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お知らせ

新潟第一法律事務所からの様々なお知らせやご連絡、メディア情報などををご紹介します。

中小企業の経営承継円滑化に関する法律の改正

 │ 弁護士古島実, 燕三条事務所

 

Q.

中小規模の会社を経営しています。

会社を長男に継がせるため,自社について私の保有株式は全て長男に贈与又は相続させたいのですが,

気をつけるべきことはありますか。

また,長男ではなく,甥に継がせるために生前の全ての株式を甥に贈与する場合はどうですか。

 

A.

「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(以下「円滑化法」といいます。)が

平成21年3月に施行され,平成27年8月に適用範囲の拡大についての改正がありました。

 

 

 

1 円滑化法は遺留分の原則に例外を設けます

 

民法には,相続人の権利を守り,相続人間の公平を図るために,遺留分という制度があります。

各相続人には,相続財産のうち一定割合について,

それを取得する利益が留保されています(これを遺留分(いりゅうぶん)といいます)。

この遺留分は,遺言によっても減らすことができません。

 

そのため,相続財産において自社の株式以外の高額の財産がない場合,

遺言によって一人の相続人(長男)に株式を全て相続させようとしても,

他の相続人が遺留分を主張して,他の相続人が取得することになり,

せっかく特定の相続人に集中しても,株式が分散されてしまう危険性があります。

この遺留分の主張を遺留分減殺請求といいます。

 

生前に予め株式を一人の相続人に贈与しておいた場合でも,

当該株式は相続時に相続財産として取り扱われるので,結局は同じ問題が起こります。

 

また,生前に,相続人以外の第三者(甥)に贈与した場合でも,

一定の場合,相続人は遺留分減殺請求をして,贈与を受けた第三者(甥)から取り戻すことができます。

 

 

2 円滑化法による遺留分制度の修正

 

この問題について円滑化法は,

相続人となる者らの事前の合意によって,遺留分を算定するための財産の価額から株式等

(株式の他にも,被相続人個人名義の事業用不動産等)を除外することを可能にしました。

 

これにより,遺留分制度による株式等の分散を防ぎ,

一人の相続人を後継者として集中的な経営を行うことが可能です。

 

平成21年3月の施行については,遺留分制度の修正は,

相続人に対して贈与又は相続がなされた場合にのみ適用されましたが,

今回の改正により,第三者に贈与する場合にも適用されることになり,

遺留分制度の修正の範囲が拡大しました。

 

 

3 要件と必要な手続き

 

円滑化法の適用対象企業は,一定規模以下のものに限られます

(例えば,製造業では資本金3億円以下または従業員300人以下)。

 

また,後継者となる相続人が既に株式を総議決権の50%よりも多く保有している場合は,

円滑化法の適用はありません

(この場合,相続人の保有株式が分散しても後継者による会社経営に影響は無いため。)

 

手続きとして,まず,相続人となる者全員が遺留分の算定基礎財産から

株式等の財産を除外する旨を書面によって合意する必要があります。

 

その後,当該合意に基づき経済産業大臣の確認を受け,

さらに家庭裁判所の許可を得る必要があります

(他にも細かい要件が定められていますが,ここでは割愛させていただきます。)

 

 

(1)民法特例の合意書の記載事項

合意書には,必ず記載しなければならない事項と必要に応じて記載する事項があります。

 

(2)必ず記載しなければならない事項

① 合意が会社の経営の承継の円滑化を図ることを目的とすること

② 後継者が経営者からの贈与等により取得した自社株式について

・遺留分算定の基礎財産から除外する旨

・遺留分算定の基礎財産に算入すべき額を固定する旨

③ 次の場合に非後継者がとり得る措置

・後継者が㈪の合意の対象とした自社株式を処分した場合

・後継者が経営者の生存中に代表者を退任した場合

 

【必ず記載しなければならない事項③の具体例】

①非後継者は,合意を解除することができる。

②非後継者は,後継者に対し,

対象株式を他に処分して得た金銭の一定割合に相当する額を支払うよう請求することができる。

③非後継者は,後継者に対し,一定の違約金,制裁金を請求することができる。

 

