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社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

【法務情報】金融ADRの活用

 │ 弁護士中川正一, 燕三条事務所, 消費者

 最近では複雑な金融商品が増えています。例えば,先物取引はあらかじめ決めておいた期日に現時点で決めた条件で売買を約束する取引ですので,相場が下がった場合でも条件に従った価格で購入しなければならなくなり,思わぬ損害を被ったりすることがあります。また為替デリバティブ(レートを固定,円安の場合には利益,円高の場合に損失が発生,解約には数千万円の違約金が発生する)も異常な円高の中,大きな損害を発生させる取引となっています。

 

 このような取引に素人が手を出したりすることは危険であることはいうまでもありません。ところが,執拗な営業活動を受けたりして,素人がこのような取引に手を出してしまって損害を負うことがあります。このような金融業者とのトラブルについて裁判によって解決しようとすると,紛争が長期化して裁判が終わる頃には金融業者が倒産していたりして何ら解決にならなかったりします。

 

 そこで,導入されたのが金融ADR制度です。これは,金融業者と顧客との紛争について,話し合いで解決するための手続です。話し合いというと素人である顧客に不利ではないか,と思われるかもしれませんが,中立なあっせん人が話し合いの進行をしますので不安に思う必要はありません。また金融機関には応諾義務,資料提出義務があるので,顧客は容易に申立ができるようになっています。また進行はスピーディに行われており,数ヵ月で解決している事例が多く報告されています。

 また長期の金融商品を購入してしまって評価損などが出てしまった場合には,その損失部分を回収できたとしても,金融商品が手元に残ってしまっては最終的な解決にならない場合もあります。そこで,金融商品の引取を含めた話し合いができる金融ADR制度は顧客にとって望ましい制度といえます。

 

 現在,金融機関には金融ADR機関を設置する義務があり,証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC),全国銀行協会,そんぽADRセンター,弁護士会金融ADRセンターなどの機関に申立をすることができます。ただし,最近では,金融機関も理由のない和解はしない傾向にあるようですので,申立前には,申立の理由に法的に正当性があるか否かについて弁護士に相談されることが望ましいと思います。

 

 近年では円高の長期化の影響もあり,全国銀行協会への申立は平成23年の申立件数が前年に比し倍増しているなどの報告もあり,金融ADRにより解決を図ることが相当な案件が増えていると思われます。

 

 心当たりの方がいらっしゃいましたら,お早めにご相談下さい。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 中川 正一◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2012年3月31日号(vol.99)>

【法務情報】新潟県暴力団排除条例がH23.8.1から施行されています

 │ ビジネス, 弁護士中川正一, 燕三条事務所

有名テレビタレントが暴力団との交際を理由に芸能界を引退したことは記憶に新しいところですが,私たちの日常生活にはあまり暴力団という組織と関わることはないのが普通だと思います。

 

ところが,全国の都道府県において,暴力団排除条例が制定される流れの中,新潟県でも暴力団排除条例が制定され,まったく無関心というわけにもいかなくなりました。

 

そこで,当該条例が一般市民に要求している概要を確認してみたいと思います。

 

1 まず,何者も不動産が暴力団事務所に利用されることを知って,当該譲渡契約をしてはいけないとされています。通常なら,このようなことをされる方はいらっしゃらないと思いますが,違反した場合には,必要な勧告や公表などの行政処分の対象となります。

 

2 次に,一般の契約の際にも,不動産の譲渡等をしようとする者は,①契約前に,「暴力団事務所として利用しないこと」を相手方に確認するよう努める,②契約時に不動産を暴力団事務所に利用してはならない,利用された場合には,契約を解除し,又は買戻しすることができる旨定めるよう努めなければなりません。

 
このように,特に契約の相手方を暴力団員と認識していない場合にも努力義務が規定されていますので,ご注意下さい。

 

3 特に,特別強化区域の範囲(新潟駅,古町の周辺)では,飲食店営業,風俗営業(キャバレー,パチンコ等),性風俗関連特殊営業(ラブホテル,テレクラ等),接客業務受託営業(コンパニオン派遣等)を営む者は,暴力団員に対して,用心棒代などの名目で利益供与をしてはなりません。これに違反すると刑事罰もあります。

 

4 さらに,一般の事業者も,その事業に関して暴力団員等に対して利益供与することが禁止されています。
    従前,暴力団から用心棒名目などで金品を請求されたとき,断りにくい場合には用心棒代を支払うことによってもめ事を回避されていた方も,今後は,そのような利益供与は禁止されます。

 

5 また一般の事業者でも,その行う事業に関し,その取引の相手方,その取引の媒介をする者その他の関係者が暴力団員等でないことを確認し,契約時において当該相手方が暴力団員等でないことを書面で誓約させるなど暴力団排除のための措置を講ずるよう努めることが規定されています。

 

