法務情報

HOME > 法務情報 > カテゴリ「弁護士和田光弘」

法務情報

社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

【法律相談】株式の承継

 │ 新潟事務所, 遺言・相続, 弁護士和田光弘

Q 私の会社では、社長(70歳)が8割の株式を保有し、専務(45歳)の私が2割の株式しかありません。
 もし、相続となると、母と妹や弟にも、株式が分散し、私が実質的に経営してきた会社の運営が、社外の親族によって混乱しかねないと心配しています。どうしたら、いいでしょうか。

 

A 社長と協議して、いくつかの方法を検討する必要があります。

 
 一つの方法として、相続人に対して、会社が売り渡しを請求できる定款を定めておくことができます(会社法174条、466条、309条2項11号)。

 
 段取りとしては、まず、定款を特別決議(出席株主の3分の2以上の賛成)で変更します。内容は、「当会社は、相続人その他の一般承継により当会社の株式を取得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。」と定めればよいと思います。

 
 また、社長が亡くなられる前に、専務も、代表権をもつ副社長か社長に昇格しておいてもらった方がいいでしょう。

 
 この定款変更後、社長が亡くなられた場合には、「1年以内」に売り渡し請求の手続を進めることが必要です(会社法176条1項)。

 
 売り渡しの請求は、①売り渡しを請求する株式数、②請求相手の氏名を株主総会の特別決議で決めることになります。

 
 このとき、相手方の株式は、その決議を行う株主総会で議決権を行使できません(会社法175条)。ですので、母親、妹、弟の相続株式をすべて指定すれば、専務の株式だけで、決議することとなり、特別決議は成立します。

 
 その後、買い取る株式の売買価格を協議することになります(会社法177条1項)。

 
 もし、その売買価格の協議が成立しない場合は、売り渡し請求を行った日から20日以内に、裁判所に売買価格の決定をしてほしいとの申し入れをします。

 
 裁判所は、売り渡し請求を行った際の会社の資産状態その他一切の事情を考慮して売買価格を決定することになります(会社法177条2項~5項)。裁判所が価格を決定すれば、その価格を相手方に支払い、株式の譲渡がなされることになります。

 

【手続の流れチャート】

現在の定款変更(相続人等に対する売り渡し請求)・特別決議

相続の開始

売り渡し請求・特別決議(相手方の議決権は行使できない)

価格協議・決定

 

 ◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 和田 光弘◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2008年5月号(vol.27)>

【法務情報】セクハラは更に進化する?

 │ 新潟事務所, 労働, 弁護士和田光弘

   星の数は数々あれど 月とみるのは主(ぬし)ひとり
 

 これは、江戸時代に謡われた小唄の一節(?)のようです。意味するところは、「男はたくさん言い寄ってくるけれど、私が本当に好きなのはあなただけ」ということでして、実に色っぽい内容です。私は、この歌をセクハラ解説セミナーでいつも紹介しています。なぜでしょうか?
 

 経営者(及び管理職)の人たちはこう言います。「わからんなぁセクハラは。俺が言うとセクハラで、若い奴が言ってもセクハラじゃないなんて」と。でも、それで良いのです。要するに、「性的自由」というのは、突き詰めれば「性的自己決定権」でして、解りやすく言うと「好き嫌いの自由」です。

 
 「いやぁ、今日のスカートは目の保養になる」「おしりのラインがきれいだ」などと言ったりしますと、「社長、やめて下さい」と不快感を示す女性が、「そのスカートは身体にフィットして、君によく似合う」と言う若い同僚社員には「そう?そんなでもないと思うけど」とまんざらでもない様子を示すのは、この「好き嫌いの自由」があるからです。経営者の方々はこの違いをよくよく理解しなければなりません。

 
 しかも、この4月(※2007年)からは男女雇用機会均等の改正により、「男性に対するセクハラ」も同じように禁止されます。例えば、「キャバクラぐらい行けなくてどうする」、「お前も男なら女を知りたくないのか」、「まだネンネだからな」などと言う男性から男性に対する「からかい言葉」も、相手によってはセクハラとなるでしょう。

 
 もし、こうした実状について改善が必要となれば、「雇用管理上の措置義務」が必要となり、是正勧告に応じなければ「企業名の公表」も新たに取り入れられました。お気をつけ下さい。

 
 男女雇用機会均等法の改正では、その他に、妊娠・出産を理由とする解雇が禁止されていたのに加えて、同じ理由で非正規社員に対する雇止めや退職勧奨、パート職への変更など全ての不利益取扱いが禁止されますし、産後1年以内の解雇も原則無効となります。また、いわゆる「間接差別」も禁止されます。これは、性別と一見関係ないように見えても、実は片方の性に不利益を与える措置で合理性がないものを指しますので、よくある「コース別人事」など問題が発生しうる場合があります。

 
 いずれにしても、「雇用管理」は企業で働く労働者の人権を守ることが重要です。「労働者は人間らしく公正に扱われ、尊厳ある働き方が保障される」ということが根本です。「企業はひと」という中小企業の経営者が9割ですから、どうか、働く人々を大事にして下さい。私達の法律事務所も小とはいえ、職場を形成していますので、私自身、経営に関与する立場として、よくよく気をつけたいと思います。

 

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 和田 光弘◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2007年5月号(vol.16)>

【法務情報】経営者の皆さん!どうしたら法律に強くなるのでしょう?