【必要に応じて記載する事項】

④ 後継者が経営者からの贈与等により取得した自社株式以外の財産(事業用資産など)を

遺留分算定の基礎財産から除外する旨

⑤ 推定相続人間の衡平を図るための措置

⑥ 非後継者が経営者からの贈与等により取得した財産を

遺留分算定の基礎財産から除外する旨

 

【必要に応じて記載する事項⑤の具体例】

●後継者は,非後継者に対し,一定額の金銭を支払う。

●後継者は,先代経営者に疾病が生じたときの医療費を負担する。

 

【必要に応じて記載する事項⑥の具体例】

●非後継者が経営者からの贈与により取得した現預金や

自宅不動産について遺留分算定の基礎財産から除外する。

 

 

4 その他

 

円滑化法は,上記の定めの他にも,株式等を遺留分算定基礎財産に参入する場合に

その株式の価額を事前の合意時の価額に固定できることや中小企業信用保険法の特例など,

経営承継の円滑化に資するための制度を定めています。

 

 

5 参考資料

 

中小企業庁がわかりやすいパンフレットを作ってPDFで無料配布していますので,参考にしてください。

『事業承継ハンドブック』

 

【弁護士法人新潟第一法律事務所 弁護士 古島 実】

<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2015年10月15号(vol.183)>

※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

 

 

不正に流出した営業秘密の保護 ~不正競争防止法の改正について~

 │ 弁護士海津諭, 新潟事務所

 

 

1 情報の価値の重要性

 

近年は,コンピュータやネットワークなどの性能が進歩し,かつ広く普及してきたことで,

事業者は営業活動を行うにあたって大量の情報データを収集・保有し,それを利用するようになってきました。

営業活動における情報データの価値は,日々増しているものといえます。

 

また,上記のような営業の面だけでなく,技術上の面においても,

事業者が自社の技術に関する情報を管理し,他者に容易に模倣されないようにするのは重要なことです。

 

このように,近年においては,事業者の保有する情報が高い価値を有しているという状況があります。

そのため,その情報を,他人が不正に取得して利用するような事件も発生しており,大きな社会問題となっています。

 

例えば,ベネッセの顧客情報が他の事業者に流出し,

流出させた人物として派遣社員のシステムエンジニアが逮捕された事件は,

マスメディアで大きく報道されましたので,報道を目にした方も多いと思います。

 

 

 

2 情報の漏えい等を規律する法律- 不正競争防止法

 

このような情報漏えい行為などに対応する法律として,「不正競争防止法」という法律があります。

不正競争防止法は,事業者が秘密として管理している有用な技術上または営業上の情報であり,

かつ非公知な情報のことを,「営業秘密」と呼んで,

営業秘密を不正に開示する行為や,不正に開示された営業秘密を利用する行為を禁止し,罰則も定めています

 

 

3 不正競争防止法の改正

 

平成27年7月,上記の不正競争防止法について,その一部を改正する改正案が可決・成立しました。

この改正は,上記の営業秘密の保護をさらに強化するという内容のものです。

以下では,改正点のうち,特に処罰の範囲が拡大したという点について説明いたします。

 

 

4 営業秘密の転得者処罰範囲の拡大

 

営業秘密が他人によって不正に取得され,さらに他人に開示されて利用されるというケースにつきまして,

今回の改正以前は,処罰される人の範囲が狭く限定されていました。

 

具体的には,従来は,最初に営業秘密を不正に取得した人(一次取得者)と,

その人から営業秘密を取得した人(二次取得者)だけが刑罰の対象でした。

 

そのため,二次取得者からさらに営業秘密を取得した人(三次取得者)や,

さらに三次取得者から取得した人(四次取得者),及びその後の五次取得者以降の人については,

たとえその営業秘密が不正に開示されたものと知った上で,

その営業秘密を自ら使用したり他人に開示したりしても,刑罰の対象とはなりませんでした。

 

今回の改正では,この点につきまして,三次取得者以降の取得者につきましても刑罰の対象となりました。

 

