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社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

【法務情報】安全なネットショッピングの陰に法律あり

 │ 新潟事務所, 弁護士古島実, 消費者

1 法律は社会の変化を反映して、古いものが改廃されたり、新しいものが制定されたりします。

  ストーカーという耳慣れない言葉が知れ渡った平成12年に、つきまとい行為等を禁止し処罰するストーカー規制法が制定されました。平成14年に「内部告発」が流行語大賞に入賞し、企業内からの内部告発の重要性が取り上げられ、平成18年に公益通報者保護法が制定されました。オレオレ詐欺という言葉が一般化するなど振り込み詐欺が問題となり、平成19年には犯罪による収益の移転防止に関する法律が制定され預金口座の売買が犯罪化されるなどしました。

 

2 ところで、現在では、買い物の仕方も多様になり、ネットショッピングが日常生活に深く関わり、インターネットを通しての取引が普通になりました。そのような中で、法改正も進み、不正アクセス防止法が平成12年に制定され、他人のIDやパスワードを利用して不正にアクセスすることが犯罪化されました。また、電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律という法律が平成13年に制定され、取引の安全に対する配慮がなされました。

 

  例えば、ネットショッピングにおいて、商品を1個注文しようとしたところ、10個と間違って入力したり、10個と押し間違えたことに気付かずに注文ボタンを押したりして、注文したとします。この場合、売買契約の大事な事項(要素)に、「思い」と「注文の表示」との間に食い違い(錯誤)があります。取引に関する原則を定める民法では、要素に錯誤があった場合には取引は無効となります。しかし、これには但し書きがあり、錯誤について重大な過失があった場合は無効を主張できません。

 

  おそらく、ネットショッピングでの入力の間違いは重大な過失といえるので、間違った注文者は取引の無効を主張できなくなり、「思い」とは異なる「注文の表示」どおりの内容で契約が成立します。10個の商品が届いて10個分の代金を支払わなければならなくなるのです。しかし、それでは、怖くてネットショッピングなんかできなくなります。そこで、民法に特例法を設け、ネットショッピングにおいては、この但し書きの適用を排除して、たとえ錯誤について重大な過失があっても無効を主張できることになりました。

 

  しかし、それでは、販売業者は、いつ勘違いを理由に取引の無効を主張されるか分からなくなり、怖くてネットショッピングなんかできなくなります。そこで、販売業者が、注文内容を確認する画面などを用意して、入力後に、注文者に注文内容の再度の確認をさせた場合は、注文者に重大な過失があった場合は無効を主張できないとして販売業者を保護しています。

 

  この特例法を受けて、実際のネットショッピングにおいては、必ずといっていいほど、最後に、注文内容を再確認する画面が設けられています。知らないところで法律がネットショッピングの安全の仕組みを作っているのですね。

 

3 長い間変わらない法律もあります。社会には変化しない部分があるのでしょうか。100年以上も前の明治33年に制定された鉄道営業法が現在も生きていて、その第34条1項に、「制止ヲ肯セスシテ左ノ所為ヲ為シタル者ハ十円以下ノ科料ニ処ス」として「婦人ノ為ニ設ケタル待合室及車室等ニ男子妄ニ立入リタルトキ」と規定されています。

 

  この条項は物議を醸したことが記憶に新しい女性専用車両の根拠として取り上げられています。現在のような問題状況を前提にして制定されたかどうか分かりませんが、このような法律が100年以上もの間廃止されずに生きていたことは驚きです。

 

   なお、罰則は10円以下の科料ですが「10円払えば・・・」ということにはなりません。前科になりますし、現在では罰金等臨時措置法で1000円以上1万円未満に引き上げられています。

 ◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 古島 実◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2011年11月30日号(vol.91)>

【法務情報】更新料・敷引特約についての最高裁判例解説

 │ 弁護士大橋良二, 新発田事務所, 消費者

1 既に新聞報道などでご存じの方も多いかと思いますが,先月(※2011.7)に入ってから,建物の賃貸借契約に関して,重要な2つの最高裁判決が登場しました。

 
 一つは,「賃貸借契約の更新料特約」に関するもので,もう一つは,「賃貸借契約の敷引き特約」に関するものです。どちらも我々の生活に直接影響を及ぼしうる重要判例ですので,以下,本当に大まかな内容ですが解説します。

