人が裁判所の監督の下、あなたの代わりに財産管理処分行為などの法律行為を行います。

 
 しかし、あなたの信頼する人が成年後見人に選ばれるとも限りませんし、また、あなたの現在の思いを成年後見人が実現するとも限りません。もちろん、判断能力がなくなってからではあなたの希望を伝えることもできません。

 
 あなたが亡くなった場合は遺言であなたの希望をはっきりさせることができますし、あなたの信頼する人を遺言執行者に選んでおけばその人が遺言書に示されたあなたの希望を実現してくれるでしょう。

 
 それでは、判断能力がなくなった場合は自分の希望どおりにならないのでしょうか。

 
 そこで、任意後見制度が平成12年に導入されました。

 
 これは、あなたが判断能力のあるうちに、判断能力がなくなったときにあなたの代理人として活動する人(任意後見人)を予め選んでおく制度です。

 
 あなたが判断能力のあるうちに任意後見人の候補者と契約を締結し、契約の中で、委任事項も定めることができるので、「判断能力を失ったときにこのようにして欲しい。」という希望も実現することができます。任意後見人は裁判所の監督の下、活動することになりますので安心です。

 
 あなたの場合は、任意後見制度を利用することによって、判断能力を失った場合、あなたの信頼する人に対して、株式を長男に譲渡する契約の履行、株式譲渡承認の取締役会決議に関する事務、生活費・療養費を支弁するための財産管理処分行為などを委任することができます。

 
 ところで、相続の事件では、親(特に資産家の場合)が判断能力を低下させてから死亡するまでの間に、親を監護する長男が自分のために親の財産を使ってしまったり、監護のために出費がかさみ財産の多くを使った場合、領収書が無いと他の兄弟から自分のために親の財産を使ったと疑われて兄弟が仲違いしたりすることがあります。

 
 このような紛争は遺言では避けることができません。このような紛争を予め避けるためにも任意後見契約は役に立つと思います。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 古島 実◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2008年7月号(vol.29)>

【法務情報】「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓う。」

 │ 新潟事務所, 弁護士古島実, その他

 表題の一文、何の文章だと思いますか。

 
 「日本国民は何をそんなに誓っているのだろう。」と思われるのではないでしょうか。

 
 実はこれは日本国憲法の制定の動機や理想を書いた「前文」の締め括りの一文です。下に、日本国憲法の「前文」を全文引用します。長くて、読みにくいですが、がんばって読んで、日本国民は何をどのように誓っているか考えてみてください。

 
 
 日本国憲法には補足を除くと実質的には99の条文しかありません。

 
 しかし、その中に、国民のさまざまな権利、国会のあり方、行政のあり方、裁判所のあり方、地方自治のあり方など国のあり方が規定されています。日本国憲法は日本国民が「このような権利を享受したい。」「このような社会に住みたい。」「このような国にしたい。」といって定めた決まりともいうべきものです。 

  
 
 そして、日本国憲法の諸規定はこの「前文」を動機や理想として作られたといえます。

 
 ところで、民主主義のわが国では国会の多数決によって作られた法律によって政治が行なわれています。法律には罰則が設けられ、これに違反した場合は刑罰が科せられる場合があります。多数派の意見が強制力を持って通用するのです。

 
 しかし、多数決があればどんな法律でも作れるという訳ではありません。公務員である国会議員も憲法を遵守する義務がありますし、憲法に違反する法律は裁判所で違憲の判断がなされ、効力を有しないため、憲法の規定に違反する法律は事実上作ることができません。
 

 その結果、憲法に定められている国民の権利はたとえ国会で満場一致の多数決で定められた法律であっても奪うことはできなくなります。

 

 また、憲法に反する国の制度も法律で設けることができなくなります。

 
 もし、憲法がなかったらどうなるでしょうか。多数決でどんな法律でも作られることになり、その時々の情勢や雰囲気で大きく国のあり方や国民の生活が揺り動くでしょう。多数決に反映されなかった人達の権利は守られなくなってしまいます。多数決での勝者と敗者が交々入れ違ったりするでしょう。

 
 憲法があれば憲法の範囲内で法律が定められるのでこのようなことは避けられます。憲法に定められている国民の権利は奪うことはできません。また、憲法が公平な裁判所の裁判をうける権利や裁判所のあり方を定めていることから、刑事裁判は警察が行うと言うような法律もできませんし、憲法が国会の構成員である国会議員は選挙によって決めるとしていることから、国会議員は世襲で決めるという法律も作ることができません。現在の年金や生活保護の制度を廃止するということに対しても憲法の生存権規定などを根拠に異を唱えることができます。

 
 
 憲法には、多数決が行き過ぎないように、憲法が定める理念によって一定の枠や方向性を設けるという重要な役割があるのです。

 
 60年以上も前に下に引用する前文を持った憲法が作られ、それに基づいてわが国の諸制度ができあがり、現在の私たちの暮らしがあります。

 
 現在、日本は自信を喪失していると言われていますが、司法試験の受験勉強以来、十数年ぶりに憲法の前文を読み返してみて、自信を取り戻せた気がします。

 
<日本国憲法前文>
      
「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
 われらは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる。
 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓う。」
 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 古島 実◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2010年7年12月24日号(vol.69&70)>

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