すなわち,今回の改正が施行された後は,

営業秘密に該当する情報(事業者が秘密として管理している有用な技術上または営業上の情報であり,かつ非公知な情報)を,

それが不正に開示されたものであることを知りながら,

または重大な過失により知らないで,取得,利用または開示した人は,

たとえ三次取得者以降であっても刑罰の対象となります。

 

例えば,前記のベネッセのようなケースでは,

流出した顧客情報を取得した人は,その情報が数次にわたって転々流通した後のものであったとしても,

不正に開示されたものと知りながら取得,利用または開示すれば,刑罰の対象となってしまいます。

 

 

5 改正を踏まえて留意すべき事

 

上記の改正を踏まえ,皆様が留意すべきこととしては,

まず,営業秘密に該当する情報を取得,利用または他人に開示する場合においては,

その情報が不正に開示されたものではないことを確認し,

可能であれば裏付け調査を行うべきです(「重大な過失」があったと評価されるのを防ぐため)。

 

そして,不正に開示された情報であると分かった場合は,

絶対に取得,利用または他人への開示をしてはいけません

 

また,不正に開示された情報であるかどうかが疑わしい場合は,

念のために弁護士に相談した上で対応することをお勧めします。

 

他方,営業秘密を保有する事業者の立場で,

もしも自らの営業秘密が漏えいしてしまったと考えられる場合は,

速やかに弁護士に相談して,損害の拡大防止や行為者の処罰のために適切に対応していくべきです。

 

 

6 情報管理体制の整備

 

また,事業者の立場におけるそもそもの対策としては,情報管理体制を十分に整備して,

営業秘密の漏えいが容易に発生しないようにしておくべきです。

 

当事務所にご相談いただければ,当事務所内の情報管理対応チームが,

情報漏えい対策を始めとする様々な点につきまして,情報管理体制整備のご提案をさせていただきます。

情報管理体制に少々でも不安のある事業者の方は,どうぞお気軽にご相談ください。

 

 

【弁護士法人新潟第一法律事務所 弁護士 海津 諭】

<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2015年10月1号(vol.182)>

※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

問題社員対応のための法律知識

 │ 弁護士五十嵐亮, 長岡事務所

 

 

1 はじめに

 

労務管理への関心が高まっていることは常日頃感じているところですが,

その中でも関心が高いと思われる「問題社員対応」について,先日,セミナーを実施しました。

参加者の方々は皆一様に熱心に取り組んでいましたので,

この問題に対する関心の高さを再確認することができました。

 

 

2 問題社員対応の3つのポイント

 

(1)「誰が」問題を起こしたのか?

まずは,誰が問題を起こしたのかという点です。

当たり前ですが,何もしていない人を処分することはできません。

この点は,横領や情報漏洩等の不正行為のケースで問題となり得るでしょう。

また,何者かがネット上の掲示板に内部の者しか知りえないことを書き込んだようなケースでも問題となり得ます。

 

(2)「どのような」問題を起こしたのか?

次に,具体的にどのような問題を起こしたのかという点です。

悪質性の程度や頻度なども重要な要素となります。

 

(3)どのような「手段」を採るべきか?

最後に,社員が問題を起こしたとして,どのような手段によって対応すべきかという点です。

手段としては,通常の注意・指導や懲戒処分があります。

会社に損害が発生していれば,損害賠償請求をすることもあり得るでしょうし,

犯罪行為が行われた場合には刑事告訴をすることもあり得るでしょう。

 

 

3 とりうる「手段」の分類と注意点

 

(1)法的処分とそれ以外の分類

手段には,法的効果を伴う手段とそうでない手段があります。

前者には懲戒処分や普通解雇が当てはまりますし,後者には,通常の注意・指導が当てはまります。

「法的効果」というのは,例えば,減給処分で言うところの賃金が下がること,

解雇で言うところの職を失うことがそれに当たります。

 

法的効果が生じる処分は,裁判でその適法性・有効性を争うことが可能ですので,

後から違法と判断されたり,場合によっては損害賠償を請求されたりするリスクを伴うことになります。

単なる注意・指導の場合には,それ自体を違法・無効と言われることはありません

(注意・指導がパワハラに当たるような場合は別ですが)。

 