 
2 まず,「賃貸借契約の更新料特約」が何かというと,関西地方でよく見られる特約で,たとえば,1年間の賃貸借契約を締結すると,1年後の契約更新の際に,借主が貸主に対し,賃料の2か月分を「更新料」という名目で支払うなどというものです。

 
  現に,私も大学時代に京都で借りていた物件にもこの特約があり,1年ごとに(記憶が曖昧ですが)家賃の2.5か月分を支払ったという記憶があります。現実には,1年ごとの更新月に,家賃+更新料(家賃の数か月分)を負担するので,なかなか大きな金額を負担することになります。

 
 この特約の問題点は様々指摘されてきたところですが,消費者にとってわかりにくく不利な契約であり,消費者契約法に反するといって無効であるなどと主張されていました。

 
 これに対し,最高裁判決は,「賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は,更新料の額が賃料の額,賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り」有効と判断しました。(7月15日最高裁判所第二小法廷)。

 
 要は(誤解を恐れずにごく簡単にいうと),更新料の取り決めが契約書上はっきり記載されていて,契約するときに更新料がどのような金額であるか(たとえば,何年ごとに何万円必要なのか)が契約を読んで理解できるようなものであれば,特別な事情がない限り有効という意味です。

 
 ですので,今後は,特別な事情がない限りは,「1年ごとに家賃1か月分の更新料がかかります」といった特約は有効と判断されると考えることができるでしょう。

 
3 次に,「賃貸借契約の敷引き特約」というのは,新潟県内でもよく見られる契約で,借主が賃貸借契約が終了して明け渡す際に,建物のクリーニング費用等々という名目で,一定額を敷金から差し引くというもの(など)です。

 
 この点もまた,私が学生のころ借りていた物件でも,居住年数掛ける1万円が敷金から差し引かれるという特約があり,明渡し時にその物件を借りていた期間分(4年間×1万円=4万円)を,敷金から差し引かれたという記憶があります。

 
 この事件では,高等裁判所は,契約時の貸主借主の情報格差や借主にとって大きな負担であること等を理由に無効と判断したのですが,最高裁判所は逆転して有効と判断しました。

 
 その理由としては,本件契約書に,本件敷引金が返還されないことが明確に読み取れる条項が置かれていたのであるから,借主は,本件契約によって自らが負うこととなる金銭的な負担を明確に認識した上で本件契約の締結に及んだものであると指摘されています。(7月12日最高裁判所第三小法廷)


 この判例の登場により,今後は,たとえば,建物明渡し時に3万円のハウスクリーニング費用を頂きますといった契約については,その内容が具体的かつ明確なので,不当に高額である等の事情がなければ,有効と判断される可能性が高いでしょう。

 
4 以上の2つの最高裁判決から読み取りうる内容としては「具体的な条項が記載された契約書に署名押印したのであれば,後で不平不当を主張してもなかなか受け入れられない」ということです。

 
 すなわち,更新料特約については,契約の際に契約書を見れば毎年その金額を支払わなければならなくなることが理解できる内容の契約書に署名押印した以上は,また,敷引き特約についても,明渡し時にいくら差し引かれるのかが明確に読み取れる条項がある契約書に署名押印したのであれば,後から「その契約は不当だ」と主張しても裁判所は簡単には主張を認めてはくれないということです。

 
 というわけで,契約書に署名押印したら後から契約内容に不服を述べても容易には覆りません。

 
 上記の判例は消費者対事業者に関するものですが,事業者対事業者であればなおさらです。その意味で,契約書は署名押印する前に事前のチェックが重要なのです。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 大橋 良二◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2011年8月15日号(vol.84)>

【法律相談】消費者との契約におけるキャンセル料

 │ 長岡事務所, 消費者, 弁護士佐藤明

Q.お客様との契約が解除された場合に備えて、キャンセル料や違約金等を契約で定めておくことがあります。そのような賠償額等には制限がないのでしょうか。

 