 │ 新潟事務所, ビジネス, 弁護士和田光弘

 経営者の皆さん(経営者でなくとも別に構いませんが)。法律に強くなるにはどうしたらいいのでしょうか。

 
 それは,できるだけ多くトラブルを経験することです。

 
 人間は弱いもので,自分が痛い目にあったことしか,なかなか理解できません。滅多なことではトラブルにあわないという方はどうしたらいいでしょう。そういう強運の方は,他人の失敗をできるだけ「我がことのように」深く味わうしかありません。

 
 例えば,私は,今(※2010年)から31年前に,弁護士となる前の修習生の時代に,私の父の連帯保証債務の支払について,新潟県信用保証協会の方と交渉したことがあります。

 
 父(既に故人です)は,弟の事業のために2000万円ほどの借入金の連帯保証人となりました。私からすれば叔父なのですが,叔父の会社は燕市の洋食器産業の斜陽のときに倒産しました。

 
 当時,父が修習生の私に対して,「何人も保証人が居るからその保証人の頭数で割って負担することになるのか」と真顔に聞いてきたことがあります。

 
 保証協会付きでしたから,保証協会が銀行に支払った後の負担額の問題でしたが,「連帯保証」は,債務全額を負担するのだ,という話をした時の父の顔が忘れられません。

 
 逆に,私の方は,「連帯保証」の意味すら分からずに印鑑を押したのかと思うと,それこそ「それも分からずに!」と驚きました。

 
 その時の父の財産は,自宅は借家ですし,これと言った蓄えもなく,地金くずの卸販売業を営んでいるだけの状態でした。子どもらは,嫁に行った姉らを別にすると,大学に就職した兄と修習生の私と大学生の弟と言った顔ぶれですから,返済のために使える資金は限りがありました。

 
 そこで,私は「親父さん,現金200万円を用意してくれ。交渉に行ってくるから」と言いました。多少の現金はあったと見え,父は何とかその200万円を用意しました。

 
  その資金を懐に,私は,信用保証協会の方を訪ね,次のように言いました。

 
 「今できる最大の資金を返済のためにもってきました。兄も私も将来どうなるか分からず,何の力もありません。それでも,二人とも父に協力し,連帯保証人としてできるだけの誠意は見せようと父とともに用意した金です。これで勘弁して下さい。」(微妙にごまかしていますが気持ちはこの通りです。)

 
 そして,現金200万円をそのままテーブルの上に置きました。

 
 保証協会の担当者は,驚いた顔をして,「それじゃ一部弁済と言うことで」と言いました。

 
 私曰く「だめです。これで残りは請求しないで下さい」と。

 
 担当者「いや,それはちょっと難しい」。
 私「それならこの資金はなかったことに」。

 
 担当者は奥に引っ込み,帰ってくると「和田さん,一部弁済で入れさしてもらって,領収書に事実上請求しないと書くことでどうですか」と言いました。

 
 保証協会に請求権は残るけれど,その権利行使は事実上しない(これを債務者の立場で「自然債務」と言います。つまり債務はあるけれど,裁判によって請求されることはなく,自ら返済できるときに返済すれば有効というだけの効力が残っていると言うことです。)という,実に微妙な処理を申し出てもらったのです。もし,私がそのときに「免除」とか「放棄」と言うことにこだわったら,交渉は成立せず,後に裁判まで行ってしまったでしょう。

 
 私の示談交渉の原点が,この体験にあります。自分の痛みを先に相手に差し出す。誰でも将来の資金よりも,目の前の現金に弱い。完全に明確な法律状態が作れなくとも生活上の支障がなかったら合意に応ずる。

 
 連帯保証制度とは何か,銀行取引とは何か,保証協会の役割は何か,債務の弁済の方法とは,合意の証拠は,などなど,このトラブルの中にはたくさんの法律的な知識が詰まっています。

 
 皆さん,「我がことのように」味わえますか。和田さんも大変だったなと心の底から思ってくれる,その感覚がある人は学ぶことができます。

 
 経営者の皆さんは,「トラブル座談会」や「失敗トレーニングの会」を弁護士と一緒に議論して,そこにある法律問題を実践で身につけることができるのです。今年はそんなことを考えてみませんか。

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 和田 光弘◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2010年4月30日号(vol.53)>

 

月別アーカイブ

悩むよりも、まずご相談ください

お客様のトラブルや不安を一日でも早く取り除くためのサポートをいたします。

ご相談予約専用フリーダイヤル

0120-15-4640 メールからのご予約はこちら
予約受付時間
9:00~18:00 受付時間 受付時間 受付時間 受付時間 受付時間 受付時間

土曜日のご相談予約受付時間は、9:00~17:00(1時間短縮)となります。

コモンズクラブ総会
販売書籍のご案内 メディア掲載情報一覧 介護事業所向けの案内 保険代理店向けの案内 法務情報 スタッフブログ 弁護士採用情報 事務局採用情報 さむらいプラス
お急ぎの方はこちら
PAGE TOP