(2)懲戒処分の分類

懲戒処分は,さらに,戒告・譴責,減給,出勤停止,懲戒解雇に分類されます。

戒告・譴責は,懲戒処分として行う注意・指導です。

懲戒歴にとして記録されることやその懲戒歴が賞与の算定,昇進の判断等に影響されることが,

単なる注意・指導と異なります。始末書の提出を伴うこともあります。

減給は,賃金の額から一定額を差し引くことです。

出勤停止は,制裁として就労を一定期間禁止することです。

停止期間中は,賃金が支給されず,勤続年数にも参入されないのが通例です。

懲戒解雇は,懲戒として解雇を行うことです。

解雇予告(ないし解雇予告手当)が不要であることや

退職金の全部または一部の不支給もあり得ることが,普通解雇と異なります。

 

(3)懲戒処分の注意点

懲戒処分はいつでもできるわけではありません。

むやみに懲戒処分を行うと違法と判断されるリスクがあります。

懲戒処分を行うには就業規則に定められた懲戒事由に該当することだけでは足りず,

さらに企業秩序に違反したこと及び懲戒処分を行うだけの社会的相当性が必要です。

 

 

4 具体例

一般論が長くなりましたが,ここからは具体例をみていきます。

 

(1) 遅刻・欠勤が多い社員

遅刻・欠勤が多い社員に対しては,

①遅刻・欠勤の理由の説明を求める,

②理由が合理的でなければ改善を促す,

③改善の機会を与えても改善されない場合は,懲戒処分等を検討というステップを踏む必要があります

 

裁判例の中には,1年間に欠勤27日,出勤した252日のうち99日は遅刻早退の者を解雇したという事例で,

他のより軽い処分をとったことがなく反省の機会を与えずに会社から排除したとして,

解雇は無効と判断されたというものがあります。

 

また,宿直勤務の際,2週間の間に,

寝坊をして定時ラジオニュースを放送することができなかったという放送事故を

2度発生させたアナウンサーを解雇した事案について,解雇無効と判断した裁判例もあります。

いずれの裁判例においても,いきなり解雇という重大な手段をとったことが違法性の根拠の一つとしてあげられています。

 

 

(2)部下に対する言葉遣いが乱暴な社員(上司)

このようなケースでは,上司と部下の言い分が食い違っていることが多いので,

双方の言い分を丁寧に淡々と聴き取ることが重要です。

他に見聞きしている社員がいれば,その者からの聴取も必要でしょう。

人格否定的な暴言が継続して行われているような場合で,

注意・指導しても止まないようであれば,懲戒処分の検討も必要でしょう。

 

裁判例においては,他の社員がいる前で,「ばかやろう」と言ったり,

別室で「三浪してD大に入ったのにそんなことしかできないのか。結局大学でても何にもならないんだな」

と言ったりする等した行為がパワハラと認定されています。

 

 

5 さいごに

このように,問題社員の対応には,丁寧な調査,きめ細かい対応,正確な判断力が求められます

判断に困ることがありましたら,いつでも私たちにご相談ください。

 

 

 

【弁護士法人新潟第一法律事務所 弁護士 五十嵐 亮】

<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2015年9月15号(vol.181)>

※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

 

 

 

 

休職中の解雇について最高裁判決が出ました

 │ 弁護士小林優介, 新潟事務所

 

 

 

1 最高裁判決が出ました

 

休職中の労働者の解雇について,

平成27年6月8日に注目すべき最高裁判決が出ました。

 

今回は,この最高裁判決で問題となった,

業務上の怪我や病気で休職した労働者の療養費を使用者が直接負担していない場合に

労働者を解雇することの可否について説明します

 

 

2 解雇についての民法の定め

 

まず,使用者は,どのような場合に労働者を解雇できるのでしょうか

 

民法では,期間の定めのない雇用について,

各当事者はいつでも解約の申込をなすことができ,この場合において,

雇用は解約の申入れ後2週間の経過によって終了する(民法627条1項)と規定されています。

 

つまり,民法上は,期間の定めのない継続的契約関係について,

契約当事者が契約によって過度に拘束されることを防ぐために

いつでも契約を終わらせることが出来るという建前がとられ,

ただ,相手の不測の損害を防ぐために一定(2週間)の予告期間が要求されているということです。

 