これはあくまでも努めることを規定しているにすぎませんが,そのひな形などは県警のホームページに載っていますので,参考にしてみてもいいでしょう。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 中川 正一◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2011年10月31日号(vol.89)>

 

【法務情報】育児・介護休業法の改正

 │ 労働, 弁護士中川正一, 燕三条事務所

育児・介護休業法が改正されました。ポイントは以下のとおりです。

 
1.育児休業制度の見直し
 厚労省によれば,勤労者世帯の過半数が共働き世帯となっているなかで,女性だけでなく男性も子育てができ,親子で過ごす時間をもつことの環境づくりが求められているそうです。また女性に子育てや家事の負荷がかかり過ぎていることが,女性の継続就業を困難にしているとも言われています。
 そのような中,今回の法改正において,父母がともに育児休暇を取得する場合,育児休業取得可能期間を子が「1歳に達するまで」から「1歳2ヵ月に達するまで」に延長しました(パパ・ママ育休プラス)。
 また配偶者が専業主婦(夫)であれば育児休業の取得を不可とする制度を廃止しました。

 
2.子の看護休暇の拡充
 旧法でも小学校就業前の子がいれば,子が病気やけがをした子の看護のために年間で5日の看護休暇を取ることができましたが,これが小学校就学前の子が2人以上の場合に年間10日まで看護休暇を取ることが可能になりました。

 
3.所定外労働の免除
 3歳に満たない子を養育する労働者が請求した場合には,所定労働時間を超えて労働をさせてはならないという制度が創設されました。
 

4.短時間勤務等の措置
 3歳に満たない子を養育する労働者であって育児休業をしていないものについて,労働者の申出により,一日の所定労働時間を原則として6時間とする措置を含む短縮措置を講ずることが事業者の義務になりました。また労使協定により除外された労働者においても,代替措置を講ずる必要があります。

 
5.介護休暇制度の導入
 厚労省のデータによれば,家族の介護・看護のために離転職している労働者が,平成14年からの5年間で約50万人存在し,要介護者を日常的に介護する期間に,年休・欠勤等で対応している労働者も多いようです。
 そこで,このような労働者の負担を軽減するために,要介護状態にある家族の通院の付添等に対応するため,年間5日間(要介護状態にある対象家族が2人以上であれば年間10日間)の介護のための短期休暇制度を設けました。

 

 以上の改正には,対象となる労働者とそうでない労働者が法律によって規定されています。 
 また労働者の代表と労使協定を締結することによって、対象となる労働者から除外できる場合があります。 
 このような場合,会社の方で事前に就業規則を修正し,必要な労使協定を締結するなどの措置が必要になります。特に「休暇」に関する事項は,就業規則の絶対的必要記載事項とされています。 
 このような行為を怠ったがゆえに後から違法として請求を受けるよりは,早期に必要な措置を講ずることにより適法な対応を取ることが望ましいといえるでしょう。

 
 以上の制度は平成22年6月30日から施行されていますので,早急な対応が望ましいでしょう。ただし,上記3,4,5の制度は,常時100人以下の労働者を雇用する事業主においては、平成24年6月30日まで適用が猶予されています。自社の状況を踏まえて,適切な適用時期を模索することをお勧めします。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 中川 正一◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2010年9月29日号(vol.63)>

【法務情報】公的助成金の活用

 │ 労働, 弁護士中川正一, 燕三条事務所

 昨今の不景気により事業活動を縮小せざるを得ない企業でも直ちに解雇等の人員整理を行うことは,労使の信頼関係が崩れて企業活力が低下したり,景気回復後の人材確保が困難になったりする恐れがあります。

 
 これに対して,雇用を維持した場合には,労使の協調的・信頼関係が増し,景気回復後の生産効率が高まることも期待できます。事業活動縮小期に雇用を維持する方法として,助成金制度を利用することが考えられます。

 
 そこで,助成金制度を近時の改正なども踏まえて整理してみようと思います。

 
 
 『雇用調整助成金制度』は,景気の変動等の経済上の理由により事情活動の縮小を余儀なくされ,休業等または出向を行った事業主に対して,休業手当,賃金または出向労働者に係る賃金負担額の一部が支給される制度です。

 
 また『中小企業緊急雇用安定助成金(以下「中小企業助成金」という。)』は,中小企業事業主向けに助成内容を拡充した制度です。

 
 支給を受けることができる額は,休業の場合,休業手当又は賃金相当額の2/3(中小企業助成金は4/5),出向の場合,出向元事業主が負担した賃金相当額の2/3(中小企業助成金は4/5)です。

 
 さらに,一定期間解雇等を行わない事業主については助成率が上乗せされ,それぞれ3/4(中小企業助成金は9/10)になります。ただし,雇用保険基本手当日額の最高額(7,685円)が限度額になります。

