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社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

【法律相談】取引先からの値引き要求

 │ ビジネス, 燕三条事務所, 弁護士海津諭

Q.   当社は,資本金額2000万円の会社です。現在,資本金額3億円のA社から継続的に部品製造の委託を受けています。
このたび,製品代金を500万円と取り決めて委託を受け,製品を納入したのですが,支払期日前にA社から連絡があり,「代金の500万円から,『コストダウン協力金』として5%を引いて,475万円を支払うことにします。」と言われました。A社は大きい企業なので,当社としては反論する訳にもいかず,「わかりました。」と答えました。値引きを了承した以上,従うしかないのでしょうか。

 

A.

1 下請法 
一般に,当事者の間に大きな力の差のある取引では,強い側が弱い側に対して不当な要請を行い,その不当な要請を呑ませてしまう危険があります。

 

そこで,弱い立場の事業者を保護するため,「下請代金支払遅延等防止法(通称:下請法)」という法律があります。

 

この下請法は,一定の内容の請負取引で,かつ親事業者と下請事業者との資本金規模に一定の差がある場合(または下請事業者が個人事業者の場合)を対象として,親事業者の義務と禁止事項を定めています。

 

本件のように,部品の製造を内容とする取引で,かつ親事業者と下請事業者との資本金規模がそれぞれ3億円,2000万円である場合は,下請法の適用があります。

 

2 親事業者の禁止事項‐下請代金の減額の禁止
下請法4条1項3号は,“親事業者は,発注時に決定した下請代金を「下請事業者の責に帰すべき理由」がないにもかかわらず発注後に減額してはならない”という旨を定めています(下請代金の減額の禁止)。

 

 これは,減額の名目及び方法,並びに金額の多少を問いません(現実にあった違反事例としては,上記の「コストダウン協力金」の他に,「基本割戻金」,「協賛金」,「販売奨励金」などの名目で行われた例があります)。

 

 また,当事者間で減額の合意がなされても,その合意は無効となります。

 

なお,上記の「下請事業者の責に帰すべき理由」とは,例として,注文と異なる物や瑕疵のある物が納入された場合,納期までに納入されなかったためその物が不要になってしまった場合などが挙げられます。

 

本件では,「コストダウン協力金」として減額の要請がなされており,かつ値引きを了承してもその合意は無効となりますので,相談者である事業者に「責に帰すべき理由」がない限り,A社の要請は下請法に違反します。

 

3 違反行為への対処手続 
下請法に違反する行為を受けた事業者は,公正取引委員会または中小企業庁に対して申立てを行い,対応を求めることになります。

 

 公正取引委員会または中小企業庁は,申立てのあった件について親事業者に対し調査・検査を行い,違反行為が認められる場合には指導,勧告等を行います。

 

4 おわりに
1で書きましたように,下請法の適用があるかどうかは,取引内容と両当事者の資本金規模によります。

 

 親事業者からの要請が不当ではないかという疑問をお持ちの方は,ぜひ,専門家である当事務所の弁護士にご相談ください。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 海津 諭◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2012年1月31日号(vol.95 )>

【法律相談】相続権について(法定相続人・相続分の譲渡・贈与税)

 │ 遺言・相続, 燕三条事務所, 弁護士海津諭

<相談内容>
 
私は、従弟のAさんの生活の面倒を色々とみてきたところ、Aさんが先日亡くなりました。遺言はありませんでした。Aさんには妻や子がおらず、両親や祖父母も既に他界していて、他家に嫁いだ妹のBさんがいるだけです。
 
私には相続権がありますでしょうか。なお、葬儀の後、Bさんと話したところ、相続財産を私とBさんとで半分ずつ分けようかという話も出ていました。

 

<回答>

1 法定相続人 
民法は法定相続人について、まず、被相続人の配偶者が常に相続人となる旨を定めています。

そして、配偶者と両立しうる相続人として、第1順位の相続人を子と定め、第2順位を直系尊属(父母、祖父母など)、第3順位を兄弟姉妹と定めています。 

 

今回の場合は、遺言がなく、Aさんに妻子はおらず、両親と祖父母も既に亡くなっておりますので、兄弟姉妹である妹のBさんが、Aさんの相続財産全部についての相続権を有していることになります。 

 

 なお、民法は、法定相続人がいない場合については、「被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者」が相続財産の全部または一部を取得し得る旨を定めています。

 

しかしながら、今回の場合ではBさんという法定相続人が存在していますので、「特別の縁故があった者」の有無は問題となりません。そのため、相談者がAさんの生前に生活の面倒を色々とみてきたことは、特に意味のある事情とはなりません。

 

2 相続分の譲渡 
今回の場合では、相談者とBさんとの間で、相続財産を折半する話が出ています。

 
このような場合、相談者とBさんとが折半に合意すれば、「相続分の譲渡」として、相談者はBさんの相続分の1/2について譲渡を受けることができます(相続分の譲渡は有償でも無償でも可能です。