1 消費者への配慮は
  取引・契約関係で、相手方の都合で契約を解除されることがあります。
 そのような場合には、解除で被った損害を賠償してもらうでしょうし、事前に、損害賠償額の予定や違約金等を契約(互いの合意)で定めることも当然あるところです。
  ところが、事業者同士でなく一方が消費者である場合、契約があればどのような内容でも定められるでしょうか。
  この点、民法の一般原則に従えば、消費者も契約通りのキャンセル料等を払わなければならないでしょうが、消費者は交渉力が事業者に比べて劣り不利な条項を受け入れてしまい、結果的に消費者が不利益を被ることがあることから問題となります。

 
2 賠償額の予定等の制限
  前述のとおり、業者と消費者との間では、対等な立場で契約がされるとは限らないことから、弱い立場の消費者を保護するために消費者契約法が定められています。
 そして、同法9条1号で、損害賠償額の予定や違約金を規定している条項のうち、消費者契約の解除に伴いその事業者に生ずべき「平均的な損害の額」を超えた部分は無効としています。
 即ち、消費者の都合で契約が解除されても、契約に定められている損害賠償金や違約金の額が、その消費者契約と同種の契約が解除された場合に生じる平均的な損害の額の限度でしか、契約条項の効力を認めず、それを超える部分については契約条項の効力を否定しています。

 
3 具体的なケース
  平均的な損害とは、同一業者が締結する多数の同種契約事案について類型的に考察した場合に算定される平均的な損害額です。その損害額を超えるかどうかの判断は事案毎に個別の検討をせざるを得ませんが、参考に裁判例をいくつか挙げます。

 
(1)新古車販売の解除
  新古車の注文につき、注文から2日後に消費者がキャンセルしたケースで、車両価格の15パーセント相当の損害賠償金等を請求できるとの契約条項が、事業者には損害が生じているとは認められないとして無効とされたものがあります。

 
(2)パーティー予約の解除
 パーティー予約の解除につき、営業保証料として1人あたり約5300円を徴収するとの規約があったケース(事案では合計21万円)で、そのような規約は平均的損害を超えているとして裁判所が認定した同額を超える部分の違約金を定めるものが無効とされたものがあります。

 

 ◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 佐藤 明◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2011年7月31日号(vol.83)>

【法律相談】パッケージツアーのトラブルについて

 │ 新潟事務所, 弁護士角家理佳, 消費者

Q パックツアーに参加したのですが、出発後に旅行内容が変更になってしまいました。安いツアーだから仕方ないと、諦めるしかないのでしょうか?

 

A 桜や新緑が楽しみな季節になりました。便利なパックツアーに参加される方も多いことでしょう。そんな時、旅行の予定が突然変更になってしまったのでは、楽しさも半減ですね。
 
 しかし、この点に関し旅行需要の多様化を反映し、近時、旅行業法や標準旅行業約款の改正が相次いでなされ、旅行者がより一層保護されるようになったこと、特に後者では、契約内容に重要な変更が生じる一定の場合に、旅行業者の過失の有無を問わず、変更補償金の支払いが義務づけられたこと(旅程保証制度)はあまり知られていないのではないでしょうか。

 
 たとえば、契約時には○○航空のスーパーシート利用となっていたのに、別の航空会社になってしまった場合は「運送機関の会社名の変更」に、スーパーシートがエコノミークラスになった場合は「運送機関の等級の変更」にあたり、それぞれ旅行開始前の変更なら旅行代金の1%、開始後なら2%の変更補償金が支払われることになります。

 
 また、ホテルの変更は宿泊機関の名称の変更にあたり、やはり、前同様の補償の対象になります。

 
 これは契約書面で「○○ホテル又はそれと同等のホテル」と記載されており、確かに同等クラスへの変更で、料金も同じだとしてもです。

 
 契約書面でこのようなあいまいな記載をすること自体が許されず、契約段階で未確定の場合には、利用の可能性のあるホテル名を列挙したうえ、旅行開始の前日までの当該契約書面で定める日までに、確定した内容を記載した書面を交付する必要があるのです。