 
 また雇用する障害者が休業等又は出向を実施した場合も同様に助成率が上乗せされます。支給対象は,対象期間に実施した休業等,また対象期間内に開始した出向(3ヵ月以上1年以内の出向に限る。)になります。

 
 なお,支給限度日数は,休業等を実施する場合3年間で300日です。この300日は休業等実施日数の累積数そのものではなく,一定の計算式で算出される支給日数ですからご注意下さい。

 

 また出向を実施する場合は,出向を行う旨を届け出た際に,当該事業主が指定した対象期間の初日から起算して1年間です。これらの支給を受けるためには,事前に労働局又はハローワークへ届け出る必要がありますので,その際に詳細な要件について確認して下さい。
 

 さらに,平成21年3月に創設された『残業削減雇用維持奨励金』もあります。これは売上高又は生産量等の指標の最近3ヵ月の月平均値が,その直前の3ヵ月または前年同期に比べ5%以上減少している事業所(中小企業の場合は直近の決算等の経常損益が赤字であれば5%未満でも可)の事業主に対し,残業時間が一定以上削減されている,雇止めや解雇をしていない等の要件を充たした場合に支給される助成金です。

 
 その他,助成金には「高齢者の活用」(独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構),「再就職支援」「新規雇入れ」「創業支援」「能力開発」(独立行政法人雇用・能力開発機構),「育児・介護労働者の雇用管理改善」((財)21世紀職業財団),「雇用環境整備」「建設労働者の雇用改善」「障害者雇用促進・継続」を目的として,それぞれの社会的課題に企業が対応しやすくするための助成金が存在します。明記した以外は,労働局やハローワークが問い合わせ先になっていますので,有効活用してみてはいかがでしょうか。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 中川 正一◆
<初出:顧問先向け会報紙「こもんず通心」2010年3月31日号(vol.51)>

【法律相談】男女雇用機会均等法に対する配慮

 │ 労働, 弁護士中川正一, 燕三条事務所

Q 我が社は市内から通勤困難な支社があります。幹部候補社員には会社全体を把握してもらう必要があると考えますので,その採用にあたり単身赴任が比較的容易な男性に限定したいところです。
 しかし,このような採用方法は,いわゆる男女雇用機会均等法に抵触すると判断し,中立的に「労働者の住居の移転を伴う転勤に応じることができること」を条件として採用決定しました。
 にもかかわらず,当該条件を満たさずに幹部候補社員として採用されなかった女性から苦情を申し立てられました。
 我が社の採用条件に問題はありますか。

  
A たしかに,貴社の幹部候補社員に対する期待からすれば,住居の移転を伴う転勤に応じてくれることを採用の条件にしたい,という希望があることは自然です。

 
 またいわゆる男女雇用均等法の存在に気づいたことからも人事に関心があり,非難される理由はないようにも思えます。

 
 しかし,同法は,間接差別も禁止しています。すなわち,直接的には性別を理由に差別していなくても,実質的に検討すれば性別を根拠にしたに等しい場合も禁止されています。
 
 例えば,貴社が認めているように男性の方が比較的転勤が容易であるという社会背景があることを加味して実質的に検討すれば,貴社が設けた条件は実質的には男女で区別するに等しい,といわれてしまうことになります。

 
 ですから,貴社の当該採用条件は変更するべきでしょう。

 
 このような間接差別の規制は,一見性別に中立的な基準を設けていても,実質的な検討をすれば違法になってしまう危険があるにもかかわらず,どのような基準が間接差別として禁止されるのか分かりにくいといえるでしょう。

 
 そこで,同法の施行規則では,間接差別として禁止される場合を例示しています

 
 例えば,採用において「労働者の身長,体重又は体力」を条件とする場合,また昇進の場面において「転勤の経験」を条件とすること等が禁止事例として挙がっています。前者は,身体的特徴によって男性の標準体型・体力以上のものを条件とすることで,容易に女性を排除することができますから,実質的な性差別といわれてしまうことは分かりやすいでしょう。また後者については,貴社が質問された採用場面での問題が昇進の場面でも当てはまることを意味しています。

 
 前記した施行規則には間接差別として3例しか挙げられていませんが,それ以外の場合においても合理的理由がなく実質的には性差別になっていると評価されてしまう場合には違法と言われる危険がありますので,人事計画は,このような間接差別に該当するか否かということも実質的に検討して行う必要があるといえるでしょう。

 
 また,いわゆる男女雇用機会均等法は,募集・採用・配置・昇進だけでなく,教育訓練・福利厚生・定年・退職・解雇等の雇用のあらゆる場面において,性差別を禁止しています。

 
 ですから例えば,退職勧奨や整理解雇の対象労働者の選別を性別に中立的な基準を設けるだけでなく,実質的にも間接差別といわれないような検討が事前に必要になりますので,ご注意下さい。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 中川 正一◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2009年8 月号(vol.41)>

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