また、今回のように法定相続人でない第三者が譲渡を受けることも可能です。ただし、今回と違って法定相続人が複数の場合は、第三者に相続分が譲渡されて遺産分割に介入されることを嫌う他の相続人が、譲渡された相続分を取り戻すという制度もあります)。

 
今回の場合では、相談者は、Bさんの気が変わってしまわないうちに相続分の譲渡についてBさんと明確に合意し、1/2の譲渡を受けるべきです。また、後で争いが起こっても対応できるよう、相続分譲渡の合意はきちんと書面を作成し、Bさんの署名捺印を受けるべきです。
そして、その後に相談者とBさんとで、それぞれが具体的にどの財産を相続するかという、遺産分割の協議を行うことになります。

 

3 贈与税が課されること 
なお、注意点として、税金の問題があります。今回のようにもともと相続人でない人が相続分を譲渡された場合、その譲渡分には相続税ではなく贈与税が課されることになります。

 
贈与税の基礎控除額は年間110万円しかなく、例えば年間贈与額が1000万円超の場合、贈与税率は50%で控除額は225万円です。そのため、例えば相談者が取得した相続財産の価額が合計1500万円であった場合、
(1500万円-110万円)×0.5-225万円 470万円
となり、470万円もの贈与税が課されてしまいます(相続財産が現金や預金ならまだ良いですが、不動産を相続した場合、贈与税の支払いに困ってしまう危険性があります)。
相続人でない人が相続分の譲渡を受ける場合は、贈与税の額に十分お気を付けください。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 海津 諭
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」20111215日号(vol.92)

 

【法務情報】有期雇用契約における不更新の合意

 │ 労働, 燕三条事務所, 弁護士海津諭

   会社は、例えば1年契約、2年契約といったように雇用の期間を定めて従業員を雇用している場合、その契約期間が満了したとしても、その従業員を必ずしも自由に退職させることができる訳ではありません。

 
   裁判所は、「雇用の継続を労働者が期待するということに一定の合理性がある」場合には、労働者の期待を保護するため、雇用期間満了時における更新の拒否を解雇と同視して、その有効性を厳しく判断しています。

 
 そこで、会社が更新の拒否を適法に行いたい場合、会社としては、従業員に雇用継続への合理的期待をもたせることのないように注意する必要があります。

 
    その一つの手段として有益なのが、雇用契約において、会社が従業員との間で不更新の合意を行っておくという方法です。

 
  以下では、過去の裁判例を元に、不更新の合意を行う際の注意事項の一部をご説明します。

  

1.不更新条項を契約書等に明確に記載し、署名捺印を得ること。
  不更新の合意については、契約書(またはそれに準ずる書面)において不更新条項を明確に記載し、従業員の署名捺印を得ることで、合意を確たるものとしておくことが重要です。

    口頭での合意だけでは、訴訟等で争われた場合に、不更新の合意を立証できないおそれがあります。
  また、厚生労働省が定めた、「有期労働契約の締結、更新・雇止めに関する基準」においても、契約締結時に更新の有無を明示しなければならないことが定められています。

 

2.契約締結時に、次回の不更新について対象従業員との間で十分な説明や協議を行うこと。   
   契約の不更新については、従業員との間で十分な説明や協議を行っておくべきです。

     説明や協議が十分でないままに不更新条項を設けると、訴訟等で争われた場合に、従業員の真意に基づく合意ではなかったと裁判所に判断されるおそれがあります。

 

3.不更新条項と矛盾する言動をしないこと。
  会社が従業員に対して、「長く勤務してください」「雇用継続については安心して欲しい」「正社員になれると思う」など、不更新条項と矛盾する言動をしないように注意すべきです。

    これらの言動があると、訴訟等で争われた場合に、雇用継続への合理的期待が認められるおそれがあります。

 

  なお、雇用継続への合理的期待を裁判所が判断するにあたっては、不更新の合意は重要な考慮要素の一つですが、その他にも様々な要素を考慮した上での総合判断となります。その点をご注意ください(他の考慮要素としては、雇用が臨時的なものか常用的なものか、今までの更新の回数、雇用の通算期間の長さ、契約期間・更新手続が正しく管理されているか等があります)。

 

  有期雇用契約が更新されるかどうかは、従業員にとっても死活問題となり得る事柄ですので、しばしば会社と従業員との間で訴訟等の争いが起こることがあります。

 
    争いを未然に防ぐため、ぜひ早期の段階で十分な対処をしておくことをお勧めします。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 海津 諭◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2011年5月15日号(vol.78)>

【法務情報】「住宅瑕疵担保履行法」について

 │ 燕三条事務所, 弁護士海津諭, 消費者

1 はじめに
 平成21年10月1日から,「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」(略称:住宅瑕疵担保履行法)が施行されています。ここでは,この住宅瑕疵担保履行法(以下「本法」といいます。)につきまして概要を説明いたします。

 

2 新築住宅の瑕疵担保責任
 「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」とは,売買契約や請負契約の目的物に瑕疵があった場合に,売主・請負人が買主・注文者に対して,その瑕疵を補修したり損害賠償を行ったりする責任のことをいいます。
 瑕疵担保責任の存続期間は,新築住宅の「構造耐力上主要な部分」(基礎,壁,柱など。)及び「雨水の侵入を防止する部分」(屋根,外壁など。)については,住宅品質確保法という法律により,目的物の引渡しから10年間という比較的長い存続期間が設定されています。