 
 さらに、これらが「○○航空で行くパリ8日間」とか、「憧れの○○ホテルで過ごす香港4日間」のように契約書面のツアータイトル中に記載されている場合には、申し込みの際の重要な判断要素となっていることから、補償金の率が高く規定されています。

 
 このほか,旅行業者が,重要事項について事実と異なる説明をしたり,不利益な事実を告げなかったことにより,旅行者が誤認して契約をしてしまった場合は,消費者契約法に基づいて契約を取り消すことができる場合もあるでしょう。

 
 理不尽な文句をつけるクレーマーになるなどは論外ですが,旅行業者とより良い関係を築くためにも、主張すべきは主張する賢い消費者になりたいものです。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 角家 理佳◆
<初出:顧問先向け会報紙「こもんず通心」2008年4月号(vol.26)>

【法務情報】「住宅瑕疵担保履行法」について

 │ 燕三条事務所, 弁護士海津諭, 消費者

1 はじめに
 平成21年10月1日から,「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」(略称:住宅瑕疵担保履行法)が施行されています。ここでは,この住宅瑕疵担保履行法(以下「本法」といいます。)につきまして概要を説明いたします。

 

2 新築住宅の瑕疵担保責任
 「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」とは,売買契約や請負契約の目的物に瑕疵があった場合に,売主・請負人が買主・注文者に対して,その瑕疵を補修したり損害賠償を行ったりする責任のことをいいます。
 瑕疵担保責任の存続期間は,新築住宅の「構造耐力上主要な部分」(基礎,壁,柱など。)及び「雨水の侵入を防止する部分」(屋根,外壁など。)については,住宅品質確保法という法律により,目的物の引渡しから10年間という比較的長い存続期間が設定されています。

 

3 本法制定のきっかけ‐ヒューザー事件
 平成17年,建築士により構造計算書が偽装されていた事実と,偽装によって耐震強度をみたさないマンションが多数建設されていた事実が判明しました。その後,当該マンションを開発・販売していた不動産業者が破産したため,当該マンションの買主は十分な賠償金を得られないまま,損害の回復を諦めざるを得ない結果となりました。
 本法は,このように新築住宅の売主・請負人に十分な資力がなく瑕疵担保責任が履行されないという事態を防ぐため,売主・請負人に資力確保措置を義務付けたものです。

 

4 資力確保措置‐供託または保険加入
 本法の定めでは,新築住宅の売主・請負人である宅地建物取引業者及び建設業者は,資力確保のため,一定の額を供託所に供託するかまたは保険に加入する必要があります。
 そして,新築住宅に本法の適用対象の瑕疵があり,かつ売主・請負人が破産等で損害賠償を行わない場合,買主・注文者はその損害額につき,供託所から供託金の還付を受けるか,または保険会社から直接に保険金の支払いを受けることになります。

 

5 住宅と瑕疵の適用範囲
  本法は,平成21年10月1日以降に引渡しがなされた新築住宅に適用されます。また,適用対象となる瑕疵は,「構造耐力上主要な部分」または「雨水の侵入を防止する部分」についての瑕疵に限られます。

 

6 買主・注文者としての注意点
 新築住宅を販売する宅地建物取引業者及び住宅の新築を請け負う建設業者は,それぞれの買主または注文者に対し,本法に基づく資力確保措置についての説明が義務付けられています。
 また,上記措置を取らずに売買契約または請負契約を締結する行為に対しては,罰則として懲役刑及び罰金刑が定められています。
 ただし,供託及び保険加入の負担を嫌って上記措置を行わない業者がいないとは限りませんので,新築住宅の購入または注文の際には,契約締結時に当該措置についての説明がなされているかどうかを注意する必要があります。
 ただし,供託及び保険加入の負担を嫌って上記措置を行わない業者がいないとは限りませんので,新築住宅の購入または注文の際には,契約締結時に当該措置についての説明がなされているかどうかを注意する必要があります。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 海津 諭◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2010年4月15日号(vol.52)>

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