 

しかし,

何の理由もなしに2週間の予告期間さえおけば解雇できるというのでは,

労働者の地位はあまりにも不安定になってしまいます。

 

そこで,労働基準法や労働契約法等の各法律において,

民法の定めよりも解雇できる場合が限定されています。

 

 

3 解雇の制限

 

(1) 解雇予告

使用者は,労働者を解雇しようとする場合には,

少なくとも30日前にその予告をしなければならず,

30日前に予告をしない使用者は

30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません(労働基準法20条1項,同条2項)。

民法で2週間置けばよいとされていたものがここで修正されています。

 

(2) 解雇権濫用

解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,

社会通念上相当であると認められない場合は,

その権利を濫用したものとして無効とされます(労働契約法16条)。

 

解雇権濫用にあたるかは個別の判断を要しますが,

少なくとも理由のない解雇はできないことになっています。

 

(3) 特別の事由による解雇制限

解雇に理由がある場合でも,

産前産後の休業中の解雇や組合活動をしたことを理由とする解雇など,

特別の事由による解雇は,労働基準法や労働組合法等個別の法律で禁止されています。

 

 

4 業務上の怪我や病気で療養中の労働者の解雇

 

業務上の怪我や病気で療養中の労働者の解雇は,

前述の3(3)の場合にあたり,労基準法19条1項本文で禁止されています。

ただし,使用者が費用負担をして療養を始めてから3年が経過しても治癒(症状固定)しない場合には,

賃金1200日分の打切補償を支払えば解雇が可能とされています(労働基準法19条1項但書,同法81条,同法75条)。

 

なお,業務上の怪我等で3年経過前に治癒した場合に,

後遺症が残っていて職場復帰不能であることを理由に解雇することについては,

労基法19条1項の解雇制限は適用されません。

ただし,その場合も,別途解雇権濫用にあたるかどうかの判断は必要です。

 

 

5 最高裁で問題となった点

 

前述の最高裁判決の事案は,

とある男性労働者が2002年頃から首や腕に痛みが生じて頸肩腕症候群と診断され,

2007年に労災認定を受けて休職していたところ,

使用者が11年に打切補償約1630万円を支払って同労働者を解雇したというものでした。

 

その男性労働者は,使用者に対して,解雇が無効であるとして,

労働者としての地位確認を求めて訴訟を提起したのでした。

 

この事件では,使用者が療養費を負担せず,国が労災保険を支給している場合に,

療養開始から3年経過後に打切補償を支払って解雇できるかが問題となりました。

 

確かに,使用者が直接療養費を負担していない以上は,

労働基準法19条1項但書の規定を適用する余地はないようにも考えられます。

他方,使用者は保険料を納めることで,労災保険から療養補償給付がなされているのであり,

労働基準法84条でも,労災保険として療養補償給付がなされた場合,

その限度において,使用者は補償責任を免れるとされています。

 

一審と控訴審は,労災保険と労基法上の災害補償とは独自の制度であり,

労災保険給付を受けているからといって,明文の規定もないのに,

労基法19条1項の解雇制限の解除を認めるのは使用者の負担等の観点からみて必要性に欠けると判断していました。

 

しかし,最高裁は,

「労災給付は,使用者による補償に代わる制度であり,使用者の義務はそれによって実質的に果たされている」

と解釈し,国から労災保険の支給を受けていれば「療養開始後3年が過ぎても治らない場合,

打切補償の支払いで解雇できる」との判断を示しました。

 

 

6 おわりに

 

前述の最高裁の判断に対しては,

「治療に専念して復職する権利が奪われる」,「大量解雇の道が開かれる」との批判もあります。

 

しかし,労基法19条1項の解雇制限を受けなくとも,

さらに解雇権濫用にあたるか否かの判断が必要となるため,

直ちに解雇が認められるわけではないと考えられます。

 

 

【弁護士法人新潟第一法律事務所 弁護士 小林 優介】

<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2015年7月31号(vol.179)>

※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

 

 

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