 

3 本法制定のきっかけ‐ヒューザー事件
 平成17年,建築士により構造計算書が偽装されていた事実と,偽装によって耐震強度をみたさないマンションが多数建設されていた事実が判明しました。その後,当該マンションを開発・販売していた不動産業者が破産したため,当該マンションの買主は十分な賠償金を得られないまま,損害の回復を諦めざるを得ない結果となりました。
 本法は,このように新築住宅の売主・請負人に十分な資力がなく瑕疵担保責任が履行されないという事態を防ぐため,売主・請負人に資力確保措置を義務付けたものです。

 

4 資力確保措置‐供託または保険加入
 本法の定めでは,新築住宅の売主・請負人である宅地建物取引業者及び建設業者は,資力確保のため,一定の額を供託所に供託するかまたは保険に加入する必要があります。
 そして,新築住宅に本法の適用対象の瑕疵があり,かつ売主・請負人が破産等で損害賠償を行わない場合,買主・注文者はその損害額につき,供託所から供託金の還付を受けるか,または保険会社から直接に保険金の支払いを受けることになります。

 

5 住宅と瑕疵の適用範囲
  本法は,平成21年10月1日以降に引渡しがなされた新築住宅に適用されます。また,適用対象となる瑕疵は,「構造耐力上主要な部分」または「雨水の侵入を防止する部分」についての瑕疵に限られます。

 

6 買主・注文者としての注意点
 新築住宅を販売する宅地建物取引業者及び住宅の新築を請け負う建設業者は,それぞれの買主または注文者に対し,本法に基づく資力確保措置についての説明が義務付けられています。
 また,上記措置を取らずに売買契約または請負契約を締結する行為に対しては,罰則として懲役刑及び罰金刑が定められています。
 ただし,供託及び保険加入の負担を嫌って上記措置を行わない業者がいないとは限りませんので,新築住宅の購入または注文の際には,契約締結時に当該措置についての説明がなされているかどうかを注意する必要があります。
 ただし,供託及び保険加入の負担を嫌って上記措置を行わない業者がいないとは限りませんので,新築住宅の購入または注文の際には,契約締結時に当該措置についての説明がなされているかどうかを注意する必要があります。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 海津 諭◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2010年4月15日号(vol.52)>

【法律相談】中小企業経営の承継の円滑化

 │ 遺言・相続, 燕三条事務所, 弁護士海津諭

Q 中小規模の会社を経営しています。会社を長男に継がせるため、自社についての私の保有株式はすべて長男に相続させたいのですが、気をつけるべきことはありますか。

 
        
「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(以下、「円滑化法」といいます。)の第2章が、平成21年3月1日に施行されました。 ここでは、その円滑化法を用いた経営承継について説明いたします。

 
1 民法上の原則-遺留分

  各相続人には、相続財産のうち一定割合について、それを取得する利益が留保されています(これを、「遺留分(いりゅうぶん)」といいます)。この遺留分は、遺言によっても減らすことができません。

 
  そのため、相続財産において自社の株式以外に高額の財産がない場合、遺言によって一人の相続人に株式をすべて相続させようとしても、他の相続人が遺留分を主張して、株式が分散されてしまう危険性があります。(なお、生前に予め株式を一人の相続人に贈与しておいた場合でも、当該株式は相続時に相続財産として扱われるので、結局は同じ問題が起こります。)

 

2 円滑化法による遺留分制度の修正
 
  この問題について円滑化法は、相続人となる者らの事前の合意によって、遺留分を算定するための財産の価額から株式等(株式の他にも、被相続人個人名義の事業用不動産等)を除外することを可能にしました。

 
  これにより、遺留分制度による株式等の分散を防ぎ、一人の相続人を後継者として集中的な経営承継を行うことが可能です。

 

3 要件、必要な手続

  円滑化法の適用対象企業は、一定の規模以下のものに限られます(例えば、製造業では資本金3億円以下または従業員数300人以下)。

 
  また、後継者となる相続人が既に株式を総議決権の50%よりも多く保有している場合は、円滑化法の適用はありません(この場合は、被相続人の保有株式が分散しても後継者による会社経営に影響はないため)。

 
  手続としては、まず、相続人となる者全員が、遺留分の算定基礎財産から株式等の財産を除外する旨を書面によって合意する必要があります。その後、当該合意につき経済産業大臣の確認を受け、さらに家庭裁判所の許可を得る必要があります。 (他にも細かい要件が定められていますが、ここでは割愛させていただきます。)

 

4 その他

 
  円滑化法は、上記の定めの他にも、株式等を遺留分算定基礎財産に算入する場合にその株式の価額を事前の合意時の価額に固定できることや、中小企業信用保険法の特例など、経営承継の円滑化に資するための制度を定めています。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 海津 諭◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2009年6月号(vol.39)>

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